著者
石村 豊穂
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.63-86, 2021-09-25 (Released:2021-09-25)
参考文献数
75

Stable carbon and oxygen isotopic compositions (δ13C, δ18O) of carbonates, especially calcium carbonate (CaCO3), have been utilized in geochemical research for more than 60 years because the isotopic values record environmental history at the time of formation. In particular, the stable isotopic compositions of biogenic carbonate record the δ18O (salinity variation and global ice volume) and temperature history of ambient seawater, as well as the δ13C of dissolved inorganic carbon (DIC), which is important as basic information for elucidating carbon cycles and mechanism of environmental changes. In recent years, isotopic analysis of carbonate has been expected to improve the sensitivity for high-resolution environmental analysis, but the progress of analytical techniques has been limited. In such a situation, improvements in the sample preparation and introduction system for stable isotope ratio mass spectrometry (IRMS) have made it possible to determine the stable isotopic composition of carbonate less than 1/100 of the sample amount required by previously reported systems (MICAL: Ishimura et al., 2004, 2008b).In this paper, I described the current progress and problems of stable isotopic analysis of carbonate, then explain the details of the development of analytical method for carbonate in ultra-micro scale, and the applications to various research fields.
著者
石村 豊穂 坂井 三郎 鐵 智美 尾田 昌紀
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.62, 2015

微小領域切削装置Geomill326と微量炭酸塩分析システムMICAL3cを用い,微小領域における魚類耳石の安定同位体比分析をおこなった.1歳魚と推定される千葉県産マイワシの耳石を成長段階ごとに,幅30µm前後,最大深度100µmで切削をおこなった.回収したサンプル量はそれぞれ0.6~5.5µgである.安定同位体比分析の結果,成長段階によって同位体組成が明瞭に変動することを確認でき,このマイワシ耳石の同位体比の変動幅から北西太平洋を回遊する群集であることが推測された.そこで回遊経路を照合したところ,黒潮から混合域,そして親潮へ移動した情報が耳石に明瞭に記録されており,実際の回遊経路とも整合性があることが示され,これまでに無い高精度・高解像度での生息環境復元が可能であることを示した.
著者
石村 豊穂 角皆 潤 長谷川 四郎 中川 書子 大井 剛志 北里 洋 菅 寿美 豊福 高志
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.18, 2013 (Released:2013-08-31)

底生有孔虫殻の同位体組成は海洋環境指標として有用であるが,同位体非平衡(vital effectなど)の複雑さや,分析技術の限界という問題点があった.本研究では微量炭酸塩安定同位体比測定法を用いて個体別同位体組成を明らかにし,有孔虫という分類群全体の同位体非平衡の特徴を理解することをめざした. 分析結果から,種内の個体分散が小さい種ほど直接的に低層水のδ13C・δ18Oを推定する指標となることがわかった.また,殻重量が重く成長度合いが高い個体ほど,一個体でも環境指標として有効な指標となることがわかった.一方,有孔虫全体で同位体非平衡の特徴を図示すると,種毎で検討するよりも,有孔虫という分類群全体で捉えることにより,そのトレンドが明確に浮き彫りになることがわかる. また本研究では,vital effectが強い種でも同位体組成の個体分散をもとにして底層水の安定同位体組成を推定することが可能であることもわかった.
著者
氏家 由利香 木元 克典 石村 豊穂
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

海洋環境指標として最も活用される微化石・浮遊性有孔虫は、近年の研究から生物種の分類、それら種の生態的特徴の見直しが指摘されてきた。本研究は、最先端技術を応用して、1mm以下の微小な浮遊性有孔虫個体について、遺伝子・形態・同位体の主要な分析を行うことを可能にする方法を編み出した。まず遺伝子抽出行程が殻への物理的・化学的影響を及ぼし、その後の分析に弊害をもたらすことがないか厳密に検証し、実際の浮遊性有孔虫の生物種間での形態や同位体比の特徴を検出した。本研究による同時複数分析の手法は、汎用性が高く、かつ生物の実態に即した生態情報の獲得、それらを応用した環境指標の開発につながる。
著者
町山 栄章 兼子 尚知 石村 豊穂
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

時代的・空間的に広範な分布を示すコケムシについて、海洋環境指標として利活用できるか否か、その検証を行った。MART指標(群体を形成するコケムシの個虫サイズが水温と逆相関の関係にあることを利用して、群体が成長した期間における海水温の平均年較差を算出する)の検証の結果、個虫サイズと平均水温の年較差との関連が実証された。また、対象としたコケムシ骨格の酸素同位体比が平均水温変化と調和していることから、コケムシ骨格は古海洋環境復元指標として有用であると結論づけられる。