著者
山口 敦美 藤谷 知子 大橋 則雄 中江 大 小縣 昭夫
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第36回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.4039, 2009 (Released:2009-07-17)

【目的】QUATは2種の4級アンモニウム塩(アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドとアルキルジメチルエチルベンジルアンモニウムクロライド)の消毒、殺菌剤である。布製品や室内空間を殺菌消臭する目的で、溶液を散布して用いられている。一般的な毒性については古いデータがあるのみで、マウスに経口投与した時、LD50は150-1000mg/kgと報告されている。これまでに我々は、QUATを含む消臭・ハウスダスト除去剤の噴霧で乳幼児が経口摂取する可能性を考え、健康に影響を及ぼすかどうかについての検討をおこなった結果、消臭・ハウスダスト除去剤2mL/kgを21日間新生マウス仔に経口投与した後それらのマウスの交配から生まれた仔マウスに、死亡率の増加と精巣重量の低下を観察した。QUATの免疫系への作用は不明なので、まず免疫毒性を持つかどうかを調べる目的で、8週齢雌ICRマウスにQUATを経口投与し、免疫系に作用を及ぼすかについて検討をおこなった。 【方法】8週齢雌ICRマウスにQUATを0, 50, 100, 200mg/kg経口投与し、2日後に体重と臓器重量を測定、胸腺、脾臓と血中のリンパ球をフローサイトメーターで分析、脾臓細胞のサイトカイン産生能の変化をリアルタイムPCRで測定した。また、QUAT投与の1日後に卵白アルブミンを投与して、産生される抗卵白アルブミンIgM抗体をELISA法で測定した。 【結果・考察】QUAT投与で用量依存的に血中B細胞の減少、B細胞分化に関与するサイトカインIL6, IL10の減少と、抗卵白アルブミンIgM抗体産生の減少が、有意な減少が200mg/kgの投与時に観察された。 今回の結果は、単回大量投与ではあるが、免疫系への抑制作用が用量依存的に見られたことから、繰り返し使用する時の安全性への考慮の必要性が示唆された。
著者
多田 幸恵 藤谷 知子 小縣 昭夫 上村 尚
出版者
特定非営利活動法人 化学生物総合管理学会
雑誌
化学生物総合管理
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.60-68, 2008

プラスチック難燃剤テトラブロモビスフェノールA (TBBPA) をオリーブオイルに懸濁させ、0 (対照群)、350、700及び1,400 mg/kg体重の投与用量、10 mL/kg体重の投与液量で、1日1回14日間、ICR雄マウスに胃ゾンデを用いて強制経口投与し、血液・血清生化学及び病理学的に検索した。<BR>その結果、投与群で血清総コレステロール及び肝臓重量の増加が認められた。主要臓器の組織観察では、投与群の肝臓に肝細胞の腫脹、炎症性細胞の浸潤及び肝細胞の壊死が多く認められた。
著者
田山 邦昭 藤谷 知子 坂本 義光 安藤 弘 久保 喜一 高橋 博 長澤 明道 矢野 範男 湯澤 勝廣 大橋 則雄 中江 大 小縣 昭夫
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第36回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.4034, 2009 (Released:2009-07-17)

【目的】蔓延する違法(脱法)ドラッグについて、行動・中枢神経系以外への影響はあまり調べられていない.今回、違法ドラッグの雄性生殖器系への障害性をみるためにスクリーニング的に施行した投与試験において、薬事法指定薬物となったtryptamine系薬剤が、精巣・精子への障害性を認めたので報告する. 【方法】薬物:5-methoxy-N,N-dimethyltryptamine(5MeO-DMT). 投与法:薬物はプロピレングリコールに溶解し、0(対照), 100, 250 mg/kg/day投与量で11週齢の雄性マウス(Crlj:CD-1)5匹に5日間連続経口投与後、1, 5週目で剖検し、生殖器系の臓器重量計測後, 機器による精子ハ゜ラメータ検査をし、さらに固定標本の組織学的検討を行った.機器:精子数計測および形態異常検出(粒度分布曲線係数MODALの比較)にはCDA-500を、運動性計測にはSQA-IICを用いた.測定法:既報(Repro Toxicol, 2006)により行った. 【結果・考察】臓器重量:1, 5週共に、いずれの用量も対照群と差はなかったが、精巣・精巣上体などで低下傾向がみられた.精子ハ゜ラメータ:精子数・運動性は、1週目の250 mg/kg群では、有意に低下し、形態異常マーカーのMODALは低下傾向を示した.5週目では両用量共に精子数・MODALで低下傾向を示した.組織学的観察:1週目の250 mg/kg群で、精巣では精上皮の変性・壊死、精巣上体では、管腔内の精子数が減少し、細胞残屑が認められ、体部で管腔が拡張していた.5週目ではこれらの変化の回復がみられた.以上より、5Meo-DMTは、精巣・精子障害性を有することが明らかとなり、本薬物連用の危険性が示された.現在、投与量を4用量設定し再度実験を実施しており、この結果と合わせて報告する.