著者
瀬在 泉 谷口 千枝 平野 公康 吉見 逸郎
出版者
特定非営利活動法人 日本禁煙学会
雑誌
日本禁煙学会雑誌 (ISSN:18826806)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.79-86, 2018-12-12 (Released:2019-01-23)
参考文献数
12
被引用文献数
3

【目 的】 都道府県看護協会(以下、協会)のタバコ対策や禁煙支援の研修機会の現状を調査し、看護職の禁煙支援スキルの普及啓発を行う示唆を得る。【方 法】 2017年5月、協会47施設に対し、タバコ対策行動計画立案に関すること、看護職のタバコ対策や禁煙支援の講習会(以下「講習会」)に関すること等について、質問票を郵送し調査した。【結 果】 41施設の回答を得た。タバコ対策行動計画を現在立案しているのは8施設、「講習会」を現在実施しているのは9施設であった。協会が「講習会」に求める内容は、喫煙の害など情報提供や患者に行う禁煙支援、喫煙防止教育、カウンセリングスキル等であった。【考 察】 協会のタバコ対策は、日本看護協会のタバコ対策と連動していることが考えられた。「講習会」の内容として、喫煙の害などの情報提供や禁煙支援スキルの獲得が必要と思われた。【結 論】看護職のための禁煙支援スキルの獲得を目指した方策の検討が必要である。
著者
中村 正和 田淵 貴大 尾崎 米厚 大和 浩 欅田 尚樹 吉見 逸郎 片野田 耕太 加治 正行 揚松 龍治
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.3-14, 2020-01-15 (Released:2020-02-04)
参考文献数
45

目的 本報告の目的は,加熱式たばこの使用実態,健康影響,ニコチン供給装置としての製品特性に関わるエビデンスをもとに,本製品の流行がたばこ規制の主要政策に与える影響を検討し,今後の規制のあり方について政策提言を行うことである。方法 加熱式たばこの使用実態,有害化学物質の成分分析,ニコチン供給装置としての製品特性に関する文献検索には医学中央雑誌とPubMedを用い,11編を収集した。そのほか,国内の公的研究班の報告書と海外の公的機関の報告書から8編を収集した。 本製品の流行がたばこ規制に与える影響については,WHOがMPOWERとして提唱する6つの主要政策を取り上げた。本検討にあたっては,上述の19文献に加えて,たばこ規制の現状に関わる計26編の文献や資料を収集して用いた。結果 わが国では2013年12月から加熱式たばこの販売が開始され,2016年から流行が顕著となっている。2016年10月の時点で,日本は国際的に販売されている加熱式たばこ製品の90%以上を消費している。加熱式たばこは,紙巻たばこに比べるとニコチン以外の主要な有害物質の曝露量を減らせる可能性がある。しかし,病気のリスクが減るかどうかについては明らかでなく,紙巻たばこを併用した場合には有害物質の曝露の低減も期待できない。また,ニコチンの曝露ならびに吸収動態は紙巻たばこと類似しており,ニコチン依存症が継続して,その使用中止が困難になる。 加熱式たばこの流行は,WHOが提唱する6つの主要政策のいずれにおいても,現状の日本のたばこ規制の下では悪影響を与える可能性が考えられた。結論 加熱式たばこの流行に対して公衆衛生上の懸念が指摘されているが,その規制のあり方を検討するためのエビデンスが不足している。今後,加熱式たばこの健康影響のほか,紙巻たばこ使用への影響,たばこ政策に与える影響について研究を進める必要がある。健康影響が解明されるまでは,公衆衛生の予防原則の観点から紙巻たばこと同様の規制を行うべきである。