著者
西江 仁徳
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2021, 2021

野生チンパンジー研究の現場での実践について、「ある特殊な生業に従事しているエスニックグループ」として野生動物研究者をとらえ、その一員としての発表者自身の経験を内省的に記述することで、現場での異種混淆的な知の創出過程を捉え直す。
著者
西江 仁徳
出版者
一般社団法人 日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.73-90, 2008-12-20 (Released:2009-08-11)
参考文献数
45
被引用文献数
5 5

‘ The metaphor of transmission’ (cognition-transmission model), which is a root metaphor of contemporary primatology, was reconsidered and deconstructed by referring to other academic domains such as anthropology, communication study, psychology and cognitive science. Instead, I introduced another epistemological standpoint, action-practice model, based on the ‘ situated action’ approach, in order to expand the perspective of contemporary ‘ cultural primatology’ and to understand the relationship comprehensively between primate culture and sociality. From this standpoint, I analyzed social interactions along ant-fishing among wild chimpanzees at Mahale, Tanzania. Some situated characters of their social practice, such as attitude depending on others’ actions, moderate exploring proposition to others, and direct reaction to such propositions, were considered to be important to realize such social situation of ant-fishing as a cultural practice of chimpanzees.
著者
西江 仁徳
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.32, pp.39-40, 2016

<p>2014年11月に、タンザニア・マハレM集団のチンパンジーが、地中の穴の中にいるセンザンコウに遭遇した事例を報告する。ギニア・ボッソウのチンパンジーはキノボリセンザンコウを捕食することが知られているが、これまでマハレではチンパンジーとセンザンコウの遭遇事例の報告はない。今回の観察では、マハレM集団全65個体(当時)のうち20個体が、地中の穴の中にいるセンザンコウに対して何らかの働きかけをおこなった。このうち、穴の中を覗き込んだだけの個体が17個体、さらに穴に枝を挿入した個体が3個体、さらにそのうち2個体は自分の腕を穴の奥に突っ込んだ。穴の中を覗き込むさいには、穴に顔を突っ込む個体も多く見られた。穴に枝を挿入した3個体は、1個体がオトナオス、2個体がワカモノオスで、最初にオトナオスが枝を挿入したあと、ワカモノオス2個体が引き続いて枝の挿入をした。穴の中に腕を突っ込んだのはこのワカモノオス2個体で、いずれも覗き込みや枝挿入をしたあとに腕の挿入をおこなった。穴に挿入した枝は4本回収し、最長のもので約4メートル(基部の直径≒1.5センチメートル)、最短のもので約50センチメートル(基部の直径≒1.2センチメートル)だった。チンパンジーはセンザンコウに対しておおむね新奇な対象を探索するような反応をしていたことから、マハレではチンパンジーとセンザンコウはふだんから互いに出会うことがほとんどなく、ボッソウのような捕食/被食関係にはないことが示唆される。</p>