著者
百田 武司 西亀 正之
出版者
広島大学大学院保健学研究科
雑誌
広島大学保健学ジャーナル (ISSN:13477323)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.41-50, 2002-09-30

本研究の目的は,脳卒中患者の回復過程における主観的体験を明らかにすることである.Grounded Theory法を参考にした質的帰納的研究を行った.74歳以下の脳卒中発作(初発)で緊急入院した患者のうち,入院直後におけるFIM79点以下,言語コミュニケーション可能で痴呆のない12名を分析対象とした.発症1週間以内から約6ヶ月後まで関わり,継続してインタビューを行った.分析の結果,回復過程に沿って《了解不能》《実感》《喜び》《アンビバレンス》《新たな価値》という意味の変化の局面と,それぞれの局面に一時的に落ち込む《落胆体験》があり,その発生時期と頻度の相違により合計5つの回復のパターンが認められた.従来,《落胆体験》は,リハビリテーションを妨げるマイナス要因とされてきたが,本研究においては《落胆体験》から立ち直った後に元の局面に戻るのでなく新たな局面に移行することが認められた.よって《落胆体験》は,回復を促進する契機と捉え,それを支える看護援助の重要性が示唆された.The purpose of this research is to clarify recovery subjective experiences of stroke patients.Qualitative inductive research was performed using Grounded Theory as a reference. The subjects of the study were twelve patients who were urgently admitted to the hospital for seizures associated with stroke (first incidence) at 74 years of age or younger, who had a score less than FIM79 immediately after being admitted to the hospital, and who were able to verbally communicate without dementia. Interviews were consistently performed from within 1 week of the occurrence of the stroke for approximately 6 months. The results of the study showed that there were a total of 5 patterns of recovery based on changes in the aspects of "lack of comprehension", "actually feeling", "happiness", "ambivalence", and "new values", as well as the timing and frequency of periods of temporary despondency during each of these aspects. Conventionally, bouts of despondency have been considered a negative factor that hinders rehabilitation, but in this study, it was seen that after overcoming a bout of despondency, the patient not only recovered to the original level, but was able to proceed to a new level. Therefore, bouts of despondency can be perceived as an opportunity to promote recovery and suggest the need to support that opportunity with nursing care.
著者
佐藤 美紀子 百田 武司
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.2_311-2_325, 2022-07-20 (Released:2022-07-20)
参考文献数
88

目的:脳卒中後のアパシーに関する研究の動向,実態,予防・改善が期待できる介入方法を明らかにした。方法:PubMed,医学中央雑誌から抽出した75文献を分類,要約,記述した。結果:内容は「レビュー」9件,「発症メカニズム」14件,「治療」14件,「評価スケール」7件,「実態」12件,「関連要因」15件,「メタアナリシス」2件,「介入研究」2件に分類された。近年,質の高い研究が行われつつあったが,実態と介入方法に関する科学的根拠は十分に構築されていなかった。アパシー発症率は4割弱,発症には「脳卒中発症回数」「うつ」「認知機能障害」が関連した。脳病変部位,脳卒中病型,年齢,脳卒中発症後の時間,臨床的アウトカムの重症度との関連については知見が一致していなかった。予防・改善が期待できる介入方法として,脳卒中再発予防,認知行動療法,問題解決プロセスの促進,行動活性化が見出された。結論:実態解明,介入方法の確立が求められる。
著者
佐藤 美紀子 百田 武司
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20210908154, (Released:2022-06-06)
参考文献数
88

目的:脳卒中後のアパシーに関する研究の動向,実態,予防・改善が期待できる介入方法を明らかにした。方法:PubMed,医学中央雑誌から抽出した75文献を分類,要約,記述した。結果:内容は「レビュー」9件,「発症メカニズム」14件,「治療」14件,「評価スケール」7件,「実態」12件,「関連要因」15件,「メタアナリシス」2件,「介入研究」2件に分類された。近年,質の高い研究が行われつつあったが,実態と介入方法に関する科学的根拠は十分に構築されていなかった。アパシー発症率は4割弱,発症には「脳卒中発症回数」「うつ」「認知機能障害」が関連した。脳病変部位,脳卒中病型,年齢,脳卒中発症後の時間,臨床的アウトカムの重症度との関連については知見が一致していなかった。予防・改善が期待できる介入方法として,脳卒中再発予防,認知行動療法,問題解決プロセスの促進,行動活性化が見出された。結論:実態解明,介入方法の確立が求められる。
著者
木村 勇喜 百田 武司
出版者
日本赤十字看護学会
雑誌
日本赤十字看護学会誌 (ISSN:13461346)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.88-93, 2021-03-31 (Released:2021-03-31)
参考文献数
15

目的:緊急入院した高齢者で,せん妄回復時に消失したせん妄発症要因を明らかにする.方法:緊急入院した65歳以上の患者で,せん妄評価尺度(ナース版)において,せん妄を発症した35人を対象に,診療録から調査を行った.結果:せん妄回復時に消失したせん妄発症要因は,「疼痛」,「発熱」,「血清クロールの異常」,「ベンゾジアゼピン系薬剤の使用」,「侵襲の多い検査・処置」,「経皮的酸素飽和度の異常」,「治療拒否の訴え」,「不安の訴え」,「不眠の訴え」,「時計の不設置」がせん妄発症時に比べ,せん妄回復時で有意に少なかった.結論:緊急入院した高齢者のせん妄回復時に消失したせん妄発症要因が明らかになり,せん妄発症後,せん妄回復に向けた看護援助の方向性の示唆となった.
著者
岡田 淳子 山水 有紀子 山根 啓幸 山村 美枝 松本 由恵 百田 武司 西條 美恵 板橋 美絵
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.437-443, 2014 (Released:2015-01-26)
参考文献数
18
被引用文献数
4 5

