著者
赤坂 信
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.232-247, 1991-02-28 (Released:2011-07-19)
参考文献数
73
被引用文献数
1

ドイツ郷土保護連盟の設立 (1904) の歴史的背景と社会的動機を探り, 連盟の改称が提起されるまでの四半世紀間の活動内容及びその変遷を明らかにすることを目的とした。郷土保護運動の当初の段階は近代的発展によって郷土の風景や生活習慣が消失していくことに対する抗議や救済が主目的であった。やがて保護育成の対象は郷土の空間の構成するモノから郷土を担うヒト (Volk) へ移行する。すなわち望ましい民族の育成が課題となっていく。
著者
古谷 勝則 油井 正昭 赤坂 信 多田 充 大畑 崇
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.21-41, 2001-03-31
被引用文献数
2

環境庁は1974年から一部の国立公園でマイカー規制を行っている.既に20年以上が経過しており,実施当初とは社会条件が変化し利用の多様化が進んでおり,マイカー規制の効果,問題点の改善を検討し,より良い制度を構築する必要がある.そこで本研究は日光国立公園尾瀬地区で実施されているマイカー規制を対象に,マイカー規制とその情報提供に関する現状を把握するとともに,問題点を明らかにし,今後の方向性を考察することを目的とした.研究の方法は文献・資料調査,関係機関へのヒアリング,マイカー利用者に対するアンケートを行った.これらの結果,次の知見を得た.(1)自動車利用者の集中は特定の時期の土,日,祭日に発生し,道路渋滯などの利用環境の悪化や,排気ガスなどの自然環境の悪化を引き起こしている.(2)マイカー規制の利用者への周知が不十分である.(3)道路渋滞,駐車場不足による不法駐車の改善に効果が見られるものの利用時期の分散には大きな効果は果たしていない.(4)公園管理者,利用者,地域の3者の協力の元で,利用者を平日利用へ分散させることが重要である.(5)平日利用分散の方策には駐車場料金,代替交通料金を土,日,祭日と平日で格差をつける.(6)公園管理者は,利用者と地域へのマイカー規制の情報提供を徹底するシステムを構築する必要がある.
著者
菅原 聰 白幡 洋三郎 赤坂 信 中堀 謙二
出版者
信州大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

平成5年度には、国内調査として、地域住民の森林観の調査・大学生の森林認識の調査・山村においての森林の利用状況の調査・日本人の自然観に関する予備調査・森林休養についての調査・森林風景についての調査・里山についての調査をおこない、海外調査として、ドイツ・フランス・オーストリー・北欧・イギリスならびにカナダで森林観と森林施業の調査をおこなった。そして、平成3年度と平成4年度の調査結果とを合わせて、「森林観の比較研究」として、次のようにまとめることにした。(1) 東西の森林観:東洋と西洋について、とくに宗教との関係をめぐって、森林観を比較した。(2) 呼吸する里山:信州においての農民と里山との変遷を、資料(古文書・古絵図など)を用いて探るとともに、山村においての農民と森林との交流についての調査に基づいて、里山をめぐる森林観の推移を明らかにした。(3) 森林風景の行方:森林は人間によって創られたものであるから、森林風景は森林観と密接に関係している。技術的視点で森林風景の創造について接近し、現代人の森林観と現代社会においての技術展開の方向から森林風景の行方を探った。(4) 大英帝国の森林の盛衰:イギリスで大英帝国時代に森林がどのように取り扱われたかについての考察を通じて、森林観と森林の盛衰との関係を明確にした。(5) 変貌する森林観:森林観は社会構造と密接な関係にある。古代社会では神秘のなかに森林をみていたが、農耕社会で有用な存在となり、工業社会では無用となり、情報社会では貴重なものとなってきた森林に対しての森林観の推移を明らかにした。
著者
赤坂 信
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.39.3, pp.199-204, 2004-10-25 (Released:2017-08-02)
参考文献数
17
被引用文献数
1

史蹟名勝天然紀念物保存法時代から 2004年現在の文化財保護法で指定された名勝は 326件、そのうち 169件が戦前の 1922-1937年の 16年間に集中している。こうした状況の社会的背景や名勝保護をめぐる議論を整理し、考察する。急増する名勝の指定件数に対してその対象の保存・維持に手がまわらない状況があり、保存・維持を具体的に実現させるためのプログラムを早急に用意するべきだという提言や史蹟名勝天然紀念物保存法の役割はもはや終わったとする解体論まで登場した。名勝指定が大正末期から昭和初期にかけて集中し、しかも名勝の「公園、庭園」のカテゴリーが戦前に4割以上(現在までの総指定件数の)がすでに指定されていたことは特筆に値するが、また逆に名勝の意味するところが「公園、庭園」のカテゴリーに重点的に担わされてきたことを示すものである。ランドスケープの保護に法的根拠を集中的に与えていた時代に何を「名勝」としていたかが歴然としてくる。そこに名勝保護と公園事業が関連づけられる背景がある。
著者
赤坂 信 石川 忠治
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.13-16, 1995-03-29 (Released:2011-07-19)
参考文献数
26

