著者
小川 貢平 阪口 和滋 岡 優 永本 将一 黒澤 和宏 浦上 慎司 岡根谷 利一
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1, pp.41-46, 2019-01-20 (Released:2020-01-20)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

症例は59歳女性.2015年3月肉眼的血尿,右腰部痛を主訴に当科を受診した.腹部CTにて両側腎盂に長径右18mm大,左15mm大の結石を認めた.並存疾患として潰瘍性大腸炎があり,サラゾスルファピリジン(SASP)を約30年間内服していた.尿検査所見は酸性尿で,尿酸結晶を認め,腹部単純X線では結石陰影を認めなかったことから尿酸結石を疑い,尿アルカリ化薬と尿酸生成抑制薬の投与を開始した.しかし,治療開始3カ月後の腹部CTにて,両側の腎結石は右25mm大,左24mm大と増大傾向を示し,右腰部痛増悪を認めたため,2015年9月右腎結石に対し,経尿道的砕石術(TUL)を行った.結石は橙色で柔らかく,約半分を砕石し結石分析に提出したところ,尿酸結石ではなく薬剤性結石が疑われた.結石と共にSASP錠を提出し,赤外分光分析法にて照合したところ結石と類似していたため,SASPによる薬剤性尿路結石と診断した.治療として潰瘍性大腸炎治療薬をSASPからメサラジンに変更し,尿アルカリ化薬の増量を行ったところ,3カ月後の腹部CTで両側腎結石消失を認めた.その後,結石予防薬の投与なしで,結石再発は認めていない.
著者
谷 利一 増田 拓朗
出版者
香川大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

ゴルフ場のコウライグリ-ンには、ピシウム菌の関与する2種の病害、すなわち不揃症(仮称)と春はげ症が発生する。前者は萌芽直後より、後者は萌芽前よりパッチが出現する。両症とも極めて防除が困難であり、本研究では両症の発生主因と防除方法について検討した。(1)春はげ症:本症発生グリ-ンより継続的に病原菌の分離を行ったところ、コウライシバの休眠期前後の11〜12月にフザリウム菌が、萌芽期頃の5月にピシウム菌が高頻度に検出された。分離フザリウム菌は、そのコロニ-タイプから3種に類別され、そのうちの2種でノシバ子苗に対する強い病原性が認められた。本症発生グリ-ンにおいて、11月にベノミル剤、5月にメタラキシル処理を行ったところ、高い防除効果が得られた。また、本症の発病に土壌条件が関係すると考えられたため土壌物理性(三相分布、透水係数)を調査した。病班部は健全部に比べて土壌の液相率が高く、気相率が低い傾向にあった。以上より、本症は休眠期前後のフザリウム菌、萌芽期頃のピシウム菌による復合感染であると結論された。また、通気透水性の悪い土壌条件で発生が助長される事が示唆された。フザリウム菌の同定は現売検討中である。ピシウム菌については、分離頻度と病原性からPythium graminicolaとP.vanterpooliiであると結論された。(2)不揃症:本症の発生時期にはPythium grminicola(Pg),P.Torulosum(Pt)およびP.vantepoolii(pv)が高頻度に分離された。ノシバ子苗を用いた接種試験でPg、Pvは10℃下で強い病原性を示したが、ptは5〜25℃で病原性はなかった。ピシウム菌に選択的に抗菌性の強いメタラキシルの萌芽期の処理は、本症の発生を完全に抑えた。以上より、本症の主因はPgとPvであり、萌芽期のメタラキシル処理で防除可能であると結論された。