著者
三好 寛二 世良 昭彦 加藤 貴大 梶山 誠司 木下 博之
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.9, pp.772-776, 2011-09-15 (Released:2011-11-15)
参考文献数
12

急性薬物中毒は救急外来において頻度の高い傷病の一つである。今回,ロキソプロフェンを大量服薬し,急性中毒症状を呈した症例で,ロキソプロフェンおよびその代謝産物の血中濃度を測定し得たので報告する。症例は30代の女性,ロキソプロフェン3,600mg(ロキソニン®錠,1錠60mgを60錠)を服薬し,3時間後に来院した。来院時,自覚症状なく,意識清明でバイタルサインは安定していた。胃洗浄,活性炭投与は行わず,入院し輸液療法を行った。急性中毒症状として,消化器症状(食欲不振と心窩部痛が第2病日から3日間継続),急性腎傷害(第3病日まで無尿で経過し,第3病日をピークにBUN 23mg/dl,Cre 1.93mg/dlまで上昇),肝機能障害(第3病日をピークにGOT 532 IU/l,GPT 144 IU/l,LDH 405 IU/lまで上昇),血小板減少(第3病日をピークに10.8×104/dlまで低下)などを生じたが,いずれも経過観察と対症療法で改善し第4病日に退院した。退院後も後遺症を残すことなく経過した。ロキソプロフェンの血中濃度は,服薬3.5時間後126μg/ml,17時間後26μg/ml,40時間後3.18μg/ml,64時間後0.25μg/mlで,ロキソプロフェンの代謝産物であるトランス配位アルコール体の血中濃度は,服薬3.5時間後152μg/ml,17時間後16.1μg/ml,40時間後2.33μg/ml,64時間後0.19μg/mlであった。大量服薬時のロキソプロフェンの最高血中濃度到達時間は0.41時間で,服薬から3.5時間までに吸収が終わっており吸収遅延は起こさなかった。また,ロキソプロフェンは大量服薬時も速やかに代謝され代謝産物を生じていたが,血中濃度半減期は延長し6.7時間であった。
著者
森田 善仁 讃岐 美智義 世良 昭彦 木下 博之
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.111-116, 2003-04-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

心停止をきたした脚気心症例を経験し,PCPS下に,ビタミンB1を静注し救命しえた。48歳男性。ショック,呼吸困難のため当院に緊急搬送された。来院時,重篤な循環不全と代謝性アシドーシスを認めた。カテコラミンや重炭酸ナトリウム投与,IABPによる循環補助によっても症状の改善を認めず,心臓カテーテル検査中,心停止をきたしたためPCPSを導入した。諸検査後,心筋梗塞,肺梗塞,心タンポナーデを否定し,病歴から脚気心を疑った。ビタミンB1100mgを静注後,2時間でアシドーシスの改善がみられ,6時間で循環動態が安定したためPCPSを離脱した。原因不明のショック,アシドーシスでは,脚気心を疑い,速やかにビタミンB1を投与するべきである。