著者
今村 律子 西岡 真弓 赤松 純子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<b>目的</b> 「アイロンかけ」を体験するだけの授業を、中学校家庭科のねらいである「実践的・体験的な学習活動を通して」科学的に学ばせる授業へと転換することで、生活の中で応用し生かしていける力をつける授業づくりを目指した。<br><b>方法</b> 題材名「アイロンを極めよう」(2時間)で「繊維や布の特徴を理解したアイロンかけができる」ことをねらいとする授業実践を和歌山県内の中学校3校の1・2年生対象(285名)に実施した。しわが伸びる三要素(熱・水分・圧力)を押さえ、種々の衣生活内容と関連付ける授業内容と効果的な指導方法を研究した。また、生徒の授業前後のアンケートなどにより授業の効果を確認した。<br><b>結果 </b>1.「アイロンかけ」実習授業(2時間)に衣生活の総合的な視点を取り入れ、1時間目は【基礎編】、2時間目は【応用編】として内容を整理した授業が実践できた。<br>2.「しわが伸びる原理を示す模式図」や「カッターシャツ解体見本」、「アイロンかけビデオ」などの視覚的教材を活用した指導の工夫ができた。<br>3.「アイロンかけ」実習は、1枚のカッターシャツを分担し相互評価をさせるグループ学習により、時間を有効に使いながら相互に学び合う効果的な学習ができた。<br>4.1時間目実習時に生徒が気づいた「しわを整えるとかけやすそうだ」などの意見を生かし、かけ方のコツについて科学的に考えを深める問題解決学習ができた。<br> 本研究の一部は、基盤研究(B)26282011による。
著者
西岡 真弓 今村 律子 赤松 純子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, 2017

<strong>目的</strong> <br /> 家庭科の製作実習はこれまで,実習体験だけで終わりがちだった。しかし,現行の中学校学習指導要領においては「生活を豊かにしようと工夫する能力と態度を育てること」が求められ,さらに次期学習指導要領では,「何ができるようになるか」,「何を学ぶか」,「どのように学ぶか」が今まで以上に重要となった。本研究は,「アイロンかけ」実習を科学的知識に基づいた授業と位置づけ,生徒に3つの力(生活に生かせる知識・技能,工夫して実践する思考力,将来にわたって学びを生かそうとする意識)をつけさせる主体的・対話的で深い学びであるアクティブ・ラーニング型授業を具現化することをねらいとし,提案・実践・評価・分析する。<br /><strong>方法 </strong><br /> 「アイロンかけ」実習授業で学べる科学的知識を整理し構想図にまとめ,授業を立案した。授業展開については,アイロンかけの科学性すなわち,しわが伸びる3要素(熱・水分・圧力)および繊維の性質(霧吹き・スチーム)の理解に重点を置くことと,アクティブ・ラーニング型授業の特徴である主体的・対話的で深い学びに導く指導方法を確立することを重視した。指導の工夫は,①視聴覚教材の開発,②実感で納得させる体験,③グループ学習による学びあいのしかけ,④思考を深め授業を振り返る相互評価と自己評価の4点とした。それに基づいた授業をW県内3中学校9クラスで実施し,「生活に生かせる知識・技能」,「工夫して実践する思考力」,「将来にわたって学びを生かそうとする意識」の3点について授業効果を確認した。<br /><strong>結果</strong> <br /><strong>1.授業立案</strong> 「アイロンかけ」で学べる内容を整理し,科学的知識に基づく「アイロンかけ」実習をアクティブ・ラーニング型授業として立案,試行実践の後,基礎編(アイロンでしわが伸びる原理の理解と基本的なかけ方の習得)と応用編(繊維の水分特性と衣服の構成を理解したかけ方の習得)各1時間の授業提案ができた。<br /><strong>2.アクティブ・ラーニング型授業</strong> 基礎編では「繊維分子の紙芝居・かけ方ビデオの活用」および「アイロンのしわ伸ばし体験」を,応用編では「綿と毛の吸水実験」および「ワイシャツの解体見本提示」を行い,原理やかけ方の意味を考えさせた。また,グループで1枚のワイシャツを分担して実習する学習形態をとった。これらの指導の工夫により,「アイロンかけ」実習をアクティブ・ラーニング型授業として提案することができた。<br /><strong>3.3</strong><strong>点の授業効果</strong><br /><strong>(1)</strong><strong>「生活に生かせる知識・技能」</strong> 3要素の理解と霧吹き・スチームの使い分けは自己評価で9割以上が「わかった」と回答した。これは,視聴覚教材と体験を取り入れたアクティブ・ラーニング型授業の効果であると思われる。「アイロンかけ」技能の習得レベルは約9割がきれいに仕上げることが「できた」と回答しており,基礎的な技能はおおむね習得させることができたと思われる。<br /><strong>(2)</strong><strong>「工夫して実践する思考力」</strong> これまで各自で行うことの多かった「アイロンかけ」実習を,互いのかけ方を見て双方向に学びあう協働学習で行った結果,相互評価で「しわを整えるとかけやすそうだ」などの生徒の記述から,思考力の深化が認められた。<br /><strong>(3)</strong><strong>「将来にわたって学びを生かそうとする意識」</strong> 授業前後の意識変化調査から,今後のアイロンかけ意欲が8割以上の生徒にみられた。教師からの一方向的な指導ではなく生徒主体で考えさせる学習ができたこと,協働学習により友だちからよい刺激を受けたこと,自己評価により授業の振り返りと自己の到達度確認ができたことなどが,次の意欲へとつながったと思われる。このことは主体的で対話的な学びであるアクティブ・ラーニング型の授業展開に取り組んだ本研究の大きな成果といえる。