著者
川北 眞紀子 薗部 靖史
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.27-38, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
37

日本では長年にわたって企業が芸術支援をしている。近年では資金提供だけでなく,アートプレイス(アートが存在する場所)を企業自らが運営し,関係者のコミュニティを支える事例が注目されている。そこでは,アートプレイスを通じて,企業はステークホルダーとの関係を深め,企業への好意的な態度を獲得している。そこで,本稿の目的は,アートプレイスのメディアとしての役割をパブリック・リレーションズの視座から示すこととする。最初に企業の芸術支援に関する学際的な研究群を整理した。そのうえで,それぞれのコミュニケーション上の特徴を期間,到達範囲と深さ,コンテンツの編集権に関して提示した。これにより,企業が多様なステークホルダーとの関係構築を目指すための手がかりが得られただけでなく,芸術組織にとっても,資金提供者との交流の場を共有する意義が示された。
著者
大平 修司 薗部 靖史 スタニスロスキー スミレ
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.61-89, 2015 (Released:2016-05-31)
参考文献数
61
被引用文献数
3 2

本研究の目的は,混合研究法を用いて,東日本大震災後の日本で,消費を通じて社会的課題の解決を図るソーシャル・コンシューマーの意思決定プロセスを明らかにすることにある。具体的には,まずアンケート調査に基づき,寄付などの実施というシビック・アクションと寄付つき商品などの購入というソーシャル・コンサンプションによる過去の社会的課題解決行動を変数として,消費者を 3 つのクラスタに分ける。次にクラスタごとのデモグラフィクスにおける特徴を比較する。さらに行動統制を有効性評価と入手可能性評価に置き換えた計画的行動理論モデルを用いて,クラスタごとの寄付つき商品の意思決定プロセスの違いを検討する。最後にインタビュー調査と現実の事例に基づいて,分析結果のマーケティング戦略への示唆を検討する。分析では,定量分析と定性分析による混合研究法を用いた。まず上記モデルを用いて,アンケート調査によって得られたデータの全サンプルを対象とした共分散構造分析を実施した。その結果,主観的規範のみ,統計的に有意とならなかったが,行動に対する態度と有効性評価,入手可能性評価は意図に影響を与える点が明らかとなった。次に過去の社会的課題解決行動を用いて,クラスタ分析を実施し,サンプルを現在のソーシャル・コンシューマー層と潜在的ソーシャル・コンシューマー層,無関心層に分け,χ2検定と残差分析,分散分析を実施したところ,クラスタ間のデモグラフィック変数に差が認められた。さらに多母集団同時分析を実施し,クラスタ間で意思決定プロセスが異なる点が明らかとなった。最後にグループインタビューの結果と現実の事例を用いて,本研究の分析結果から得られた寄付つき商品のマーケティング戦略への示唆を議論した。