著者
蛭子 洋介
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.57, no.Supplement, pp.s142_2, 2022 (Released:2023-02-23)

COVID-19の流行により日本を含む各国の移植医療は大打撃を受けたが、この2年間でCOVID-19の診断、治療、そして感染管理についての知見が蓄積された。診断ではSARS-CoV-2核酸増幅検査を使ったプロトコールが整理され、治療では抗ウイルス薬、抗炎症薬、抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体などが使われるようになり、さらにはワクチンの開発によってCOVID-19の予防が可能になった。これらの進歩によってCOVID-19の感染者数は減少している。日本移植学会 COVID-19対策委員会ではアップデートされる情報を元に「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の移植医療における基本指針」を発表し、日本における移植患者のCOVID-19の対応策を示してきた。しかし、一部のモノクローナル抗体が効かない変異株の出現に加えて、移植患者に特有の問題である免疫抑制剤と抗ウイルス薬の相互作用や免疫抑制剤によるワクチン予防効果の低下など非移植患者と比べると解決すべき課題は多く、いまだに予断を許さない状況である。この状況下において安全に臓器提供を行い、臓器移植を続けていくためにできることについて議論する。
著者
山永 成美 江川 裕人 蛭子 洋介 大澤 良介 小野 稔 剣持 敬 十川 博 名取 洋一郎 日比 泰造 矢野 晴美 芳川 豊史 吉川 美喜子 吉田 一成 湯沢 賢治
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.55, no.Supplement, pp.194_1, 2020 (Released:2021-09-18)

2019年末からの中国武漢での報告後、瞬く間に世界中に拡散した新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)は、現在も収束することなく、2020年8月31日時点で全世界で2500万人以上が感染していると報告されている。COVID-19は、移植医療の在り方に大きな影響をもたらし、世界中の多くの移植施設で、生命に関わる臓器の移植を除き、生体移植を中心とした待機可能な移植は一時停止を余儀なくされた。ドナーからの伝播の可能性、院内感染の可能性、移植患者への感染対応など、様々な状況を想定し、院内のコンセンサスを得ることで、現状では多くの施設が移植医療の提供を再開した。しかし、安心安全な移植医療を提供するためには、COVID-19以前とは異なる、新しい移植医療の様式を実践していく必要がある。また、移植患者は免疫抑制剤を服用しており、ウイルス感染症に脆弱である一方、COVID-19は、感染後期での免疫抑制剤使用による重症化抑制も知られている。相反する病態を理解し、免疫抑制剤調整を含めた移植患者の管理を適切に行うことも重要である。これまでに得られたCOVID-19と移植医療に関する文献的報告をレビューし、新しい移植医療の様式について提言したい。