著者
山元 修 西尾 大介 徳井 教孝
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.169-180, 2001-06-01
被引用文献数
1

セメントは土木・建築工業分野で広く用いられているが,水に溶けると強いアルカリ性を示す,感作性の強いクロムが微量含まれているという性質のため,セメントによる職業性皮膚障害は比較的多く発生しやすい.本稿ではセメントによる接触皮膚炎4例とセメント熱傷2例を報告する.患者の職業は左官業,トラック運転手,土木建設作業員であった.セメント皮膚炎例は,臨床的に手指に乾燥化,亀裂,角化性丘疹・紅斑あるいは急性浸出性湿疹像を呈していた.うち1例は顔面や躯幹,四肢にも皮疹が認められた.いずれの例もパッチテストにて重クロム酸カリウムに陽性であった.セメント熱傷例はいずれも長靴の中に侵入したセメントに長時間接触後,下腿あるいは足に難治性潰瘍を生じた.パッチテストにてクロムは陰性であった.コンクリート作業現場の視察にて,現在の作業形態あるいは作業着では,皮膚の防護が十分にできないことがわかった.実状に合った易作業性と防護性を兼ね備えた作業着・手袋使用の推奨,あるいは防護形態の工夫が望まれる.セメントによる皮膚障害のほとんどは,実際にセメントを扱う小規模事業場の労働者に発生していると思われる.このような労働者の皮膚障害に対する健康管理体制の確立のため,小規模事業場における健康管理の取り組みを目指した地域産業保健センターの活用が強く望まれる.
著者
山元 修 西尾 大介 徳井 教孝
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.169-180, 2001-06-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
2 2

セメントは土木・建築工業分野で広く用いられているが, 水に溶けると強いアルカリ性を示す, 感作性の強いクロムが微量含まれているという性質のため, セメントによる職業性皮膚障害は比較的多く発生しやすい. 本稿ではセメントによる接触皮膚炎4例とセメント熱傷2例を報告する. 患者の職業は左官業, トラック運転手, 土木建設作業員であった. セメント皮膚炎例は, 臨床的に手指に乾燥化, 亀裂, 角化性丘疹・紅斑あるいは急性浸出性湿疹像を呈していた. うち1例は顔面や躯幹, 四肢にも皮疹が認められた. いずれの例もパッチテストにて重クロム酸カリウムに陽性であった. セメント熱傷例はいずれも長靴の中に侵入したセメントに長時間接触後, 下腿あるいは足に難治性潰瘍を生じた. パッチテストにてクロムは陰性であった. コンクリート作業現場の視察にて, 現在の作業形態あるいは作業着では, 皮膚の防護が十分にできないことがわかった. 実状に合った易作業性と防護性を兼ね備えた作業着・手袋使用の推奨, あるいは防護形態の工夫が望まれる. セメントによる皮膚障害のほとんどは, 実際にセメントを扱う小規模事業場の労働者に発生していると思われる. このような労働者の皮膚障害に対する健康管理体制の確立のため, 小規模事業場における健康管理の取り組みを目指した地域産業保健センターの活用が強く望まれる.
著者
山元 修 安田 浩 伊豆 邦夫 西尾 大介 旭 正一
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.167-175, 2000-06-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
2 2

1979年7月から2000年2月末まで当教室で経験したフッ化水素酸化学熱傷は9例で, すべて職業性曝露によるものであった. すべて男性で, 年令は20-53歳(中央値35歳, 平均36.8歳), 曝露時従事していた作業の内訳は, 洗浄作業6例, フッ化水素パイプラインの機器交換2例, 不明1例であった. 受傷部位は手・指がほとんどであった. 手・指受傷者の作業中の手の保護が十分でなかったものは5名であった. 受診時の症状としては表皮剥離程度から白色壊死・潰瘍形成までさまざまであった. 過去の報告例も含め総合的に考慮して見ると, 曝露事故の発生要因としてはおおむね, 1)作業中の油断, 特にベテランに多い慣れに伴うフッ化水素酸の危険性の軽視, 2)フッ化水素についての無知・認識不足, 3)手袋の穴に気づかないままの作業, 4)不慮の事故, の4つに分けられた. フッ化水素酸による皮膚障害は重篤になることが多いため, 作業従事者(特に中堅), 特定化学物質等作業主任者, 治療に当たる可能性のある医師への, 皮膚科医・産業医によるフッ化水素酸化学熱傷についての, 再教育あるいは啓蒙活動が必要と思われる. また市販のフッ化水素酸剤を使う小規模事業所の事業主や作業者については地域産業保健センターなどの活用が望まれる.