- 著者
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諸 昭喜
- 出版者
- 人体科学会
- 雑誌
- 人体科学 (ISSN:09182489)
- 巻号頁・発行日
- vol.27, no.1, pp.1, 2018 (Released:2018-12-01)
- 参考文献数
- 77
韓方医学と西洋医学という二元的な医療体系を維持している韓国社会において、産後風は韓方医学では明らかな病気とされるにもかかわらず、西洋医学ではその存在が認められないという特異な位置を占めている。本研究では、産後風を例に韓方医学の病気が西洋医学との関係の中でどのように変化してきたのかについて分析し、産後風に関する言説が政府の保健政策や専門家の研究の影響を受けてきたことを明らかにする。分析方法として、韓国で1985年以降に発表された産後風に関する47篇の韓方医学の論文を抽出し、言説の変化を考察した。その結果、韓方医学が産後風の理論的基礎を提供し、産後の女性の身体管理の重要性を力説して、産後風の存在を確実なものにしてきたことが明らかとなった。同時にこのような言説を通じて、韓方医学の地位上昇を図り、産後に対する社会的関心を呼び起こし、産後風の予防としての産後ケア(産後調理)を強調することで、産後風をより強固に作りあげる役割を果たしてきた。産後風をめぐる韓方の動きは、病気が社会において産みだされ、社会の変化に応じて定義を変えていく一つの例であり、病気が社会的に構築されることを示すものと言える。