著者
消化器内視鏡の感染制御に関するマルチソサエティ実践ガイド 作成委員会 尾家 重治 大久保 憲 伏見 了 赤松 泰次 石原 立 佐藤 公 佐藤 絹子 田村 君英 藤田 賢一
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.Supplement, pp.S1-S27, 2013 (Released:2013-11-25)
参考文献数
81
被引用文献数
4 2

改訂にあたって  「消化器内視鏡の洗浄・消毒マルチソサエティガイドライン」は、2008 年 5 月に初版を発行して以来大きな反響があった。本ガイドラインの初版は、日本消化器内視鏡学会甲信越支部感染対策委員会による「内視鏡消毒法ガイドライン(1995 年)」、日本消化器内視鏡技師会消毒委員会による「内視鏡の洗浄・消毒に関するガイドライン(1996 年)」、日本消化器内視鏡学会消毒委員会による「消化器内視鏡機器洗浄・消毒法ガイドライン(1998 年)」の記載を基本として、その後の新しいエビデンスを踏まえて作成されたものである。今回、初版の発行から約 5 年が経過したことと、米国における消化器内視鏡のマルチソサエティガイドラインが改訂されたことを機会に、わが国においても改訂版を発行する必要があると判断した。  関連する学会や業界のコンセンサスを得る必要があり、ドラフト(草案)を上記 3 学会および、内視鏡に関連する 17 学会、さらに内視鏡製造業界および自動洗浄器業界、消毒薬製造販売業界に対して広くパブリックコメントを求めた。  標準予防策(スタンダードプリコーション)などの感染防止の基本的事項については特に触れず、消化器内視鏡の感染制御および洗浄・消毒に関わる処理を中心にまとめており、消化器内視鏡検査の実施に即応して、この実践ガイドが容易に適用できることを目指した。特に高水準消毒薬の反応(接触)時間等については、消毒薬の添付文書とは異なる場合もあり、諸外国でのデータなどを参照して実務的に判断した。  なお、勧告事項の実証性水準については、できるだけ簡明となるように、本文の要求分類は原則として二種類とし、その表現方法の例を下記に示す。推奨度の分類は、消化器内視鏡の感染制御に関する専門家の合意に基づいて行った。 ① 推奨度Ⅰとは、必須の要件であり、すべての施設において実施すべき事項 ② 推奨度Ⅱとは、現状では必須と位置づけるものではないが、実施が望ましい事項  医療施設の内視鏡検査室において、本実践ガイドを参照して、自施設のマニュアル(手順書) を作成し、消化器内視鏡に係る感染制御の実務に広く利用され、患者およびスタッフの安全の一層の向上に寄与できることを期待する。  今回の改訂版は「ガイドライン」ではなく「実践ガイド」という名称を用いた。その理由として、昨今「ガイドライン」の策定においては、厳密なエビデンスに基づくことや、作成者だけでなく評価者を同時に設置するといった、綿密な作成過程が要求される傾向にある。今回の改訂版は、3学会の専門家による合意を中心に作成されていることから、「ガイドライン」ではなく、あえて「実践ガイド」とした。