著者
中村 淳路 横山 祐典 関根 康人 後藤 和久 小松 吾郎 P. Senthil Kumar 松崎 浩之 松井 孝典
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.174, 2013 (Released:2013-08-31)

地球上に存在するクレーターの形成年代や侵食過程について検討することは, 他の惑星表面のクレーターの形成過程を検討する上で重要である. 本研究は, インド・デカン高原上に位置する直径1.88kmの衝突クレーターであるロナクレーターについて, 宇宙線照射生成核種(10Be, 26Al)を用いた年代測定を行うことで, 形成年代と侵食過程の検討を行った. ロナクレーターは玄武岩上に形成され現在までよく保存されているクレーターとしては地球で唯一のクレーターであることから, 火星上のクレーターの比較対象として注目されている. しかし先行研究によるロナクレーターの年代推定は, 測定手法によって1.79 ka から570 kaまでと大きく異なっている. 本研究では10Be, 26Alを用いて新たにロナクレーターの表面照射年代を決定し, さらにイジェクタの露頭の14C年代測定を行うことで, 形成年代値の再検討を行なった.
著者
村松 康行 松崎 浩之 大野 剛 遠山 知亜紀
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.189, 2013 (Released:2013-08-31)

福島原発事故においても大量のI-131が放出されたが、もしも、初期被ばくが大きい場合は後になって甲状腺への影響が出る可能性がある。しかし、半減期が8日と短いため、事故当初の放射性ヨウ素の広がりや住民が受けた被ばく線量に関するデータは十分でない。そこで、I-131と同時に放出されたと考えられる長半減期の同位体であるI-129(半減期1,570万年)が指標になる。文科省が集めた土壌試料や我々が独自に集めた試料を用い、I-129の分析を試みた。AMSを用いたI-129の分析結果から約400箇所のI-131沈着量を推定した。今まで殆どデータがなかった福島原発から20 km圏内や南西側の地域を中心に、I-131の沈着量のマップを作成した。今回、値が加わったことで、I-131の沈着量の地域分布の特徴がより鮮明になってきた。
著者
中井 俊一 佐藤 正教 武藤 龍一 宮腰 哲雄 本多 貴之 吉田 邦夫
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.228, 2013 (Released:2013-08-31)

漆はウルシ属樹木であるウルシが分泌する樹液を脱塵,脱水などの処理をした後,空気にさらし,酸化酵素ラッカラーゼの働きにより硬化させ,塗料や接着剤として用いられてきた.ウルシ属の樹木は日本の他,中国,ベトナム,タイなどに自生している.現在,日本の漆工芸で使われている漆は大部分が中国,ベトナム産である.日本では縄文時代早期の遺跡から,漆塗の髪飾り,腕輪などが出土し,古い時期からの利用を示している.漆塗料の産地を決めることができれば,漆文化の起源や,時代による交易圏の変遷を考える手がかりになりうると予想できる.漆の主成分である有機化合物の分析により,日本産の漆をタイ,ベトナム産のものと区別することはできるが,日本産の漆を中国,韓国産のものと区別することはできない.そこで土壌の源岩の年代により変動する87Sr/86Sr同位体比を用いて漆の産地推定を行うことを検討してきた.
著者
小宮 剛 山本 伸次 下條 将徳 青木 翔吾
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.242, 2013 (Released:2013-08-31)

太古代初期のテクトニクスと表層環境を解読する為にラブラドル・ネーン岩体の地質と出現する堆積岩の化学分析を行った。本地域に産する最古の表成岩は海洋プレート層序と覆瓦状構造によって特徴付けられ、最古の付加体であることが分かった。その存在はプレートテクトニクスが機能していたことを示唆する。また、本地域には深海成と浅海成の二種の縞状鉄鉱層が産する。Zr濃度との相関を用いて砕屑物の混入の影響を除去した結果、特にその影響の小さなものには希土類元素パターンなどに海水と熱水との混合水の特徴が見られる。そのことは最古の堆積物でありながら、その縞状鉄鉱層には当時の海水の情報を残すことを示す。また、砕屑性堆積岩には炭質物が残されている。
著者
谷口 無我 村松 容一 千葉 仁 大場 武 奥村 文章 山室 真澄
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.69, 2013 (Released:2013-08-31)

