著者
菅原 聰
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.297-313, 1967-12

1.亜高山帯林分が伐採や災害などによって開放された後に成立する2次的天然生林分の構造ならびに生長についての検討を試みたものである。2.基礎資料は1964年8月および9月に岐阜県胡桃島国有林内の2次的天然生林分内で標本点18点を選んで集めた。これらの2次的天然生林分は,シラベ・オオシラベを主体とし,トウヒ・コメツガならびにダケカンバをまじえたものである。3.このような異齢の天然生林分の水平的構造は,いわゆるH. A. MEYERによるいわゆる択伐林型として,すなわち y=k・e-αx y:x-直径階に属する林木本数 x:胸高直径(m) kおよびα:常数 にしたがう分布型として把握してよいことが確かめられた。4.H. A. MEYERの式の常数kおよびαは,ヘクタール当り林木本数,林分平均直径または林分最大直径の函数としてあたえられることも確かめられた。5.地位については問題がいろいろ残ったが,年齢と平均林分直径の函数としてI~IIIの3階級に区分してみた。ここでいう地位の概念はきわめて広義的であり,あたえられた条件下においての生長速度の遅速をあらわすものであると考えてよい。6.以上の地位ならびに本数分配表を手がかりとして胡桃島国有林内の2次的天然生シラベ林分についての簡易生長量予測表を作成してみた。7.この簡易生長量予測表は,いわゆる地方票であり,この地方以外での適用が不可能であることは当然である。8.この簡易生長量予測表を用いての生長量ならびに収穫予測方法は,通常の収穫表による方法と同じである。ただこの場合地位の判定に林分平均直径を用いていることに注意しなければならない。
著者
菅原 聰 白幡 洋三郎 赤坂 信 中堀 謙二
出版者
信州大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

平成5年度には、国内調査として、地域住民の森林観の調査・大学生の森林認識の調査・山村においての森林の利用状況の調査・日本人の自然観に関する予備調査・森林休養についての調査・森林風景についての調査・里山についての調査をおこない、海外調査として、ドイツ・フランス・オーストリー・北欧・イギリスならびにカナダで森林観と森林施業の調査をおこなった。そして、平成3年度と平成4年度の調査結果とを合わせて、「森林観の比較研究」として、次のようにまとめることにした。(1) 東西の森林観:東洋と西洋について、とくに宗教との関係をめぐって、森林観を比較した。(2) 呼吸する里山:信州においての農民と里山との変遷を、資料(古文書・古絵図など)を用いて探るとともに、山村においての農民と森林との交流についての調査に基づいて、里山をめぐる森林観の推移を明らかにした。(3) 森林風景の行方:森林は人間によって創られたものであるから、森林風景は森林観と密接に関係している。技術的視点で森林風景の創造について接近し、現代人の森林観と現代社会においての技術展開の方向から森林風景の行方を探った。(4) 大英帝国の森林の盛衰:イギリスで大英帝国時代に森林がどのように取り扱われたかについての考察を通じて、森林観と森林の盛衰との関係を明確にした。(5) 変貌する森林観:森林観は社会構造と密接な関係にある。古代社会では神秘のなかに森林をみていたが、農耕社会で有用な存在となり、工業社会では無用となり、情報社会では貴重なものとなってきた森林に対しての森林観の推移を明らかにした。