著者
井倉 一政 牛塲 裕治 長谷川 真子 齋藤 希望 児玉 豊彦
出版者
東海公衆衛生学会
雑誌
東海公衆衛生雑誌 (ISSN:2187736X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.98-102, 2020-07-11 (Released:2020-07-30)
参考文献数
20

目的 本研究では中学3年生のストレスコーピング特性とソーシャルキャピタルの関連を明らかにすることを目的とした。方法 A市の公立B中学校の3年生を対象として、無記名自記式質問紙調査を実施した。調査項目は、性別、ストレスコーピング特性簡易評価尺度ジュニア版(以下BSCP-J)、ソーシャルキャピタル尺度(以下SC)を用いた。下位尺度の関連の検討は、Spearmanの相関係数を算出した。すべての検定において、p<0.05を統計学的に有意差ありとした。調査期間は2016年10月であった。結果 質問紙は85人に配付し、76人から回答を得た(回収率89.4%)。BSCP-Jの下位尺度の得点は、「気分転換」がもっとも高く、次いで「積極的な問題解決」であった。SCの下位尺度の得点は、「社会的信頼」がもっとも高かった。「積極的な問題解決」、「解決のための相談」、「気分転換」、「発想の転換」の4項目は互いに有意な正の相関を示した(相関係数0.400~0.627)。また、残りの2項目である「他人に感情をぶつける」と「がまんと先送り」が有意な正の相関を示した(相関係数0.286)。また、「積極的な問題解決」と「発想の転換」は、「互恵性」、「社会的信頼」、「身近な社会規範の遵守」と正の相関が認められ、「解決のための相談」は「互恵性」、「社会的信頼」と正の相関が認められた。また、「気分転換」は「社会的信頼」、「身近な社会規範の遵守」と正の相関が認められた。結論 ストレスコーピング特性とソーシャルキャピタルは多くの項目で正の相関が認められた。また、ソーシャルキャピタルを醸成することは、中学生がストレスに対処する力を養成することにつながる可能性が考えられた。
著者
西嶋 真理子 柴 珠実 齋藤 希望 増田 裕美 西本 絵美 松浦 仁美
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.40-49, 2018

<p><b>目的:</b>発達障害児の親を対象に前向き子育てプログラムのひとつであるステッピングストーンズ・トリプルP(以下,SSTP)を実施し,その効果と地域での導入について検討する.</p><p><b>方法:</b>地域の保護者会の協力のもと,3~12歳の発達障害児の親27人に対して筆者らがSSTPを実施し,介入前後の親の子育て場面でのふるまい(Parenting Scale;PS),児の行動の難しさ(Strength and Difficulties Questionnaire;SDQ),親の抑うつ・不安・ストレス(Depression, Anxiety, and Stress Scale;DASS),親としてどう感じるか(Parenting Experience Survey;PES)について比較し分析した.</p><p><b>結果:</b>介入前はPSやSDQのすべての下位尺度は臨床範囲あるいは境界範囲であったが,介入後はPSの親の多弁さと過剰反応,SDQの児の難しい行動の総合スコア,感情的症状,行為問題,交友問題,DASSの抑うつ,ストレスが有意に改善した.PESでは,得られた助け,パートナーとのしつけの一致度等が介入後に有意に改善した.7歳以下ではPS,SDQ,DASSのすべての下位尺度が有意に改善した.</p><p><b>考察:</b>地域の発達障害児の親を対象に行ったSSTPは,親の子育て場面でのふるまい,児の問題行動,親として子育てにストレスを感じる等に有意な改善効果が確認できた.特に児の年齢が7歳以下の家庭への改善効果が大きく,地域でSSTPを導入することが発達障害児と親の支援に有効であると考えられた.</p>