著者
土岐 範彦 大杉 奉功 中沢 重一 鎌田 健太郎 熊澤 一正 浅見 和弘 中井 克樹
出版者
Ecology and Civil Engineering Society
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.37-50, 2013
被引用文献数
1

福島県阿武隈川水系三春ダムの蛇石川前貯水池は,水質保全を目的として設置した前貯水池の一つであり,2006 年にはオオクチバスが優占していた.2006 年 10 月に水質保全の試験のため,前貯水池内の水を抜き,湖底を 2 ヶ月間干し上げた.その際,魚類の全量捕獲を行い,捕獲したオオクチバスは駆除し,在来魚等は再放流した.魚類の捕獲は前貯水池内で 2 箇所,前貯水池堤体下流で 1 箇所の計 3 箇所で行ったが,捕獲状況からオオクチバスは貯水池内に広く生息している傾向が示唆された.一方,ギンブナの小型個体は貯水池堤体近くの深いところに集まっている傾向がみられた.また,ギンブナとコイの大型個体はダム流入部付近の水深 2 m 以浅に生息している傾向がみられた.水抜きの 2 年後にはオオクチバスの個体数割合は 2006 年と同等になった.これは,流路沿い等に取り切れなかった個体が存在した可能性等が考えられる.他の事例同様,複数回の水抜きを行わないと完全駆除は困難と考えられた.
著者
土岐 範彦 大杉 奉功 中沢 重一 鎌田 健太郎 熊澤 一正 浅見 和弘 中井 克樹
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.37-50, 2013-09-30 (Released:2013-11-29)
参考文献数
11
被引用文献数
3 1

福島県阿武隈川水系三春ダムの蛇石川前貯水池は,水質保全を目的として設置した前貯水池の一つであり,2006 年にはオオクチバスが優占していた.2006 年 10 月に水質保全の試験のため,前貯水池内の水を抜き,湖底を 2 ヶ月間干し上げた.その際,魚類の全量捕獲を行い,捕獲したオオクチバスは駆除し,在来魚等は再放流した.魚類の捕獲は前貯水池内で 2 箇所,前貯水池堤体下流で 1 箇所の計 3 箇所で行ったが,捕獲状況からオオクチバスは貯水池内に広く生息している傾向が示唆された.一方,ギンブナの小型個体は貯水池堤体近くの深いところに集まっている傾向がみられた.また,ギンブナとコイの大型個体はダム流入部付近の水深 2 m 以浅に生息している傾向がみられた.水抜きの 2 年後にはオオクチバスの個体数割合は 2006 年と同等になった.これは,流路沿い等に取り切れなかった個体が存在した可能性等が考えられる.他の事例同様,複数回の水抜きを行わないと完全駆除は困難と考えられた.
著者
熊澤 一正 大杉 奉功 西田 守一 浅見 和弘 鎌田 健太郎 沖津 二朗 中井 克樹 五十嵐 崇博 船橋 昇治 岩見 洋一 中沢 重一
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.171-185, 2012 (Released:2013-04-24)
参考文献数
30
被引用文献数
3

福島県阿武隈川水系三春ダムの蛇沢川前貯水池において,岸に平行して定置網を設置し,人為的に水位低下させることで魚類を網内に集結させて魚類を捕獲した.フィールドとした三春ダムは制限水位方式のダムであり,非洪水期 (10 月 11 日 ~ 6 月 10 日) から洪水期 (6 月 11 日 ~ 10 月 10 日) にかけて,貯水位を 8 m 低下させる運用をしている.捕獲試験は,2007 年 ~ 2011 年に実施した.捕獲した魚類のうち,外来魚のオオクチバスとブルーギルは回収し,それ以外の在来魚等は再放流した.オオクチバスの大型個体は,前貯水池と本貯水池の連結部 (幅 5 m) で多く捕獲でき,これは繁殖のために遊泳している個体と考えられた.一方,ブルーギルはこの時期は遊泳せず,浅い場所に集まっていた.水位低下を利用した定置網での捕獲の結果,オオクチバスと 2 歳魚以上のブルーギルは年々減少し,ギンブナをはじめとする在来魚等は増加傾向であった.在来魚等の若い個体が継続的に生産・維持されることが水域の魚類群集のバランスを保つ上で重要である.蛇沢川前貯水池では,2010 年以降,貯水池内で繁殖したギンブナ,コイの若い個体が顕著に増加しており,捕獲による駆除の効果と考えられる.
著者
村田 裕 浅見 和弘 三橋 さゆり 大本 家正
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.63-79, 2008 (Released:2008-09-10)
参考文献数
28
被引用文献数
9 8

