著者
陶山 佳久 鈴木 準一郎 蒔田 明史
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.97-106, 2010-03-31 (Released:2017-04-20)
参考文献数
27
被引用文献数
2

近年のDNA分析技術の発展を背景としたジェネット識別データ等の蓄積により、タケ・ササ類の一斉開花に関する新たな視点が加わり、関連する議論を整理する必要があると考えられた。そこで本稿では、タケ・ササ類の一斉開花に関して、いくつかの用語の定義と仮説の提唱を行った。まず一斉開花の概念を整理し、開花の個体性と規模を明確に分けて表現することとし、「同調開花」、「単独開花」、「広域開花」および「小規模開花」という用語の使用を提唱した。次に、ジェネット混在型の空間分布構造が、タケ・ササ類の一斉開花性を強化する要因の一つになりうることを指摘し、「ジェネット混在型競争回避仮説」として提唱した。また、典型的な一回繁殖・一斉開花性には合致しない現象として「再開花」、「開花後生残稈」、「再生稈」、「小規模開花」、「一斉前小規模開花」および「一斉後小規模開花」に注目し、これらが一回繁殖・一斉開花性のリスク回避(保険)システムとして機能しうることを指摘した。最後に、個体群内に生じる可能性のある長周期開花性の突然変異は、長寿命クローナル植物のジェネット混在型高密度優占個体群において固定されやすいことを説明し、長期待機型一斉開花性の進化メカニズムの一つとして考えられることを提案した。
著者
小林 一三 蒔田 明史 星崎 和彦
出版者
秋田県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

研究代表者等はこれまで一貫して寒冷地域におけるマツ材線虫病の発症メカニズムの解明に取り組んできており、以下の知見を得ることができた。1.寒冷地におけるマツ材線虫病感染による枯死木発生は,感染直後の夏場のみならず,晩秋から翌年(年越し枯れ)にかけて通年発生すること。2.材線虫病の媒介者であるマツノマダラカミキリの羽化時期は秋田市においては6月中旬から7月末,産卵時期はそれより約一ヶ月遅れの7月中旬から8月一杯であること。3.カミキリの産卵は,マツの幹下部よりも幹上部や枝に多いこと。4.温暖地では通常1年1化であるマツノマダラカミキリは寒冷地では2年1化になるものがあり,特に夏が冷涼であった年にはその比率が高まること。5.1年1化の場合カミキリ1頭が数万頭のザイセンチュウを媒介するが,2年がかりで羽化したカミキリの体内に存するザイセンチュウ数は著しく少なくなること。6.ツチクラゲ病や雪害枯死などの在来要因によって枯れた木も,マダラカミキリの産卵対象木となり得ること。7.年越し枯れ木の材線虫保有数は,当年枯れ木に比べると著しく少ないが,6月以降に枯れた場合には,マダラカミキリの産卵対象木となるため,防除対象にしなければならないこと。これらの知見をもとに,マツ材線虫病の防除のためには,媒介者であるマツノマダラカミキリの生態に即した防除法をとることが重要であり,従来の全量駆除に変わって,マダラカミキリの産卵対象となった木に的を絞って防除するマツ枯れ防除の「秋田方式」を提唱した。この方式は秋田県行政にも採用され,「松くい虫専門調査員」の制度を生み,マツ枯れ防除法の改善に結びついている。また,枯死木の処理に当たり,それらを資源として有効活用する炭焼きに取り組んできたが,その活動が人々の森への関心を呼び起こして,官民学の協働によるマツ林の保護につながることも示された。