著者
菊地 政則 中島 幸一 浅野 行蔵 高尾 彰一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.176-180, 1996-02-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
11
被引用文献数
4 4

北海道の伝統的漬物,ーシン漬の発酵品質に及ぼす食塩濃度および発酵温度の影響について検討し,以下のような結果を得た.発酵の初期段階では,野菜由来のグラム陰性細菌が多かったが,乳酸菌の増殖に伴なう乳酸の生成によって,発酵が進行するに連れてグラム陰性菌は減少した.野菜由来の乳酸菌は乳酸球菌が主流で,106/gであるのに対し,乳酸桿菌LactobaciLLiは103/g以下であった.食塩3.5%添加では,2.0%に比べ乳酸菌の増殖は緩慢で,そのたあ,グラム陰性細菌の増殖が若干認められた.漬物の発酵は5℃より10℃の方が速く進んだ.これは乳酸菌の増殖が,5℃より10℃で速やかに行なわれたためである.しかしながら,10℃発酵では,後半にPichia属の増殖が認められ,品質が不安定となった.したがって,ニシン漬の発酵温度は比較的低温の5℃のものが長期間の品質維持には有効と思われる.