大規模な災害時は生命の危機状態にある患者が急増し,医療機関は入院患者の対応が優先されるため避難所への支援は困難になる.そのため,避難所での感染伝播を防ぐには,避難者が実施する衛生管理が重要になる.そこで,避難者が実施した衛生的な行動を明らかにし,避難所の感染予防策について検討した.   東日本大震災で避難所生活を経験した避難者80名を対象に,手指衛生と環境衛生について構成的面接を実施した.その結果,震災直後は手を洗う環境が全くなかったと約60%が回答したが,救援物資の到着や水道の復旧によって手指衛生は強化された.しかし,手指衛生の実施場面は個人の衛生習慣が影響するため,日常から住民の手指衛生が習慣化する関わりが必要と思われる.また,外部支援による感染予防行動や衛生管理の指導は約25%の避難者にしか認識されていなかった.しかし,指導を受けた避難所リーダーが感染予防行動を具体的に指示した避難所は,環境の衛生状態を維持していた.避難所で感染を防止するためには,集団をマネジメントするリーダーの存在が重要であり,外部支援としては避難者らが予防行動を開始できるように支援することが示唆された.
著者
山本 知世 百田 武司
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20180117003, (Released:2018-06-13)
参考文献数
21

目的:在宅高齢脳卒中患者の服薬アドヒアランスとCGA評価項目のうち身体面ではADL,精神面ではQOLのなかの精神的側面,社会面ではソーシャルネットワークとの関連を明らかにした。方法:在宅で生活をしている65歳以上の脳卒中患者で,服薬治療を行っている者を対象に他記式調査を行った。CGAは,ADLにはFIM,QOLにはSF-8,ソーシャルネットワークにはLSNS-6を用いた。服薬アドヒアランス尺度の中央値で2群に分類し,CGAを比較した。結果:服薬アドヒアランスの高い患者は,低い患者より,ADLの「記憶」が高く(p = .035),LSNS-6が高かった(p = .038)。しかし,精神的側面では,服薬アドヒアランス尺度全合計点では関連がみられなかった。結論:服薬アドヒアランスの高い在宅高齢脳卒中患者は,低い患者よりも,記憶が高く,ソーシャルネットワークが機能していた。
著者
佐藤 美幸 山本 貴志子 百田 武司 三村 聖子 作田 裕美 西亀 正之
出版者
広島大学大学院保健学研究科
雑誌
広島大学保健学ジャーナル (ISSN:13477323)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.51-56, 2002-09

水中毒は精神科のあらゆる障害において見られるが,原因としては未だ明らかになっていない.しかしながら水中毒は重篤な合併症を生じ,生命の危険性も高いことからも,早期に発見し,予防していくことが重要である.本研究では,バイオインピーダンス法を用いて精神障害者の体内水分量を知り,その貯留の程度をアセスメントする事で水中毒の予防に役立てないかと考え,精神分裂病患者と健康な一般女性,病的多飲水患者とそうでない患者のインピーダンス値を比較し,それぞれの間にどのような差が生じているのかを検証した.その結果,精神分裂病患者の細胞内水分量,細胞外水分量の両者とも,一般女性のそれより少なかった.また,病的多飲水患者は細胞外水分量が非多飲水患者に比べて多いが,細胞内水分量は細胞外水分量に比べて増加しておらず,水分量のバランスが悪いといえる.また,精神障害者においてしばしば肥満も問題となるが,今回インピーダンス法を用いて測定した結果,体脂肪率も高値を示していることが明らかになった.まとめ: 1) 精神障害者の体内水分量は健康な人に比べて有意に低い. 2)バイオインピーダンス法は精神障害者の水中毒予防の指標として応用可能である.We find cases of water intoxication among patients of every sort of mental disorder. However, its cause is still unknown. Water intoxication causes serious complications, placing patients' life in danger. It is, therefore, important that its symptoms be identified at its early stage and its occurrence be prevented. In this study, we used the bio-impedance method in order to find out the level of water retained in the schizophrenic patients' body and examined ways to prevent water intoxication. The impedance values were compared between the schizophrenic patients and healthy women as well as between polydipsia and non-polydipsia patients. As a result, we found that both the extra-cellular and the intra-cellular water levels of the schizophrenic patients were significantly less than those of the healthy women. The extra-cellular water level of the polydipsia patients was significantly greater than that of the non-polydipsia patients. On the other hand, the polydipsia patients intra-cellular water level was not as high as their extra-cellular water level, indicating imbalance of water levels within the polydipsia patients body. Obesity is frequently an issue among mental disorder patients : the impedance method showed that body fat rate of these mental disorder patients was rather high. Summary 1)The amount of the body water level of the schizophrenic patients is significantly low compared with the healthy women. 2)The bio-impedance method can be applied as an index of the water intoxication prevention of the schizophrenic patients.