著者
山下 裕司 下郡 博明 菅原 一真 広瀬 敬信
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は,生活習慣病であるメタボリック症候群が聴覚に及ぼす影響について明らかにし,その予防方法を開発,将来の臨床応用に発展させることである。そのためにモデルマウスTSODを用いて研究を行った。結果としてメタボリック症候群モデル動物は,加齢に伴い出現する難聴が対照動物に比べてより早期に出現することが明らかになった。組織学的検討からは内耳の血管に動脈硬化が生じ,内耳の血流が減少することが原因のひとつであると考えられた。また,発現遺伝子の検討からは,多くの種類の成長因子が減少していることが明らかになった。これらの結果は新しい難聴予防の方法の開発につながると考える。
著者
菅原 一真 山下 裕司 廣瀬 敬信
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

糖尿病は比較的頻度の多い疾患であるが,難聴の進行は患者のQOLを大きく低下させる。糖尿病に伴う難聴については以前からの詳細な形態学的研究が行われているが,難聴を予防する方法は明かでない。本研究では糖化ストレスに曝露された内耳において生成される終末糖化産物(AGEs)に着目して,研究を計画している。2020年度までに,糖尿病モデル動物を用いて,内耳においてAGEsが生成される時期や部位,その条件について検討した。その結果,聴覚障害を生じる前より内耳血管条へのAGEsの生成が観察された。さらに,AGEsの生成と炎症性サイトカイン,酸化ストレスと内耳微小血管の動脈硬化の関係についても検討を行った。AGEsの生成後に組織学的に血管障害が明らかになってきていることから,血管障害の原因としてAGEsの関与が疑われた。更にAGEs阻害物質メトホルミンを用いて,糖尿病に伴う難聴の予防が可能かどうか検討した。2021年度は,メトホルミンの内耳におけるAGEs産生を抑制する機序を明らかにする目的で,in vitroモデルを用いて実験を追加する予定である。