甲府盆地北東部の花崗岩体周辺では、近年、深部掘削による温泉開発が盛んに行われてきた。温泉の新規掘削や既存源泉の保護には、温泉水の起源や泉質形成機構を解明することが不可欠である。本研究では、当該地域に分布する非火山性温泉水を採取し分析するとともに、水-鉱物相互作用の化学平衡論による検証を実施し、温泉水の起源と泉質形成機構を考察した。温泉水のδD, δ18O値の特徴はいずれの温泉水も天水が起源であること示唆した。温泉水の泉質は、花崗岩地域では曹長石の風化に起因したNa-HCO3型であり、火山岩類の分布地域では曹長石の風化のほかに硬石膏の溶解、およびモンモリロナイトによるイオン交換作用が寄与し、Na-HCO3型、Na-SO4型、Na-HCO3・SO4・Cl型、Ca-SO4型と多様な泉質を示すと考えられた。
著者
石島 健太郎 豊田 栄 滝川 雅之 須藤 健悟 青木 周司 中澤 高清 吉田 尚弘
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.48, 2013 (Released:2013-08-31)

大気中一酸化二窒素(N2O)は主要な温室効果気体として知られる一方で、今世紀最大のオゾン破壊物質であると考えられている。近年、N2O濃度測定精度の向上と、観測ネットワークの拡大により、N2Oの全球循環の把握を目的としたモデル研究を行う土台が整ってきた。N2O濃度の全球モデリングは最近では珍しくなく、逆解法による地表フラックスの見積もりも行われているが、もう一つのN2O放出源特定ツールであるN2Oの安定同位体に関しては、観測や室内実験等の研究は比較的数多くあるものの、全球モデルの研究は非常に限られている。本研究では、化学気候モデルをベースに開発されたN2O同位体モデルを用い、現代と産業化以前の大気中N2O同位体を再現し、それにより全球平均のN2O同位体放出量及び消滅量の見積った。その結果、N2Oの人為放出源の同位体比値は、過去の観測ベースの結果と比較して、傾向は似るが、有意に異なっていた。詳細については発表で報告する。
著者
田中 雅人 高橋 嘉夫
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.35, 2013 (Released:2013-08-31)

ヒ素水質汚染の主な原因は天然由来の亜ヒ酸・ヒ酸などの無機ヒ素化合物である。一方で、有機ヒ素化合物は除草剤や農薬の用途で使用され環境中に存在しており、これらもまたヒ素水質汚染の原因となり得る。土壌中におけるヒ素化合物の吸着挙動を理解することは、ヒ素化合物による水質汚染の機構の解明や予測モデルを作成する上で重要であると考えられる。しかし、土壌中における有機ヒ素化合物の吸着挙動についてはあまり研究がなされていない。本研究では、土壌中における有機ヒ素化合物の吸着挙動を理解するために、メチルヒ素化合物(メチルアルソン酸(MMA)、ジメチルアルシン酸(DMA))およびフェニルヒ素化合物(フェニルアルソン酸(PAA)、ジフェニルアルシン酸(DPAA))について土壌への吸着実験を行い、広域X線吸収微細構造(EXAFS)測定および量子化学計算により吸着構造の解析を行った。それらの結果をフェリハイドライトへの吸着構造解析との比較を行った。
著者
伊藤 健二 森泉 純 山澤 弘実
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.22, 2013 (Released:2013-08-31)

森林生態系は陸尉記載大のCO2吸収源かつ放出源であり、気候変動の将来予測には森林内炭素収支を理解することが不可欠である。なかでも森林土壌は森林全体の約2/3もの炭素を貯蔵している巨大な炭素リザーバーである。本研究では土壌表面に存在する植物遺体(リター)層と土壌層間の炭素供給機構の解明を目的とし、地表に新たに供給されるリターフォール、数年上の分解とリター供給を受けてきたL層リター、表層土壌の炭素含有率および炭素同位体比を分析することで、土壌層への炭素供給にリター以外の供給源が大きな寄与を与えている可能性が示唆された。
著者
石村 豊穂 角皆 潤 長谷川 四郎 中川 書子 大井 剛志 北里 洋 菅 寿美 豊福 高志
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.18, 2013 (Released:2013-08-31)

