著者
大平 修司 スタニスロスキー スミレ 日高 優一郎 水越 康介
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.19-30, 2021-01-07 (Released:2021-01-07)
参考文献数
61
被引用文献数
2

ふるさと納税は,問題点を抱えているものの,着実にその規模が拡大している。一方で,ふるさと納税に関する研究は,その実態把握研究が大半であり,特に利用者研究は限定的な理解に留まっている。本稿では,まずふるさと納税を寄付型および報奨型クラウドファンディングとして理解し,利用者がふるさと納税を行う要因を検討する。次に寄付者が寄付を行う要因を検討する。さらにふるさと納税の返礼品を寄付つき商品と理解することでコーズ・リレーテッド・マーケティング研究を通じ,消費者が寄付つき商品を購入する要因を検討する。最後にふるさと納税の利用者を理解する枠組みを提示し,地方自治体のマーケティングへの示唆を述べる。
著者
大平 修司 薗部 靖史 スタニスロスキー スミレ
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.61-89, 2015 (Released:2016-05-31)
参考文献数
61
被引用文献数
3 2

本研究の目的は,混合研究法を用いて,東日本大震災後の日本で,消費を通じて社会的課題の解決を図るソーシャル・コンシューマーの意思決定プロセスを明らかにすることにある。具体的には,まずアンケート調査に基づき,寄付などの実施というシビック・アクションと寄付つき商品などの購入というソーシャル・コンサンプションによる過去の社会的課題解決行動を変数として,消費者を 3 つのクラスタに分ける。次にクラスタごとのデモグラフィクスにおける特徴を比較する。さらに行動統制を有効性評価と入手可能性評価に置き換えた計画的行動理論モデルを用いて,クラスタごとの寄付つき商品の意思決定プロセスの違いを検討する。最後にインタビュー調査と現実の事例に基づいて,分析結果のマーケティング戦略への示唆を検討する。分析では,定量分析と定性分析による混合研究法を用いた。まず上記モデルを用いて,アンケート調査によって得られたデータの全サンプルを対象とした共分散構造分析を実施した。その結果,主観的規範のみ,統計的に有意とならなかったが,行動に対する態度と有効性評価,入手可能性評価は意図に影響を与える点が明らかとなった。次に過去の社会的課題解決行動を用いて,クラスタ分析を実施し,サンプルを現在のソーシャル・コンシューマー層と潜在的ソーシャル・コンシューマー層,無関心層に分け,χ2検定と残差分析,分散分析を実施したところ,クラスタ間のデモグラフィック変数に差が認められた。さらに多母集団同時分析を実施し,クラスタ間で意思決定プロセスが異なる点が明らかとなった。最後にグループインタビューの結果と現実の事例を用いて,本研究の分析結果から得られた寄付つき商品のマーケティング戦略への示唆を議論した。