著者
野尻 亘 兼子 純 藤原 武晴
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.1-21, 2012-01-01 (Released:2016-12-01)
参考文献数
41
被引用文献数
1

日本における自動車部品の中・長距離のジャスト・イン・タイムによる物流システムは,特にオイルショック以降,多品種生産,フレキシブルな生産への移行,通信情報システムの発達,完成車工場立地の広域化を背景として,完成車メーカー,部品サプライヤー,その物流子会社やサード・パーティー・ロジスティクス(3PL)相互の協力により形成された.各部品サプライヤーからミルクラン方式で集荷する集散地の集荷物流センターと,完成車工場近くで,部品の仕分け・定時多回納入を行う配送納入センターを設け,その間は大型車で幹線集約輸送をする.それは,積合わせによる幹線輸送における規模の経済の実現と,きめ細かな仕分けや多頻度配送を可能とする範囲の経済を同時に実現するフレキシブルな物流システムである.各部品メーカーが物流コストを負担し,多様な物流が展開している本田技研熊本製作所と,完成車メーカー側が物流コストを負担して,3PLを元請にして集荷している三菱自動車水島製作所の具体的事例について比較,考察した.