著者
藤井 岬 宮本 重範 村木 孝行 内山 英一 鈴木 大輔 青木 光広 辰巳 治之
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0580, 2008 (Released:2008-05-13)

【はじめに】足関節の背屈可動域制限は足関節骨折や捻挫後に多く見られる障害の1つであり、理学療法が適応となる。足関節背屈可動域制限因子としては下腿三頭筋の伸張性低下の他に、距腿関節や脛腓関節の関節包内運動の低下が考えられている。関節包内運動に関する過去の研究では、主に距腿関節に焦点を当てたものが多く、遠位脛腓関節へのアプローチについての見解は少ない。関節モビライゼーションによる腓骨遠位端(外果)の後上方滑り運動の増大は内・外果間の距離の拡大につながり、足関節背屈の可動域を拡大させると考えられている。しかし、この運動が効果的となる徒手負荷と回数はいまだ明らかにされていない。本研究の目的は腓骨外果の後上方滑りの振幅運動を想定した張力を繰り返し腓骨外果に加えた時の脛骨と腓骨の変位量と足関節可動域の変化量を測定し、これらの変化量と後上方滑りの反復回数の関係を明らかにすることである。【方法】実験には生前同意を得られた未固定遺体7肢(男性5名,女性2名,平均79.9歳)を用いた。実験は大腿遠位から1/3を切断した下肢標本を足底接地させ、中足骨と踵骨で木製ジグに固定し、足関節底屈10°で行った。反復張力は万能試験機(Shimazu社製、AG-1)を用い,MaitlandによるGridingの分類GradeIIIの張力を想定した15N~30Nの振幅で1000回、0.5Hzで後上方へ加えられた。骨運動と足関節背屈可動域に計測には三次元電磁気動作解析装置(Polhemus社製、3Space Fastrack)を用いた。【結果】腓骨外果の実験開始時(1回目)に対する相対的な位置は振幅100回目、1000回目でそれぞれ0.4±0.3mm、0.9±0.4mm後上方の方向へ変位した。脛骨は振幅100回目、1000回目でそれぞれ0.3±0.2°、0.7±0.8°、腓骨では0.2±0.2°、0.6±0.5°開始時より外旋した。実験前の足関節背屈可動域は実験開始前の14.4±7.5°に対して、1000回の反復実験終了後では16.5±7.1°であり、有意差がみられた。【考察】本実験では、腓骨外果の後方滑り反復張力は脛骨と腓骨の両骨を外旋させ、腓骨外果を後上方へ変位させた。また、1000回で十分と考えられた振幅後でも腓骨外果の変位は1mmに満たなかった。しかし、腓骨に反復張力を加えることによって足関節背屈可動域は有意に拡大した。すなわち、非常にわずかな腓骨の後上方への移動と脛骨・腓骨の外旋運動が明らかに背屈角度の拡大に影響していることが示された。したがって、腓骨外果に後上方への振幅をGradeIIIで加える遠位脛腓関節モビライゼーションは背屈可動域制限の治療に効果的であると考えられる。さらに、1000回以内であれば振幅回数が多いほど効果的である可能性が示唆された。
著者
藤井 岬 宮本 重範 村木 孝行 内山 英一 鈴木 大輔 寺本 篤史 青木 光広
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0995, 2007 (Released:2007-05-09)

