著者
熊澤 一正 大杉 奉功 西田 守一 浅見 和弘 鎌田 健太郎 沖津 二朗 中井 克樹 五十嵐 崇博 船橋 昇治 岩見 洋一 中沢 重一
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.171-185, 2012 (Released:2013-04-24)
参考文献数
30
被引用文献数
3

福島県阿武隈川水系三春ダムの蛇沢川前貯水池において,岸に平行して定置網を設置し,人為的に水位低下させることで魚類を網内に集結させて魚類を捕獲した.フィールドとした三春ダムは制限水位方式のダムであり,非洪水期 (10 月 11 日 ~ 6 月 10 日) から洪水期 (6 月 11 日 ~ 10 月 10 日) にかけて,貯水位を 8 m 低下させる運用をしている.捕獲試験は,2007 年 ~ 2011 年に実施した.捕獲した魚類のうち,外来魚のオオクチバスとブルーギルは回収し,それ以外の在来魚等は再放流した.オオクチバスの大型個体は,前貯水池と本貯水池の連結部 (幅 5 m) で多く捕獲でき,これは繁殖のために遊泳している個体と考えられた.一方,ブルーギルはこの時期は遊泳せず,浅い場所に集まっていた.水位低下を利用した定置網での捕獲の結果,オオクチバスと 2 歳魚以上のブルーギルは年々減少し,ギンブナをはじめとする在来魚等は増加傾向であった.在来魚等の若い個体が継続的に生産・維持されることが水域の魚類群集のバランスを保つ上で重要である.蛇沢川前貯水池では,2010 年以降,貯水池内で繁殖したギンブナ,コイの若い個体が顕著に増加しており,捕獲による駆除の効果と考えられる.
著者
西田 守一 浅見 和弘 荒井 秋晴
出版者
Ecology and Civil Engineering Society
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.107-117, 2014

制限水位方式により運用されている三春ダム貯水池湖岸において,貯水池の水位低下により洪水期のみに出現する水位変動域の小型哺乳類による利用を明らかにした.水位変動域と通年陸域において捕獲・再捕獲調査を行った結果,208 個体のアカネズミと 2 個体のヒミズが捕獲された.水位変動域において,アカネズミは貯水池の水位低下直後の植生が乏しい (植被率 25%未満) 時期でも捕獲され,植被率の増加に伴い捕獲率は増加した.また,水位変動域で捕獲,再捕獲された個体が確認されたことから,水位変動域の利用は一時的なものではないと考えられる.アカネズミ捕獲率は,水位変動域と通年陸域で大きな差はなかったことから,水位変動域はアカネズミの生息地として機能すると考えられる.