著者
岡田 淳子 山水 有紀子 山根 啓幸 山村 美枝 松本 由恵 百田 武司 西條 美恵 板橋 美絵
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.437-443, 2014 (Released:2015-01-26)
参考文献数
18
被引用文献数
4 5

大規模な災害時は生命の危機状態にある患者が急増し,医療機関は入院患者の対応が優先されるため避難所への支援は困難になる.そのため,避難所での感染伝播を防ぐには,避難者が実施する衛生管理が重要になる.そこで,避難者が実施した衛生的な行動を明らかにし,避難所の感染予防策について検討した.   東日本大震災で避難所生活を経験した避難者80名を対象に,手指衛生と環境衛生について構成的面接を実施した.その結果,震災直後は手を洗う環境が全くなかったと約60%が回答したが,救援物資の到着や水道の復旧によって手指衛生は強化された.しかし,手指衛生の実施場面は個人の衛生習慣が影響するため,日常から住民の手指衛生が習慣化する関わりが必要と思われる.また,外部支援による感染予防行動や衛生管理の指導は約25%の避難者にしか認識されていなかった.しかし,指導を受けた避難所リーダーが感染予防行動を具体的に指示した避難所は,環境の衛生状態を維持していた.避難所で感染を防止するためには,集団をマネジメントするリーダーの存在が重要であり,外部支援としては避難者らが予防行動を開始できるように支援することが示唆された.