著者
安東 由則 西尾 亜希子 中尾 賀要子
出版者
武庫川女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

トランスジェンダー(以下TG)の生徒・学生に対する理解、学校生活や進学・就職における支援が喫緊の課題となり、大学でもようやくその取り組みが始まった。とりわけ女子大学では、TG学生の受け入れの有無や許可基準など、早急に検討すべき課題がある。本研究はTG学生に焦点を絞り、先進的な取り組みを行っているアメリカの女子大学・共学大学の現地調査を行い、入学基準や入学後のサポート等の事例収集と聞き取りを実施する。国内の女子大学や先進的な共学大学における事例収集とインタビューを通して課題を把握する。これらを総合して、日本の大学、とりわけ女子大学がTG学生の支援・環境づくりをするための基礎モデルを提供する。
著者
松並 知子 西尾 亜希子 Tomoko MATSUNAMI Akiko NISHIO
雑誌
女性学評論 = Women's Studies Forum
巻号頁・発行日
vol.32, pp.25-52, 2018-03-20

貧困化リスク要因が多い女性にとって大学在学中のキャリアプラン選択は重要なため、本研究は女子大学生の将来のキャリアプラン選択の傾向やその要因について検討することを目的とした。研究1では、女子大学生500名を対象にキャリアプラン選択と稼得意識、進路選択に対する自己効力、自尊感情との関連を検討した結果、半数以上がキャリアを中断・退職する予定であり、就業継続には稼得意識のみが関連することが示唆された。研究2では稼得意識の項目数を増やし、309名を対象に稼得意識と職業観との関連および就業継続の要因について検討した。その結果、稼得意識の下位項目である「結婚生活における経済的自立度」と職業観の下位尺度である「人間関係」「やりがい」「男女平等の環境」との間に弱い相関が、稼得意識のもう1つの下位項目である「結婚相手への非依存度」と職業観の「経済的安定」と「プライベート重視」の間に中程度の負の相関が見られた。また、就業継続の促進要因として結婚生活における経済的自立志向と男女平等な環境でのやりがいのある仕事を期待する職業観が、阻害要因としてプライベート優先と仕事を通じた良好な人間関係を期待する職業観があることが示唆された。経済的な自立志向ややりがいを求める職業観が稼得意識に関連する一方、プライベートを優先しすぎたり、職場での人間関係などを重視しすぎることが、稼得意識の喪失につながる可能性もある。したがって、稼得意識を高めるような新たなキャリア教育を開発する必要性が示された。