- 著者
-
菅野 貴皓
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2010
当該年度は,多地点に配置されたロボットアームや力覚提示デバイスを計算機ネットワークで接続し,相互に位置と力の情報をやり取りすることのできるマルチラテラル・テレオペレーションシステムについて,実機を用いた実験システムの構築および前年度に提案した制御手法の検証を行った.前年度は,マルチラテラル制御の定式化を行い,提案手法が安定であることを検証したが,実験に使用した通信遅延およびデバイスの一部にシミュレータを用いており,複数の実機を実際のネットワークで接続した時の制御系の安定性や追従性の検証はなされていなかった.当該年度は,制御ソフトウェアを力覚提示装置Falconに対応させ,前年度用いていたPHANTOMと合わせて3台の実機を用いた実験システムを構築した.構築した実験システムを用いて,遠隔ショッピングで複数人に触覚情報を同時に提示する場面を模擬した被験者実験を行った.実験では,被験者はランダムに提示される対象物を遠隔で触り,その対象物の大きさを回答する.実験の結果,本システムを使用して10mm程度の大きさの違いを判別することが可能であった.前年度に,通信遅れ時間の変動によって発生するマスタ・スレーブ間の位置ドリフトを補償する制御手法を構築したが,提案手法と他の手法との比較は行われていなかった.当該年度は,位置ドリフト補償器の周波数特性を解析することで補償制御を比較する方法を検討し,単純な位置フィードバックでは受動性が損なわれること,提案手法の制御則の一部を省略して通信データを一時的に削減できることを示した.また,実機実験により,従来の単純な位置フィードバック則では位置ドリフトは補償されるものの環境中の物体形状を適切に提示できないことを示した.