著者
藤島 昭宏 竹内 健一郎 佐藤 充羽 佐藤 康太郎 宮﨑 隆
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:18844421)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.241-250, 2012
参考文献数
15

研磨したチタンに4種類の表面処理(サンドブラスト,プライマー,2種類のトライボケミカル)を施し,7種類のレジンセメントを用いてチタン接着体を接着させ,せん断接着強さ(SBS)の測定を行った.チタン研磨面における接着強さは,機能性モノマーを含有するアンフィルド系レジンセメントでは,コンポジット系レジンセメントよりも顕著に高いSBSを示したが,表面処理を施しても接着強さには影響しなかった.サンドブラスト処理面へのプライマー(B-MDP)処理では,機能性モノマーを含有しないコンポジット系レジンセメントは,顕著に高いSBSを示した.また,トライボケミカル(TRB)処理においても,B-MDP処理面とほぼ同等の高いSBSを示した.以上の結果から,チタンに対する接着強さの増加には,B-MDP処理やTRB処理を施した後,機能性モノマーを含有しないレジンセメントを用いた場合,最も効果的であった.
著者
草野 綾 藤島 昭宏 竹内 健一郎 宮﨑 隆
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:18844421)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.192-201, 2011
参考文献数
13
被引用文献数
1

本研究の目的は,合着材料としてのレジンセメントのチタンに対する接着性を評価するのに適した接着試験法を検討することである.チタン研磨面およびサンドブラスト処理面に対し5種類の接着性レジンセメントを用いて引張接着試験とせん断接着試験を行い,それぞれの接着強さならびに残留セメント率(RRC)の関係について検討した.接着強さは,せん断接着強さ(SBS)が引張接着強さ(TBS)より顕著に大きい値を示し,統計学的有意差(p<0.05)が認められた.SBSとTBSの関係は,チタン研磨面では相関関係(R<sup>2</sup>=0.82)が認められたが,サンドブラスト処理面では明瞭ではなかった(R<sup>2</sup>=0.17).RRCの測定は,チタン研磨面だけで測定可能であり,特にTBSでは高い相関(R<sup>2</sup>=0.99)が認められた.チタン研磨面を用いた引張接着試験は,接着強さだけでなく破断様式をRRCにより簡便に評価できるため,レジンセメントの接着性を評価するのに好ましい接着試験法であることが示唆された.
著者
藤島 昭宏 宮崎 隆 藤島 由香里 芝 [アキ]彦
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.218-226, 1997-05-26 (Released:2018-12-22)
参考文献数
17
被引用文献数
1

レジン前装チタンクラウンを製作する基礎的研究として, ノンリテンションビーズ法を想定した, 被着体としてのチタンの表面性状に及ぼすサンドブラスト処理の影響について, コバルトクロム合金と比較した.実験には平均粒径50, 110, 250μmの3種類のアルミナ粉末を用いて, 金属の板状試験片に対し処理圧力0.25〜0.45 MPaで5〜30秒間サンドブラスト処理を施し, その表面性状の変化を計測した. サンドブラスト処理による試験片の重量損失は, 処理時間の増加とともに単調に増加したが, アルミナ粒径の相違による影響は小さかった. チタンの重量損失は, コバルトクロム合金と比較して顕著に小さかったが, 体積損失に換算するとほぼ同一の値を示した. 反射電子(BSE)像から, 試験片表層にはサンドブラスト処理に用いたアルミナ粒子が明瞭に観察され, BSE像の画像解析から面積比の概算値で54〜61%のアルミナがチタン処理面上に存在していた. X線微小分析の結果, 10秒間のサンドブラスト処理でチタン上には33〜45 wt%, コバルトクロム合金上では22〜42 wt%のアルミナが検出された. また, 処理に用いたアルミナ粒径が小さくなるほど, アルミナの存在量は大きくなったが, 処理時間, 圧力の影響は小さかった. チタンでは処理圧を低下させることにより, 試験片の変形量は顕著に減少したが, 表面粗さの低下は小さかった. これらの結果から, チタンに対するサンドブラスト処理は, 他の非貴金属合金に対するよりも低圧力, 短時間の処理を行うほうが好ましく, またサンドブラスト処理によるアルミナ汚染の影響が避けられないため, サンドブラスト処理面に対する接着は, 金属だけではなくアルミナに対する接着性も考慮する必要性が示唆された.