78年間,維持流量が設定されていなかった高梁川水系帝釈川ダム下流に,2001年7月から2003年3月にかけて順次0.1m3/s,0.2m3/s,0.348m3/sの維持流量が放流され,2003年3月14日からは再開発事業に伴う工事によりダム流入量=放流量(自然流況:2∼4m3/sが多い)となった.維持流量0.1m3/s放流により瀬切れはなくなり,流況改善に伴い流水が回復した.流況改善に伴う生物群集の対応を把握するため,糸状藻類,魚類,底生動物の変化を追跡した.糸状藻類は,維持流量放流後は,流量が一定のため繁茂したが,自然流況となり流況変動が大きくなると,剥離が進み減少した.魚類は,維持流量放流時(調査時の流量0.1m3/s,0.2m3/s)と自然流況時(調査時の流量4.0m3/s)を対比したが,自然流況後,平瀬を好むオイカワが減少し,魚類によっては生息環境の減少につながると考えられる.魚類全体としても,帝釈川ダム下流は,種数,総個体数が増加することはなかった.底生動物は,2002年2月の第1回調査では,ダム下流でカワニナなどが優占し,種数,総個体数,多様度指数も低かったが,流況改善1年程度でそれ以前と大きく種構成が変わった.時間経過に伴いカゲロウ目,トビケラ目が増加し,全体の種数,総個体数,多様度指数のいずれも増加し,ダムの影響を受けていない他の地点との差が少なくなった.
著者
加藤 絵里子 浅見 和弘 竹本 麻理子 沖津 二朗 中沢 重一 松田 裕之
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.77-89, 2014-03-30 (Released:2014-04-18)
参考文献数
16
被引用文献数
2

福島県阿武隈川水系大滝根川に建設された三春ダムでは, 貯水予定区域内にフクジュソウが自生しており, 冠水の影響を受けることが明らかであった. そのため, 冠水前に, 一部を自生地に残し, 残りを保全措置として冠水しない 4 地点に分けて移植した. 本研究では, 試験湛水前の 1996 年から 2009 年までの 14 年間, フクジュソウの個体群を追跡した. 自生地では試験湛水後, 個体数は増加傾向にあり, 開花個体 (F), 結実個体, 芽生え (S), 幼植物 (J1~J4) も存在していた. 移植地 4 地点のうち造成地は, 移植後, 大幅に個体数が増加し, 生育している面積も拡大傾向であった. 残り 3 地点のうち自生地と同様の落葉樹林下の 2 地点は, 移植後 14 年を経た 2009 年段階で, 開花個体 (F), 結実個体, 芽生え (S), 幼植物 (J1~J4) も生育していたが, 開花個体 (F) 数に着目すると減少傾向であった. 自生地とは立地環境が異なり, 生育に不適と考えられた 1 地点では, 個体数は減少し, 2006 年以降開花が見られない状態であった. 生活史ステージごとに収集したデータを元に, 50 年間のフクジュソウ個体群存続確率を予測した. その結果, 自生地および造成地は長期的に個体群が維持されると予測された. 自生地と同様の落葉樹林下の 2 地点は 15~17 年は維持され, 生育に不適な地点は約 6 年で消失すると算出された. 2009 年のフクジュソウ開花・結実個体数は, 移植時より多い個体数までに回復し, 生育している面積も湛水前の自生地より広くなっている. 今後も少なくとも 2 地点では長期にわたり存続が可能であり, 移植により個体群は維持できると考えられる.
著者
西田 守一 浅見 和弘 荒井 秋晴
出版者
Ecology and Civil Engineering Society
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.107-117, 2014

制限水位方式により運用されている三春ダム貯水池湖岸において,貯水池の水位低下により洪水期のみに出現する水位変動域の小型哺乳類による利用を明らかにした.水位変動域と通年陸域において捕獲・再捕獲調査を行った結果,208 個体のアカネズミと 2 個体のヒミズが捕獲された.水位変動域において,アカネズミは貯水池の水位低下直後の植生が乏しい (植被率 25%未満) 時期でも捕獲され,植被率の増加に伴い捕獲率は増加した.また,水位変動域で捕獲,再捕獲された個体が確認されたことから,水位変動域の利用は一時的なものではないと考えられる.アカネズミ捕獲率は,水位変動域と通年陸域で大きな差はなかったことから,水位変動域はアカネズミの生息地として機能すると考えられる.