著者
諏訪 竜夫
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.243-255, 2014-01

環境経済学の多くの文献では自然環境が持つ生物多様性,独自の生態系・景観等はレクリエーションとして「利用価値」だけなく,それらを利用せずとも認める価値である「非利用価値」も有すると述べられている。一方で最近の環境評価研究では,明確なミクロ経済学的背景を持つクーン・タッカー・モデル(KT)等の顕示選好法の発展が著しい。しかし顕示選好法は弱補完性の前提から,非利用価値を評価することが困難である。それを踏まえ本研究では表明選好法であるCVMを北海道東部の知床国立公園に適用し,この住民の「知床国立公園へのレクリエーション目的での立入が禁止された状況下で,公園内の自然環境を保全する政策」に対する支払意志額を評価した。この調査結果から地域住民は知床の自然環境保全にその利用が不可能な状況下でも価値を認めていることが示された。この結果は自然公園での弱補完性の不成立と非利用価値の存在の正当化を意味している。よって今後の自然公園等に関する環境評価研究では,KT等の最新の顕示選好法にCVM等の表明選好法を援用することによって,非利用価値の評価を行うことが重要であるといえよう。
著者
碓井 健寛 諏訪 竜夫
出版者
創価大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

家庭ごみ有料化は,導入後に減量効果が失われるというリバウンドが問題だと指摘されているが,実際には明らかでない.本稿は家庭ごみ有料化の減量効果,および資源ごみの代替促進効果の長期での持続性を明らかにするために,計量経済学のパネルデータ分析を用いて検証した.その際にデータ選択の恣意性を可能な限り排除し,推定結果の頑健性を保証するために複数のモデルによって確認した.その結果,ごみ排出量のリバウンドはわずかながら存在するものの,長期の減量効果はほとんど失われないことが明らかになった.また,資源ごみの長期の分別促進効果は,有料化導入後の経過年数が経つにしたがって逆に強まることがわかった.