著者
河野 通治 石井 二三夫 羽田 いそ子 小山 康夫 菊地 幹雄
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.715-724, 1974
被引用文献数
1

Neocarzinostatin (以下NCSと略す) 水溶液は, 前報1)の基礎的研究によって, 熱に対する失活は見掛上1次反応にしたがうことが明らかになった. また, ARRHENIUSの式の成立する加温範囲 (45°-55℃) の失活速度定数から, 活性が10%低下する期間を推定したさい, 4℃および10℃におけるNCSの水溶液の有効保存期間は, それぞれ32カ月および13.6カ月となった。この計算上の推定有効期間を確かめるため, 製造ロット番号の異なる6ロットの精製NCS粉末を用い, 濃度3mg, 2mg, 1.3mgおよび1mg力価/mlの水溶液を1-2mlのアンプル製剤 (注射液) とし, 各温度に保存したさいの長期安定性試験をおこなった。この実験では, 0.015M酢酸緩衝液の代りに等張溶液にするため, 生理食塩液にNCSを溶解して安定試験を試みた。次いで, 制癌活性と抗菌活性の経時変化および室温付近における低濃度(400mcg力価/ml)のNCSのpHによる影響などについて検討するとともに, 臨床上NCS注射液の希釈液に使用されると考えられる無機塩, アミノ酸, 糖を含む補液およびその他の薬剤の存在下でのNCSの安定性について実験した。
著者
大黒 絹枝 分部 浩和 東 敦 向井 典江 今田 拓磨 米田 裕光 大西 久子 蔵本 美香 宮本 寿 大森 和則 玉岡 寿 菊地 幹雄
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
日本化学療法学会雜誌 = Japanese journal of chemotherapy (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.74-90, 1995-07-31
被引用文献数
4

ニューキノロン薬grepafloxacin (GPFX) の<I>in vitro</I>および<I>in vivo</I>抗菌力について検討し.以下の結果を得た。<BR>1. GPFXは好気性菌及び嫌気性菌に対し幅広い抗菌スペクトラムと強い抗菌力を有していた。<BR>2. 臨床分離菌株に対するGPFXの抗菌力は, グラム陽性菌では比較薬剤中最も強い抗菌力を示し, グラム陰性菌ではCPFXに次ぐ抗菌力であった。<BR>3. GPFXは各種測定培地, 培地のpH, 接種菌量, 血清添加および金属イオンの影響をほとんど受けなかったが, 培地の酸性pHおよび高濃度の金属イオン存在下で, わずかに抗菌力の低下が認められた。<BR>4. GPFXはMIC以上の濃度で用量依存的に殺菌作用を示し, MICとMBCの差は小さく, 殺菌的に作用した。<BR>5. GPFXに対する自然耐性菌の出現頻度は低く, 継代培養による耐性も獲得しにくかった。<BR>6. GPFXは<I>Escherichia coli</I>由来のDNA gyraseにより, DNAから超螺旋型DNA生成する反応を強く阻害した。<BR>7. GPFXのpost antibiotic effect (PAE) は<I>Staphylococcus aureus</I> FDA 209Pで2時間, <I>E. coli</I> NIHJ JC-2 で1.6時間であり, CPFX同様に比較的長かった。<BR>8. マウス実験的感染症に対するGPFXの治療効果は, グラム陽性菌では比較薬剤のなかで最も強く, グラム陰性菌ではCPFXと同等もしくは優れた効果を示した。<BR>以上の<I>in vitro</I>および<I>in vivo</I>抗菌作用の検討成績より, GPFXは呼吸器感染症をはじめ各種細菌感染症に対して, 有用な薬剤であることが示唆された。