著者
菊野 春雄
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.116-120, 1995-06-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
10
被引用文献数
3 1

The purpose of the present study was to examine whether or not the eyewitness suggestibility effect might be obtained with a recognition memory and a source-monitoring test, when an original event consisted of many pictures. In this source-monitoring test subjects identified the source of their memories. Results showed that the suggestibility effect was obtained in the recognition memory but not in the source-monitoring test, suggesting that misleading postevent information did not impair memory of the original event. The results also indicated that the eyewitness suggestibility effect might be caused by misled subjects' decision rather than their integrated memory representation.
著者
菊野 春雄
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.55-66, 2001 (Released:2017-05-26)

本論文の目的は、誤った目撃証言を予防・診断・復元するという観点にもとついて、心理学研究を展望し、その可能性について検討した。これまでの研究を、予防研究、診断研究、復元研究に分類した。予防研究というのは、誤った証言の発生を予防することに貢献する研究であり、目撃証言のメカニズムを解明し、目撃証言に影響する要因を明らかにする研究である。診断研究というのは、目撃証言が正しいのかどうかを診断する方法を開発するのに貢献する研究である。復元研究は完全な形で想起されなかった記憶表象を復元する方法の開発に貢献する研究である。これらの研究を展望することにより、これらの3つの領域の研究の発展が、心理学研究の可能性を豊かなものにすることが示唆された。
著者
菊野 春雄
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

第一に、本研究では、これまでの目撃記憶の研究を評論した。目撃記憶の研究を予防的研究、診断的研究、回復的研究の3つのタイプに分けて考察した。さらに、これらの研究を展望することにより、予防的研究と診断的研究は多く行われているが、回復的研究が少ないことを考察した。特に、モンタージュ法や似顔絵法が、回復的研究の手法のひとつと考えられることを示唆した。第二に、幼児と大人を対象に顔認識の実験を行った。この研究の目的は、似顔絵を描くことが顔の再認にどのような影響を及ぼすのかを発達的に検討した。そこで、被験者にはビデオでターゲットの登場人物を呈示した。ターゲットの記銘は、偶発記憶課題であった。被験者がビデオを視聴した後で、半分に被験者である似顔絵呈示群には、実験者が顔を描いて、先程見たターゲットの顔を思い出すように促した。残り半分の被験者である統制群には、家の絵を描いて、家を思い出すように促した。その後で、数枚の顔写真を見せ、その中からビデオの人物がどれであるのかを再認させた。その結果、幼児では、統制群よりも似顔絵呈示群で、再認成績が有意に優れた。他方、大学生では似顔絵呈示群よりも統制群で、再認成績が優れた。この結果は、幼児と大学生で似顔絵が顔記憶に及ぼす効果が異なることを示している。幼児では、似顔絵を呈示することによって、ターゲットについて視覚的リハーサルが促されたのであろうと仮定された。他方、大学生はターゲットについて自発的に視覚的リハーサルを行っているが、似顔絵を呈示することによって妨害されたのではないかと仮定された。このことは、事件を目撃した後で、犯人についての似顔絵を描くことが、大人にとっては負の効果があるが、幼児には促進的効果があることを示唆している。