- 著者
-
西田 史朗
高橋 豊
竹村 恵二
石田 志朗
前田 保夫
- 出版者
- 日本第四紀学会
- 雑誌
- 第四紀研究 (ISSN:04182642)
- 巻号頁・発行日
- vol.32, no.3, pp.129-138, 1993-07-31 (Released:2009-08-21)
- 参考文献数
- 33
- 被引用文献数
-
3
琵琶湖周辺に位置する彦根市曽根沼, 比良山地の小女郎ヶ池湿原, 福井県鳥浜貝塚の湿原堆積層中で, 鬼界アカホヤ火山灰層の上位に存在する火山灰層について, 火山ガラスの主要元素組成と屈折率を測定したところ, それらが互いに対比できることが分かった. 一方, これらの測定値は, 伊豆半島カワゴ平火山を給源とするカワゴ平降下火山灰層の火山ガラスの主要元素組成と屈折率の測定結果ともよい一致をみる. すでに, カワゴ平降下火山灰層が東から西に飛んだ火山灰であると報告されていることから, 今回測定した火山灰層がカワゴ平降下火山灰層であると考えるに至った. カワゴ平降下火山灰層は3,000年BP前後の噴出と考えられるので, 伊豆半島から近畿地方にかけての地域で, 縄文時代後・晩期の有効なマーカーテフラの発見となる. 日本列島をおおう第四紀の広域火山灰層のほとんどは, その給源火山を分布域の西端近くにもつか, 西方に予想されてきたが, 上記の火山灰層については当てはまらない. カワゴ平降下火山灰層を西方に吹送するような日本列島に広く東風の吹く気圧位置として, 梅雨期と秋雨期, さらに本州沖を巨大台風がゆっくりと東進する場合が考えられる. 今回の気象条件は特定できないが, これらのいずれかとカワゴ平火山の噴火時期が一致して西方へ運ばれたと考えられる.