【目的】足関節周囲の骨折や靭帯損傷による固定や不動により生じる足関節拘縮は,歩行動作に影響を与え,日常生活動作や社会活動に大きな影響を及ぼす.関節拘縮に対する理学療法手技の1つに関節モビライゼーションがあり,足関節背屈制限に対して距腿関節,遠位脛腓関節へのモビライゼーションが治療として用いられる.臨床では距腿関節モビライゼーションが多く用いられているが,遠位脛腓関節に対する治療手技の効果について詳細は明らかにされていない.本研究の目的は,生体に近い未固定の遺体を用いて遠位脛腓関節の運動学的な特性を把握し,足関節拘縮に対する効果的な治療手技を検討することにある.【方法】実験には生前同意を得られた新鮮遺体標本7肢(男性5名,女性2名,平均死亡年齢79.9)を用いた.下肢標本を足底接地させ,中足骨と踵骨で木製ジグに固定した.近位の固定を行う前に足関節の背屈可動域,腓骨の運動を磁気センサー3次元空間計測装置(3Space Tracker System)を用いて計測した.次いで,足関節底屈10°を保持して大腿遠位部をジグに固定した.モビライゼーション手技を想定して腓骨外果を4方向(後方,後上方,上方,後外側)に,それぞれ19.6N,39.2Nの強度で牽引し,腓骨の変位をX(前後方向),Y(内外側方向),Z(上下方向)成分に分けて測定した.【結果】足関節の背屈可動域は平均13.25°±4.85であった.4つのモビライゼーション方向(後方,後上方,上方,後外側)の腓骨外果の変位はそれぞれ,X軸上で0.13±0.10,0.19±0.11,0.09±0.08,0.48±0.16,Y軸上で0.19±0.12,0.13±0.11,0.04±0.04,0.22±0.20,Z軸上で0.09±0.06,0.07±0.06,0.05±0.04,0.20±0.10であった.二元配置分散分析を用いて検定したところ,3軸方向成分全てにおいて牽引による変位量は統計学的に有意であった(X:P<0.0005,Y:P=0.005,Z: P<0.0005).牽引強度による変位量の比較ではX成分でのみ有意に39.2Nで大きかった(P<0.0005).方向と強度の相互作用については有意差が認められなかった.方向についてBonferroniの方法で多重比較したところ,X,Z成分では後外側とその他の方向,Y成分では上方とその他の方向のモビライゼーション間で有意差がみられた.【考察】以上の結果より,後外側方向へのモビライゼーション手技は腓骨を前後・上下方向へ大きく動かすことが明らかにされた.また上方向への手技では内外側への動きが少なかった.更に前後方向への変位にのみモビライゼーション強度が関与することが判明した.従って,足関節背屈制限に対する遠位脛腓関節のモビライゼーションにおいては,腓骨の後外側方向への滑り運動手技が有効であり,強い強度を用いた方がよいと考えられる.
著者
日髙 恵喜 青木 光広 村木 孝行 泉水 朝貴 藤井 岬 鈴木 大輔 辰巳 治之 宮本 重範
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.325-330, 2008-12-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
20

【目的】本研究の目的は,未固定遺体8股を用いて腸骨大腿靭帯の上部線維束と下部線維束を選択的に伸張することができる股関節肢位を明らかにすることである。【方法】変位計測センサーを各線維束の中央部に設置し,伸び率を測定した。また3次元動作解析装置を用いて股関節角度の測定を行った。靭帯を伸張させた際に緩みがなくなったときの変位の値を開始距離(L0)として計測を行った。上部線維束は6肢位,下部線維束は7肢位で伸び率を測定した。【結果】上部線維束の伸び率は内転20°+最大外旋,最大外旋,内転10°+最大外旋の順に大きく,最大伸展の伸び率より有意に大きな値を示した。下部線維束の伸び率は最大伸展,外旋20°+最大伸展の順に大きく,最大外転の伸び率より有意に大きな値を示した。【考察】上部線維束では最大外旋,内転位の最大外旋,下部線維束では最大伸展,外旋位の最大伸展が腸骨大腿靭帯のストレッチング肢位として有用であると考えられた。本研究結果は腸骨大腿靭帯の解剖学的走行に基づいた伸張肢位と一致した。
著者
日高 恵喜 青木 光広 村木 孝行 泉水 朝貴 藤井 岬 鈴木 大輔 辰巳 治之 宮本 重範
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.325-330, 2008-12-20

【目的】本研究の目的は,未固定遺体8股を用いて腸骨大腿靭帯の上部線維束と下部線維束を選択的に伸張することができる股関節肢位を明らかにすることである。【方法】変位計測センサーを各線維束の中央部に設置し,伸び率を測定した。また3次元動作解析装置を用いて股関節角度の測定を行った。靭帯を伸張させた際に緩みがなくなったときの変位の値を開始距離(L0)として計測を行った。上部線維束は6肢位,下部線維束は7肢位で伸び率を測定した。【結果】上部線維束の伸び率は内転20°+最大外旋,最大外旋,内転10°+最大外旋の順に大きく,最大伸展の伸び率より有意に大きな値を示した。下部線維束の伸び率は最大伸展,外旋20°+最大伸展の順に大きく,最大外転の伸び率より有意に大きな値を示した。【考察】上部線維束では最大外旋,内転位の最大外旋,下部線維束では最大伸展,外旋位の最大伸展が腸骨大腿靭帯のストレッチング肢位として有用であると考えられた。本研究結果は腸骨大腿靭帯の解剖学的走行に基づいた伸張肢位と一致した。