著者
神尾 次彦 伊戸 泰博 藤崎 幸蔵 南 哲郎
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.43-48, 1990
被引用文献数
16

栃木県下の1牧野において Haemaphysalis longicornisの発生消長を周年調査し, 未吸血若ダニ唾液腺内の Theileria sergentiの感染状況を調べた. マダニの採集はフランネルを用いたハタズリ法及び土壌サンプル採集法を併用して行い, T. sergentiの感染状況は, 若ダニを家兎に吸血させて半飽血状態とした後, 唾液腺を摘出し, メチルグリーン・ピロニン染色することによって行った. その結果, 本牧野に生息する若ダニは, 冬期を含んだ1年を通じてT. sergentiを保有していることが明らかとなった. 放牧期間の5月から10月にかけて採集された若ダニでは, 家兎吸血24時間目に唾液腺内の原虫が検出されたのに対し, 他の時期に採集された若ダニでは検出されなかった. この結果から, 放牧期間中の環境要因が若ダニ唾液腺内の原虫成熟に何らかの影響を及ほしていることが示唆された.
著者
大田 方人 辻 正義 辻 尚利 藤崎 幸蔵
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.671-675, 1995-08-15
被引用文献数
4

北海道の褐毛和種牛の血液から分離した Babesia属原虫 (B. sp,1)の形態, 抗原およびタンパク質性状について, B. ovata(三宅株)との比較を中心に解析した. ギムザ染色後のB. sp.1感染血液塗抹標本を光学顕微鏡を用いて観察すると, B. ovataと類似した種々の形態を呈する虫体が認められた. しかし, 双梨子状虫体の長径, 短径および長幅指数は B. ovataより有意に大きかった. 酵素免疫測定法を用いて解析した結果, B. ovata抗原と β.sp.1抗原と B. ovata感染牛血清およびβsp.1抗原と B. ovata感染牛血清はそれぞれ交差反応性を有するが、いずれも同種の抗原と血清との反応よりは弱かった. また, B sp.1抗原に対して B. bonis および B. bigimina淑感染牛血清はほとんど反応しなかった. B. sp.1または B. ovata感染牛血清を用いたウエスタンブロット法によって, B. sp.1 と B. ovataとでは分子量の異なるタンパク質が抗原性を有することが明らかとなった. 二次元ポリアクリルアミド電気泳動後のタンパク質スポットパターンは, B. sp.1 と B. ovataとでは著しく異なった. 以上の成績から, B. sp.1 は B. ovataとは異なる種である可能性が示唆された.