著者
森田 善仁 讃岐 美智義 世良 昭彦 木下 博之
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.111-116, 2003-04-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

心停止をきたした脚気心症例を経験し,PCPS下に,ビタミンB1を静注し救命しえた。48歳男性。ショック,呼吸困難のため当院に緊急搬送された。来院時,重篤な循環不全と代謝性アシドーシスを認めた。カテコラミンや重炭酸ナトリウム投与,IABPによる循環補助によっても症状の改善を認めず,心臓カテーテル検査中,心停止をきたしたためPCPSを導入した。諸検査後,心筋梗塞,肺梗塞,心タンポナーデを否定し,病歴から脚気心を疑った。ビタミンB1100mgを静注後,2時間でアシドーシスの改善がみられ,6時間で循環動態が安定したためPCPSを離脱した。原因不明のショック,アシドーシスでは,脚気心を疑い,速やかにビタミンB1を投与するべきである。
著者
讃岐 美智義
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.79-85, 2019-04-19

研修医が気管挿管の練習のために気管挿管シミュレータを使う際,頭部を思いっきり後屈させたあげく喉頭鏡のハンドルを後ろに倒して口の中をのぞこうとする。この行為こそが,気管挿管の上達の大きな妨げになると考える。現状のシミュレータと患者では,頸椎の可動域,開口,舌の状態が明らかに異なっているのである。 麻酔導入時の初期研修医“あるある”なのだが,頭位も悪く開口もできていないのに,看護師から喉頭鏡を受け取ろうとする。いけないのは初期研修医だけではない。介助についている看護師も喉頭鏡を受け取ってと言わんばかりに,研修医の目前に点灯した喉頭鏡をちらつかせる。喉頭鏡を渡すことが気管挿管の介助だと思っている。受け取る方も悪ければ,渡す方も悪いのだ。 あげくに研修医は,受け取った喉頭鏡を左手に持ったまま右手で患者の口を開け…(おもむろに)喉頭鏡を入れようとするが,どうやってもうまく入らない。喉頭鏡を入れるスペースが口腔内にないため,無理矢理,喉頭鏡のブレードで強く舌を押し込みつつ喉頭鏡を進める。なんとなく入ったと思ったら(本当は口腔外にブレードの大部分が出ていて,入っていないのだが),喉頭鏡のブレードを後方に倒してみる。しかーし,喉頭が見えるどころか舌しか見えない。バキッ。前歯にあたる(指導医は冷や汗)。歯が折れなかったとしてもこの時点で,唇,舌,口腔内をひどく傷つけ出血していることは日常茶飯事である。初回はこんなモノだ。この状態を見た指導医は喉頭鏡を取り上げて,自ら手本を見せる(取り上げられるのは仕方がないが,お互いに気まずい空気が流れるのが問題である)。2回目の研修医は,ちょっと賢くなって開口してから喉頭鏡を受け取る(これは大きな一歩である)。しかし,頭部を異常に後屈しているのは変わらない。これを見た指導医は,頭位をすこーし戻してスニッフィング位にするのだが,研修医は患者の額に自分の手を押しあてて後屈を強めてしまう(あぁ〜っ,頸椎が…と指導医は冷や汗)。昨日シミュレータで練習してきたらしい。シミュレータでは頭部後屈を強めれば,喉頭がよく見えたという。そのまま気管挿管を続けさせてみるが,やはり口腔内を傷つけてしまい,喉頭鏡を指導医に取り上げられる。このような珍研修が繰り返され,気管挿管の上達は牛歩のごとしである。これでは,気管挿管がまともにできないまま,麻酔科研修が終わってしまう(本当は気管挿管ではなく,マスク換気や気道の開通全般について理解し,実践してもらいたいのに…)。 このような研修医ばかりではないが,何回やっても気管挿管ができない研修医がいるのは確かである。そのまま年を重ねると,気管挿管ができない○○科専門医となる。実際,十分に経験を積んだ内科系の医師に,気管挿管はどうしたらできるようになるかと,真面目な相談を受けたことがある。初期臨床研修制度が始まる十数年以上前から気管挿管を指導していた筆者は,麻酔科に研修にやってきた医師に,1〜2か月の研修期間内にどのように気道確保を教えようかと考え,教育法を試行錯誤していた。そして,初期臨床研修制度が始まった2004年前後には,ついに研修医向けの気道確保伝授法を確立した。これが,気道確保マスター法SANUKI Methodである。現在は,これを指導医ではなく後期研修医もマスターすべき指導法と位置づけ,屋根瓦方式で世の中に広めようと布教中であるため,ここに紹介したい。
著者
讃岐美智義
雑誌
LiSA
巻号頁・発行日
vol.12, pp.484-490, 2005
被引用文献数
1