著者
若林 明子 菊地 幹夫 井上 亙 川原 浩 古井戸 良雄
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.119-124, 1975-12-25 (Released:2010-03-10)
参考文献数
10

界面活性剤の水棲生物に対する影響をヒメダカに対する半数致死濃度測定で調べた。界面活性剤はn-ラウリル硫酸ナトリウム (C12-AS), n-ミリスチル硫酸ナトリウム (C14-AS), n-セチル酸ナトリウム (C16-AS), 直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム (LAS) および脂肪酸ナトリウム塩 (セッケン) を用いた。ASは蒸留水中でLASとセッケンについては蒸留水および人工軟水中で試験を行なった。これらの界面活性剤の蒸留水中の毒性はC16-AS>セッケン=C14-AS>LAS>C12-ASの順であり, ASはアルキル基の長短により毒性が大きく異なった。LASは人工軟水中で共存塩の影響を強く受けて毒性が増大するが, セッケンは反対に毒性が急激に減少し, LASに比較して毒性はずっと小さくなる。したがって実際の河川水中の毒性はC16-AS>C14-AS>LAS>C12-AS>セッケンの順となる。
著者
菊地 幹夫
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.1189-1199,1210, 1996-10-20 (Released:2009-11-10)
参考文献数
58
被引用文献数
4 2

界面活性剤は家庭用合成洗剤の主要成分である。河川水中から何種類かの界面活性剤がしばしば検出されるため,これらの界面活性剤の水環境への影響が米国,ヨーロッパや日本で議論されてきた。この論文ではアニオン界面活性剤について,環境汚染のモニタリング,環境中での運命,急性毒性・慢性毒性・致死濃度以下での毒性と環境リスク評価についてレビューを行った。日本では家庭排水が十分には処理されていないために,報告された急性毒性と慢性毒性の値は河川水中のLASの濃度レベルの悪いほうのケースとオーバーラップし,十分に安全であるとは言えなかった。そのほかの界面活性剤の環境安全性については,河川での汚染濃度もまた慢性毒性データも不充分であることから,最近の研究を紹介するにとどめた。界面活性剤のライフサイクルアセスメントの事例も紹介した。