脇水鐵五郎は, 明治の末期から昭和の初期まで地質学をもとに風景論を展開した。このとき脇水は, 風景の構成要素を明らかにし, 風景評価を行うという点で地質学の理論を風景の評価に持ち込んでいる。名勝地や国立公園のような大風景地の成因の大変わかりやすい地質学的解説という実績を残し, 海外の風景と比較して勝ると考えられる海岸風景美と渓谷美をその中心的テーマとした。また脇水の海岸風景の3要素という風景の類型化の展開が, 国立公園の実際の選定で取り入れられていった。やがて海岸風景地の国立公園指定に対する強い要望は戦況の深刻化とともに影をひそめ「時局」に沿った路線へ転換していった。
著者
深水 崇志 赤坂 信
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.515-520, 2011 (Released:2012-09-05)
参考文献数
18

This paper aims to analyze the plants compositions of the “Vertical Gardens (Mur Végétal)” by a French botanist Patrick Blanc. The analysis focused on the plants layout drawings which Blanc had sketched by hands when he designs a plant scheme for each project of the Vertical Garden. I have examined five drawings which were published: i) Hotel Pershing Hall in Paris, ii) Quai Branly museum in Paris, iii) 21st Century Museum of Contemporary Art in Kanazawa, iv) Boutique Marithéet Francois Girbaud in Osaka and v) Cité de l’Espace in Toulouse. Following an elaborate work to identify of all the names of plants which were indicated in the layout drawings, I have investigated their characteristics. Accordingly, the species or genus of the plants which were specially preferred to be used in the Vertical Gardens had been revealed. Then, I analyzed the association between the characteristics of the plants and the composition in the drawings. As the consequences, I showed diagrammatically the characteristics of the plants, which are the habitat, growth form, seasonal changes, sun exposure, stratum or vertical strata and so on, have some influences on the composition of the Vertical Gardens, and furthermore I explored the plants compositions of the Vertical Gardens.
著者
村松 保枝 赤坂 信
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.459-464, 2009
被引用文献数
1

町並み保存は、地域の歴史的・文化的資源を保存し活用しようとする取り組みである。1970年代以降の妻籠にはじまり、地方小都市や農山漁村における愛郷運動や地域振興としての観光化によるまちづくりの源流として広がり、現在では全国的な展開を見せている。こうした町並み保存によるまちづくりの特徴として、住民主導か地方自治体主導かによらず地域の運動であることが挙げられる。そのため、地域の歴史経緯に基づく物的・人的資源の実態に即した工夫が試みられ、各地域で特色ある町並み保存が展開されてきたと言えよう。本研究では、地域の町並み保存団体の設立年代と保存の対象と動機に着目し、地方自治体や国による制度や条例の制定を含む社会背景とともに展開してきたプロセスを明らかにすることを目的とした。
著者
田代 順孝 木下 剛 赤坂 信 小林 達明 柳井 重人 古谷 勝則
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

最終年度である平成18年度は,地区スケールの緑の配置計画の可能性について検討を行うとともに,これまでの研究成果をとりまとめて研究の総括とした。住宅地と街路空間を対象として放射エネルギー分布図を作成することにより,夏季の高温化を促進する土地被覆と冷却効果を持つ土地被覆を特定し,その効果を定量的に把握することができた。さらに,放射エネルギー分布図を利用して,温熱環境(または温熱景)制御のために,緑の配置によって蓄熱する景観要素をコントロールすることの可能性についての知見が得られた。中高木を植栽して緑陰を確保するとともに,土地被覆を芝生や裸地とすることで,地中への蓄熱を軽減することが予測された。また,表面温度と周囲の気温との温度差が大きく,放射熱伝達が大きい場合は発生源(各要素)から出る放射エネルギーに対して,適切な緑を配することで軽減できることが明らかとなった。さらに,熱帯地方における日影変化・樹木形態(樹種や植栽密度の違いによる)・緑陰効果からみた緑陰地の特性について検証し,温熱景制御に資する緑の配置パターン(植栽デザイン)について明らかにした。具体的には,緑陰エリアは日中,樹冠と同程度の最小限の日影をつくり出すことから,人々の活動をサポートするための緑陰空間は日中において特に考慮されるべきである。緑陰地の空間形態は樹木のサイズ(樹高と樹冠により中規模,大規模,極大規模)によって規定される。全緑陰(Full Shade)は密植(暗い緑陰と樹冠の重層)により形成され,非全緑陰(Not Full Shade)は疎林(やや暗い緑陰と樹冠の接触)によって形成される。また,分離植栽は緑陰を形成しない(樹冠が離れており地表は明るい)。葉と枝張りの密度の濃い緑陰樹は緑陰地のデザインにおいて特に適している。緑陰空間の特性は,熱帯地方の特に日中,太陽が南中した際に重要な役割を果たす日影に重要な影響を及ぼす。日影の継続は人々の活動に高い快適性をもたらすことができた。以上の結果から,温熱景制御に資する地区スケールでの緑の計画の在り方について有用な知見を得た。
著者
赤坂 信
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.401-404, 1998-03-30
参考文献数
10
被引用文献数
3 3

