著者
西嶋 真理子 柴 珠実 齋藤 希望 増田 裕美 西本 絵美 松浦 仁美
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.40-49, 2018

<p><b>目的:</b>発達障害児の親を対象に前向き子育てプログラムのひとつであるステッピングストーンズ・トリプルP(以下,SSTP)を実施し,その効果と地域での導入について検討する.</p><p><b>方法:</b>地域の保護者会の協力のもと,3~12歳の発達障害児の親27人に対して筆者らがSSTPを実施し,介入前後の親の子育て場面でのふるまい(Parenting Scale;PS),児の行動の難しさ(Strength and Difficulties Questionnaire;SDQ),親の抑うつ・不安・ストレス(Depression, Anxiety, and Stress Scale;DASS),親としてどう感じるか(Parenting Experience Survey;PES)について比較し分析した.</p><p><b>結果:</b>介入前はPSやSDQのすべての下位尺度は臨床範囲あるいは境界範囲であったが,介入後はPSの親の多弁さと過剰反応,SDQの児の難しい行動の総合スコア,感情的症状,行為問題,交友問題,DASSの抑うつ,ストレスが有意に改善した.PESでは,得られた助け,パートナーとのしつけの一致度等が介入後に有意に改善した.7歳以下ではPS,SDQ,DASSのすべての下位尺度が有意に改善した.</p><p><b>考察:</b>地域の発達障害児の親を対象に行ったSSTPは,親の子育て場面でのふるまい,児の問題行動,親として子育てにストレスを感じる等に有意な改善効果が確認できた.特に児の年齢が7歳以下の家庭への改善効果が大きく,地域でSSTPを導入することが発達障害児と親の支援に有効であると考えられた.</p>
著者
西嶋真理子
出版者
日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.98-105, 2007
被引用文献数
1

本研究は,保健師に求められる地域看護診断(地域の保健ニーズをアセスメントし,計画策定)のできる能力の基礎を備えた保健師教育の基礎資料とすることを目的に,地域看護実習の中で学生が地域看護診断の展開過程をどのように学習しているかを分析した.方法は,E大学4年次学生22名のうち書面で同意が得られ,現地オリエンテーションが実習期間中に行われた10名の実習日誌に記述された内容から,地域看護診断の学習過程について分析した結果,以下のことが明らかになった.1.現地オリエンテーションでは,保健所・市町の組織,保健事業,保健師活動等から地域に必要な保健サービスについて学習している.初回地区踏査では自然環境や交通・人々の集まり等から人々の暮らしぶりを実感している.2.2事例4名の実習日誌の経時的分析から地域看護診断の学習過程は,<地区や人々の実像が見える><テーマに関わる対象が見える><データを関連づけて分析できる><健康課題を抽出し,背景・地域の強みがわかる><計画策定のアウトラインがわかる>の5段階の学習過程を辿っていることがわかった.地域看護診断の過程でデータの分析は,地域を大づかみに把握した後,データを焦点化し,統合化する思考過程が推測された.以上のことから,地域看護診断の展開過程における学生の学習過程が明らかになり,それぞれの段階に応じた支援の必要性が示唆された.