著者
山本 和義 永妻 佑季子 福田 泰也 西川 和宏 平尾 素宏 鳥山 明子 中原 千尋 宮本 敦史 中森 正二 関本 貢嗣 藤谷 和正 辻仲 利政
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.175-182, 2017 (Released:2018-02-22)
参考文献数
16

加齢に伴う筋力,身体機能の低下と定義されるサルコペニアは各種疾患でその概念が普及し,治療アウトカムにおける影響が盛んに報告されている.われわれも高齢胃癌患者におけるサルコペニア症例が非サルコペニア症例にくらべて術前摂取エネルギー量,タンパク質量が有意に少なく,サルコペニアが胃癌術後の重篤な合併症発生の独立したリスク因子であることを報告している.つぎのステップとして,初診時にサルコペニアと診断された65 歳以上の高齢胃癌術前患者を対象にして,エクササイズとしてハンドグリップ,ウォーキング,レジスタンストレーニング,栄養介入として1 日28kcal/kg(IBW)のエネルギー量と1.2g/kg(IBW)のタンパク質の摂取およびβ-hydroxy-β-methylbutyrate(HMB)の補充を推奨する,「術前栄養+エクササイズプログラム」を作成・実践しているので,その概要について報告する.
著者
末田 聖倫 池永 雅一 安井 昌義 宮崎 道彦 西塔 拓郎 三嶋 秀行 平尾 素宏 藤谷 和正 中森 正二 辻仲 利政
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.205-209, 2010 (Released:2011-04-25)
参考文献数
7
被引用文献数
2 1

当院はHIV/AIDS先端医療開発センターであり,HIV感染者を手術する機会も多い.症例1は54歳,男性.スプレー缶を自ら肛門内に挿入し,抜去不能となり当院を受診した.用手的排出は不可能であり,緊急手術を行った.全身麻酔下,砕石位でE式開肛器とL字鉤を用いてボトルの蓋を確認し,ミュゾー鉗子で蓋を把持し,異物を摘出した.異物は直径5cm,長さ15cmのスプレー缶であった.術後4日目に退院した.症例2は49歳,男性.夜間に肛門から上肢を挿入後,下腹部痛が出現し,症状増悪したため当院を受診した.腹膜刺激症状があり,腹部X線検査でfree airを認め,消化管穿孔に伴う急性汎発性腹膜炎と診断し,緊急手術を行った.腹膜翻転部より口側5cmの直腸前面に裂創を伴う穿孔部位を認め,ハルトマン手術を施行した.術後14日目に退院した.自慰行為による直腸異物は時にみられ,穿孔所見があれば緊急開腹術も必要になる.直腸異物の2例を経験したので報告する.
著者
松浦 記大 藤谷 和正 中塚 梨絵 宮崎 進 團野 克樹 小森 孝通 本告 正明 柏崎 正樹 岩瀬 和裕
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.406-414, 2018-06-01 (Released:2018-06-29)
参考文献数
38
被引用文献数
2 3

2次性大動脈十二指腸瘻(secondary aortoduodenal fistula;以下,sADFと略記)はまれな疾患ではあるが,診断に難渋し致死的な転機をたどることも多い.今回,我々はsADFの3症例を経験し,診断・治療・術後成績の三つの観点から検討を行った.2症例は吐・下血の原因としてのsADFの診断に難渋し,全症例でsADFに対する治療介入を行い一旦は救命できたもののうち2症例は術後感染症により致死的な転帰をたどった.人工血管置換術後の消化管出血を見た場合,sADFを鑑別疾患として挙げ,感度・特異度とも高いとされているCTを早期に行うことが重要である.また,sADFが疑われた場合,感染のコントロール,すなわち人工血管除去を念頭に遅滞のない手術を考慮することが重要である.