ドイツを中心とした郷土保護運動はわが国にもほぼ同時代に紹介されていた。こうした紹介のなかで,何に関心が集中し,制度としての必要性を感じていたのかを明らかにしたい。郷土保護の国際会議に出席した石橋五郎の報告(1912)に寄せて黒板勝美(1913)は郷土保護の有用性(保存による国民の「元気修養の方面」)等について解題するとともにわが国の当時の保存の考え方を批判している。学術上の保存の根拠のほかに「社会人心に感化を及ぼす」伝説の地も保存の対象に加えるべしと黒板の考え(1912)は,後の神武天皇などの聖蹟さがしなどのフィクショナルなものと結びついていった。
著者
赤坂 信
出版者
千葉大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

初年度は高垣(クネ)に関する一般的知見を得るために、北海道、山形県、長野県、島根県の事例を中心に現地踏査と文献収集をおこなった。次年度は関東地方、とくに千葉県北西部に位置する江戸川低地に分布するクネについて調査を実施した。松戸市北西部から流山市南部につづく江戸川低地には、農地(畑と水田)がひろがり、微高地に立地する農家が点在している。ほぼ矩形の農家の敷地のまわりに巡らされたクネと呼ばれる刈込まれた高い生垣(高さ4.5〜6m)がみられる。今回対象地とした南北2km東西1kmの範囲では約60か所(クネの跡が認められるものも含めて)のクネが分布していることがわかった。クネを構成している樹種は、江戸川に近い方と遠い方で異なることや南向きと北向きで異なる傾向がみられた。モチノキは至る所で用いられているが、ツバキも多用されている。イヌマキは寒さと乾燥に弱いため、北部や江戸川に近い方にはみられない。全方位ともすべてツバキというクネもあるが、方位によって樹種をかえているものがほとんどである。南側にモチノキ、北側にツバキあるいはケヤキ、そして枯れあがった部分の下にイヌマキを用いているものがみられる。農家は戦後に入植したところもあるが、古いところで150年から500年前からの入植という。クネの手入れは自分でやるところと植木職に委託するところがある。年1回の手入れ(刈込み)で植木職10人手間(1万6千円1人)というコストである。高い位置での作業なので、職人も若いもののなり手がいないということである。後継者の不足は同じような理由で島根県出雲地方でも同様であった。
著者
赤坂 信
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.59-65, 2005-08-12
参考文献数
27
被引用文献数
4 5

昭和初期の10年(1930年代)は郷土風景の保存について盛んに議論されていた時代である。当時の造園関連の機関誌,専門誌を中心に議論の流れを整理しつつ考察した。1930年代後半からは郷土風景喪失の危機感を背景に保存の指針や法的な整備に関する論考も現れた。凍結的保存論もあるなかで,郷土風景は人の生活するところであるが故の「進化」のダイナミズムを認め,制御しながらより良いものにしていこうという提言もみられた。一方,こうした高所から,あるいは計画主体からの議論の他に,自らがすむ具体的な東京の「郊外」をとりあげて地元の郷土人による保存論の試みもあった。「都市化」と「昔のまま」の間に宙づりにされた郊外を「郷土風景」としてどのように意味づけ(解釈)するかが保存論の共通の課題であったが,具体策に結実することなく,予想をはるかに超えるスピードで到来した市街化の圧力の前にはほとんど無力であった。社会的な関心がありながら郷土風景が消滅する理由に,第二次世界大戦が後に控えてはいたが,保存論自体が社会的に直接影響を与える(適用が可能な)文化運動になり得なかったことが-因と考える。