著者
服部 美奈 西野 節男
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

研究成果を以下の4点に要約する。第一に、インドネシア・マレーシアのイスラーム高等教育機関では近年、イスラーム法学やイスラーム教育などのイスラーム諸学に、非宗教的な学問諸学である法学や教育学を統合する試みが進められている。さらに、イスラーム高等教育機関は様々な価値が混在する多元化社会に対応し、同時に非宗教系高等教育機関とは異なる人材の輩出、つまり宗教と非宗教といった二元的な学問類型を越えたイスラーム指導者を養成しようとしている。一方、マレーシアのイスラーム高等教育機関は1980年代からアラビア語と英語を教授用語とするマレーシア国際イスラーム大学の設立など、グローバル化に対応した教育改革を行い、国内外のイスラーム指導者を養成している。また各州における独自の取り組みも注目される。第二に、イスラーム高等教育機関における研究の進展は顕著である。多くのイスラーム高等教育機関には女性研究センターPusat Studi Wanita、イスラーム研究センターが設けられ、イスラーム諸学の研究が進められていると同時に、現代の諸問題に照らした教義の再解釈や社会科学の手法にもとづく実証研究が推進されている。この意味で、各国のイスラーム高等教育機関における研究の蓄積と発信が今後のイスラーム研究の重要なリソースとなりつつある。第三に、しかしながら異宗教間対話という観点からインドネシア・マレーシアのイスラーム高等教育機関をみると、イスラーム諸学と非イスラーム諸学との学問的統合あるいはより広い分野での就職・活動の機会を学生に提供しているという点において、価値多元化社会への対応は確実に進んでいるといえるものの、諸宗教間の対話を現在のイスラーム高等教育機関が積極的に提供していると結論づけることはできない。第四に、2011年に開催した国際シンポジウムにおいて、各国(インドネシア、マレーシア、ブルネイ、オランダ、ヨルダン)のイスラーム高等教育機関に所属する研究者を招聘し、東南アジア、ヨーロッパ、中東地域におけるイスラーム高等教育機関の価値多元化社会への対応を直接議論することにより、国際的な研究交流を促進した。また、この国際シンポジウムの開催により、東南アジア地域のみならず、ムスリムがマイノリティとして居住するヨーロッパにおけるイスラーム高等教育機関の現状と課題を共有し、より普遍的な課題の検討と問題提起が可能となった。
著者
西村 俊一 西野 節男 柿沼 秀雄 石川 啓二 三笠 乙彦 皆川 卓三
出版者
東京学芸大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1987

中国, 台湾, アメリカ西岸, オーストラリアについて, 華僑教育関係機関の資料収集を行い, 分析を進めた. また, 東アジア比較研究の観点から, 中国と台湾, 韓国と北朝鮮の僑民教育政策を比較するため, 北朝鮮の資料収集もあわせて行った.収集した文献・資料は, 既収集の関係資料及び学外機関の資料と共にカード化し, 約170ページに及ぶ『華僑教育関係文献・資料目録』(東京学芸大学海外子女教育センター刊)を刊行し, 研究機関等に配布すると共に, 研究者との交流に活用し始めている.また, 分析結果については, 次回日本比較教育学会において共同研究発表を行うべく, 準備・調整中である.第2年度は, 補充調査及び補充的な資料収集を行いつつ, 資料分析を本格化する計画である.