著者
藤井 拓人
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.355, 2018 (Released:2018-04-01)
参考文献数
4

ヒトは,甘味,苦味,酸味,塩味,うま味の5種類の味を,舌の味蕾に存在する味覚受容体で感じとる.甘味,うま味および苦味の受容体は,Gタンパク質共役型受容体である.興味深いことに,甘味やうま味の受容体(TAS1Rs)はそれぞれ1種類しか同定されていないが,苦味受容体(TAS2Rs)は,少なくとも25種類が見つかっている.これは,ヒトが様々な有害物質に即座に対応するために,苦味を単なる味ではなく,「危険」シグナルとして検知するためと考えられる.近年,味覚受容体が口腔以外の様々な組織において発現し,味覚受容以外の機能を担っていることが報告されている.苦味受容体も,気道,胃,大腸,心臓などで発現が確認されている.胃においては1940年代に,コーヒーや紅茶に含まれる苦味物質であるカフェインを胃内投与することで,胃酸分泌が促進することが報告された.また,苦味物質が胃の内分泌細胞のグレリン産生を促進することも報告されている.しかし,苦味物質による酸分泌調節の詳細な分子メカニズムは不明であった.本稿では,カフェインによる胃酸分泌調節機序を詳細に検討した論文を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Avau B., Depoortere I., Acta Physiol., 216, 407-420(2016).2) Roth J. A., Ivy A. C., Am. J. Physiol., 141, 454-461(1944).3) Janssen S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 108, 2094-2099(2011).4) Liszt K. I. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 114, E6260-E6269(2017).
著者
藤井 拓人
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

様々な癌細胞に異常発現するナトリウムポンプα3アイソフォーム(α3NaK)は、通常ナトリウムポンプが存在する原形質膜ではなく、rab10の存在する小胞に局在していた。ヒトおよびマウス癌細胞を用いたin vitro実験およびin vivo実験の結果、細胞内小胞に分布するα3NaKは、癌細胞の生存および成長に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。