著者
菅沼 信也 阿部 達弥 西澤 喬光 正木 一郎
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.607-615, 2018 (Released:2018-10-30)
参考文献数
20

【目的】当院では代謝性アシドーシス補正効果の高いクエン酸含有無酢酸透析液を用いているが, 一部の患者でアシドーシス補正が十分でない. そこで, 血清重炭酸濃度上昇作用を有するリン吸着薬クエン酸第二鉄製剤 (FC) の影響を後ろ向きに調査した. 【対象と方法】当院通院外来維持透析患者で既存薬からFCに変更または追加した72名を対象に, FC投与開始前, 投与3か月後のCKD-MBD, 貧血指標と週中日の透析前血清重炭酸濃度を比較した. 【結果】透析前重炭酸濃度は, 全例ではFC投与後変化はなかったが, 22mEq/L未満の患者30例では有意に上昇した. FC投与に伴いFC由来の鉄が吸収され, TSAT 20%未満かつ血清フェリチン値100ng/mL未満の絶対的鉄欠乏の患者が著減し, ESA投与量が有意に減少した. 【結語】FCはリン吸着および鉄補充に伴う貧血改善作用に加え代謝性アシドーシス補正作用を有し, 特に異所性石灰化等のリスクとなる代謝性アシドーシス患者において有用なリン吸着薬になり得る.
著者
田村 幸雄 趙 康杓 吉田 昭仁 菅沼 信也
出版者
東京工芸大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000

昨年度までの実験的検証によって、RTK-GPSの観測可能振幅レベル、振幅分解能、周波数分解能等の基礎資料が整理できた。本年度は,高さ108mの鉄塔上にGPSユニツトを設置し、地震時および強風時の応答観測を行い,観測可能レベル、周波数分解能,使用に当たっての種々の制約や問題点の抽出を行った。日照や強風等の影響のない夜間の鉄塔静止位置を長期間にわたって観測し、その平均的な位置を厳密なゼロ点とした。これを基準にして、日照による熱変形の把握、台風時の挙動等をとらえることができた。強風時の応答からは、観測振幅の範囲では高周波数領域でのノイズレベルがやや高いが、加速度計による観測結果との十分な整合性が確認でき、以下の事柄が明らかとなった。つまり、(1)GPSにより動的変位のみならず,静的変位成分も計測可能である。(2)現状のGPSにより、固有振動数2Hz以下、つまり建物高さ約30m以上の建物が、振幅2cm以上の振動をしているときに計測が可能である。したがって、(3)10m高さでの平均風速が春一番程度の15m/sの場合、建物高さ80m以上、平均風速が台風なみの25m/sのときは、建物高さが60m以上で観測が可能である。次いで、GPSを利用して、都市建物群の健全性を管理する手法の検討のため、設計図書に基づきFEM解析モデルを作成し、固有値解析等でその妥当性を検討した上で、GPS変位時の任意部材の応力の時刻歴をモニタリングするシステムを構築した。未だ初歩的であるが、GPSによる都市建物群の性能モニタリング手法を開発し、未来型都市防災システムの在り方を示し得た。