著者
松山 洋 西村 照幸 佐藤 信夫
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.199-215, 1999-03-26
被引用文献数
2

1987〜1988年のFIFEの観測値と、ISLSCP Initiative I CD-ROMの入力データおよびJMA-SiBの出力を比較した。検証にはA.K.BettsとJ.H.Ballによってまとめられた領域平均値を用いた。 JMA-SiBでは、1988年の暖候期における5cm以深の土壌水分量が系統的に過少評価されている。これは1987年秋から1988年春にかけての地表面熱収支・水収支の違いによる。この期間の総降水量は観測値・モデルの入力データともに等しい。しかし、前者では降水量がほぼ土壌水分量の増加に寄与しているのに対し、JMA-SiBでは大半が蒸発散量として失われている。1988年春の土壌水分量の違いが生じる原因は、(1)冬季の混合比がモデルの入力データによって系統的に過少評価されており、JMA-SiBの蒸発散量が大気中の湿度に反映されず乾燥し続けていること、(2)この期間の総降水量の半分が、実際には土壌水分量の観測再開直前の11日間に集中して降っているのに対し、これをモデルの入力データが過少評価していること、などであると考えられる。 このように、モデルの入力データと観測値の間に違いが見られたので、GSWPでは、モデルで得られた土壌水分量と観測値だけを比較して両者の違いを議論すべきではない。FIFEの観測値をモデルの入力データとする別の検証実験が必要である。