著者
古賀 佳代子 木村 裕美 西尾 美登里 久木原 博子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.634, 2020 (Released:2020-03-06)
参考文献数
24
被引用文献数
3

地域包括支援センター(以下,地域包括)は,業務量の過大や職員不足,離職問題等が報告されており,保健師,社会福祉士,主任介護支援専門員それぞれの専門性が発揮できていない。保健師も保健師間相互の連携の希薄さ等を実感し今後の保健活動への懸念を感じている。本研究では,地域包括保健師の研修教育体制を確立するための基礎資料の示唆を得るために,専門性を明らかにすることを目的とした。A県内の地域包括に所属している経験年数3年以上の保健師8名を対象とし,テキストマイニングKH Coderで分析した。その結果,「相談を受け,関係性を大事にし,判断する能力」,「認知症高齢者や精神疾患,医療的知識,在宅生活を知ることが必要」,「介護予防事業の支援」,「保健師が訪問やサロンに行って皆と一緒に活動」,「地域で包括的に保健指導等の活動が求められる仕事」の5クラスターが抽出された。専門性を発揮するためには,保健師,社会福祉士,主任介護支援専門員の3職種それぞれの専門性を活かしてチームアプローチを包括的に支援することが望ましい。また,教育体制として,ビジョンを立てることや相談できる人・スーパーバイズの必要性,キャリアパスの「見える化」を整備することで,地域包括の機能がさらに発揮できると示唆を得ることができた。
著者
古賀 佳代子 木村 裕美 西尾 美登里 久木原 博子 池田 智
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.104-113, 2021 (Released:2021-09-16)
参考文献数
30

熊本地震の震災関連死に認定された者のうち3割が車中泊を行なっていたことが報告されている。車中泊による影響は,身体のみならず精神的負担も大きく,車中泊が及ぼす影響についての報告は少ない。そこで,本研究は被災就労者を対象に,熊本地震1年後の車中泊者の特性と精神的健康に影響を及ぼす要因を検討する。対象者は,熊本県上益城郡にある工業団地13社の被災就業者460名を対象者とし,車中泊あり群,車中泊なし群の2群に分類し分析した。結果,車中泊あり群は181名(72.7%)を占めていた。車中泊なし群に比べて,アテネ不眠尺度(Athene Insomnia Scale以下AIS),PTSDスクリーニング尺度(Impact of Event Scale-Revised以下IES-R),精神的健康調査票(General Health Questionnaire 以下GHQ 28)が有意に高いことが明らかになった。次に,精神的健康(①IES-R,②GHQ 28)の関連について重回帰分析を行なった結果,IES-R得点には,「身体機能(PF)」,「社会生活機能(SF)」,「不安と不眠」,「車中泊の有無」が,GHQ 28得点には,「活力(VT)」,「回避症状」,「車中泊の有無」,「自覚症状の有無」が影響を及ぼす要因として明らかになった。災害時の就労者の精神的負担は,累積された業務負担の上に課されている。長引く精神的負担は,改善されない可能性が指摘されており,早急に支援対策の在り方について検討する必要性が高いことが示唆された。
著者
西尾 美登里 坂梨 左織 木村 裕美 久木原 博子 緒方 久美子 古賀 佳代子
出版者
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
雑誌
バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 (ISSN:13451537)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.23-28, 2018-05-19 (Released:2021-03-15)

福岡市の高齢者における地域の災害避難場所の認知について, 実態調査を行い, 独居高齢者への災害支援のありかたについて検討した. 地域包括ケアシステムと介護の啓発を目的とした集会の参加者258 名を分析対象とし, 基本属性, フォーマルな相談窓口の認知と活用の有無, 活用している相談窓口数, 地域の避難場所の認知, 楽しみの有無, 情緒的支援, 自尊感情尺度について調査した. 分析は同居群と独居群の2群の差のカテゴリ変数にはχ2 検定, 連続変数にはMann–Whitney U 検定行い群間差を検定した. その結果, 独居高齢者は同居者がいる高齢者より有意に高齢で, 公の相談窓口を知らず, 相談談窓口数が少なく, 避難場所を知らず, 楽しみを有さず, 情的支援を受けていなかった. 都市部における高齢者への災害支援を充実させるためには, 特に独居高齢者が情的な交流のある生活の中で, 楽しみながら社会活動ができる場づくりを行う必要がある. また, 災害支援の情報提供は,社会活動ができる場で行うことが有益であることが示唆された.
著者
木村 裕美 西尾 美登里 古賀 佳代子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.325-333, 2021 (Released:2021-12-25)
参考文献数
30

地域で生活する元気高齢者の抑うつの実態を明らかにし,生きがい感などとの関連要因を検討した。対象はA大学で行なわれた市民公開講座の参加高齢者213名に,基本属性,高齢者うつ尺度(Geriatric Depression Scale:以下GDS),高齢者向け生きがい感スケール(K-1式)(以下,生きがい感スケール),高齢者ソーシャルサポート尺度(以下,ソーシャルサポート尺度),基本チェックリスト(以下,フレイル尺度)について自記式質問紙調査を実施した。統計処理は,GDSで4点/5点をカットオフ値とし,4点以下をA群,5点以上をB群として比較した。結果,対象者は回答に欠損が1つ以上あった者を除く185名が有効回答であった。A群80名(男性35名,女性45名),B群は52名(男性14名,女性38名),平均年齢で有意な差が認められた。トータルサポート,生きがい感スケール下位尺度の自己実現と意欲,生活充実感,生きる意味,存在感でA群が有意に高かった。重回帰分析による抑うつに影響をおよぼす因子として,生活充実感(β=-0.36),健康状態(β=0.24),生きる意欲(β=-0.17),年齢(β=0.24),ネガティブサポート(β=0.18),健康習慣(β=0.12)が認められた。決定係数R2乗は0.52,調整済みR2乗は0.49であった。地域高齢者の抑うつ状態は,自己実現や生活充実感,生きる意欲,存在感が関連することが示唆された。