著者
山田 隆 藤江 誠
出版者
広島大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

・クロロウイルスCVK2感染初期遺伝子の同定と発現解析ウイルス感染後、5-10minの間にウイルス初期遺伝子が発現する。最初期に発現する遺伝子計23個を同定し、その発現パターンと特異的プロモータ構造を解析した。初期遺伝子には、TFIIB,mRNA capping enzyme,helicase,transcription factors等転写に関係する因子、aa-tRNA synthetases,ribosomal proteins等翻訳関係因子、その他各種代謝系に関係する酵素がコードされていた。これら各々の感染における役割の確定が興味深い問題である。クロロウイルス感染初期転写の特徴は、感染後40minでそのパターンが大きく切り替わる事である。すなわち当初poly(A)付加されるmRNAは感染後40min以降は全くpoly(A)を失う。転写開始、終結が40min以降は極めてルーズになり、readthroughが頻繁に起こる。感染後、早期に生成される宿主細胞表面ヒアルロン酸、キチンは、宿主細胞を一時的に外環境より保護する意義があると思われる(論文発表)。・クロロウイルスCVK2のコードする新奇細胞壁分解リアーゼの解析ウイルスが宿主細胞壁を特異的に分解するには複数の酵素活性が必要であり、これまでに3種の多糖加水分解酵素遺伝子をウイルスゲノム上に同定してある。さらに未知ORFが宿主溶解活性があることを見いだしvAL-1と命名した。GST-融合タンパク質として大腸菌で生成したvAL-1を用いて、宿主細胞壁を分解し生成オリゴ糖をMALDI-TOFF-MASSスペクトロメトリーで解析した。その結果、この酵素はC2位に側鎖を持つグルクロン酸のβ結合を脱離反応で切断するリアーゼ活性を有することが判明した。既知のリアーゼとは諸性質を異にし酵素学的にも興味深い酵素である(論文発表)。また、切断基質となる糖鎖構造もまたユニークであり、このウイルスの宿主特異性を考える上で重要な情報となる。
著者
山田 隆 藤江 誠
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

青枯れ病菌巨大ファージRSL1ゲノムに検出した343個の遺伝子を対象にDNAマイクロアレイ解析を行い、感染期における4つの発現パターンを検出しゲノムマップ上に塗り分けた。持続的感染期に発現する12個の遺伝子を同定し、宿主菌増殖抑制/活性化制御等に関する機能解析を行い興味深い新規知見を得て、当初の目的を達成できた。病原細菌を薬剤を使わずファージを用いて持続的に制御する新システムとして重要と思える。