底生有孔虫殻の同位体組成は海洋環境指標として有用であるが,同位体非平衡(vital effectなど)の複雑さや,分析技術の限界という問題点があった.本研究では微量炭酸塩安定同位体比測定法を用いて個体別同位体組成を明らかにし,有孔虫という分類群全体の同位体非平衡の特徴を理解することをめざした. 分析結果から,種内の個体分散が小さい種ほど直接的に低層水のδ13C・δ18Oを推定する指標となることがわかった.また,殻重量が重く成長度合いが高い個体ほど,一個体でも環境指標として有効な指標となることがわかった.一方,有孔虫全体で同位体非平衡の特徴を図示すると,種毎で検討するよりも,有孔虫という分類群全体で捉えることにより,そのトレンドが明確に浮き彫りになることがわかる. また本研究では,vital effectが強い種でも同位体組成の個体分散をもとにして底層水の安定同位体組成を推定することが可能であることもわかった.
著者
馬上 謙一 坂口 勲 鈴木 拓 糸瀬 悟 松谷 幸 工藤 政都 石原 盛男 内野 喜一郎 圦本 尚義
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.8, 2013 (Released:2013-08-31)

Nagao et al. (2011) によるはやぶさ試料の希ガス同位体分析は太陽風照射とそれに伴う太陽風起源He/Ne間の分別を明らかにした.しかし,希ガス分析は粒子一粒ごとの結果でありSTEM観察との直接比較を行うには希ガス分析事前にSTEM観察を行うなど,分析方法の工夫が必要である.そこで,我々が開発したポストイオン化二次イオン質量分析装置LIMAS(Laser Ionization Mass Nanoscope)を用いることで,希ガス同位体分析を数十nmスケールの空間分解能で行うことが可能となり得る.本発表では新しい局所希ガス同位体分析手法をもとに,イトカワ表層での太陽風照射の履歴に関して期待される結果について述べる.
著者
淵田 茂司 水野 友貴 益田 晴恵 土岐 知弘
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.27, 2013 (Released:2013-08-31)

アミノ酸およびその高分子体は海洋における有機炭素の主要なリザーバーとして,生物地球化学サイクルの中で重要な役割を果たしている。本研究では,南部マリアナトラフ付近から採取した熱水中に含まれるアミノ酸量を測定し,熱水循環に伴うアミノ酸の挙動について考察した。200℃以上の高温の熱水からは,10 μM以上の加水分解性アミノ酸が検出されたが,50℃以下の低温の熱水および海水では1 μM以下で,アミノ酸の濃度は一貫して低かった。一般的に,アミノ酸等の有機分子は温度の上昇に伴不安定となるが,今回,高温の熱水ほどアミノ酸の濃度は高くなった。生物由来のアミノ酸を含む岩石や堆積物と高温の熱水が反応することで,アミノ酸の溶出が促進されているのであろう。
著者
山野辺 正邦 中村 智樹 嘉数 勇基 石田 初美
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.5, 2013 (Released:2013-08-31)

CMコンドライト隕石NWA5958のType-A CAIの粗粒なメリライトの10Be/9Be初生比は4.6×10^-2であった。この値はCV隕石中のCAIのメリライトの初生比(e.g. 9.5×10^4;MacPherson et al. 2003,7.2×10^4; Sugiura et al. 2001)に比べ大きな値となった。またCIコンドライトで規格化した希土類元素存在度はEuに正の異常が見られる平坦な存在度を示し、一方酸素同位体比はCVコンドライト隕石中の多くのCAIsのメリライトが16O-poorを示すのに対し、このCM隕石中のメリライトは16O-richであった。以上の分析結果から、このCAIは太陽近傍にて再加熱され、メリライトは再溶融を経験した。またこのCAIは形成後、円盤内で強い太陽宇宙線を浴びたため、10Beが核破砕反応でCAI中に生成されたと考えられる。