著者
小佐野 重利 京谷 啓徳 諸川 春樹 浦 一章
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

北イタリアのヴェローナ市とその近郊に残る14-16世紀の壁画と美術館や公私収集に所蔵される板絵作品のうち、ヴェローナ地方画家たちの活動に関連する作品の写真撮影調査を行ない、特に、少なくとも13人の画家と1人の木彫家を輩出した芸術家一族バディーレ家に関する包括的な研究を実施した。報告書では16世紀中葉からヴェネツィア派絵画の巨匠となるパオロ・カリアーリ、通称ヴェロネーゼを誕生せしめたヴェローナの約2世紀に亙る絵画史研究にとり基礎的な資料となる成果を刊行する。写真撮影されたのは、ヴェローナ内外の12聖堂の壁画、ヴェローナ市立カステルヴェッキオ美術館所蔵のバディーレ一門の作品と1財団と1個人の所有する板絵である。それに基づく成果として、ヴェネツィア大学セルジョ・マリネッリ教授のバディーレ一族に関する包括的検討にはじまり、ヴェローナ市内サン・ピエトロ・マルティレ聖堂とサンタ・マリア・デッラ・スカラ聖堂のバディーレ一門に関する論考を小佐野重利、郊外ではブッソレンゴのサン・ヴァレンティーノ聖堂身廊壁画、エルベのサンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂アプスの壁画、ティーネの教区聖堂サン・ヴィンチェンツォ聖堂内陣壁画について、それぞれ論考を諸川春樹、小佐野重利、京谷啓徳が執筆し、ヴィチェンツァ大聖堂およびナントの2新出壁画の修復中間報告をヴェネト地方歴史美術文化財局監督官キアラ・リゴーニが公刊する。研究資料編として、浦一章によるジョヴァンニ・バディーレ関連古文書の一部邦訳と解題のほか、現場での調査記録および撮影写真の目録を掲載する。新知見については、小佐野がイタリア語論文をVerona Illustrata, No.16(2003),pp.13-16にも掲載した。