著者
野々村 敦子 増田 拓朗 守屋 均
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.3-8, 2006-08-31
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

研究対象地域である香川県直島は,1976年から現在までに山火事が7件発生していることから,山火事が発生しやすい環境下にあるといえる。樹木による被覆を失った裸地面では,森林本来の機能を失うため,土壌浸食を受けやすく,土壌劣化の可能性が高い。よって,健全な緑地環境を保全するためには,山火事による被害を最小限に抑えることがきわめて重要である。本研究では,2004年1月13日に発生した山火事において,現地調査の結果と衛星データを用いて,山火事による植生被害及び火災後の回復能力という点について火災前の植生との関係を解析・評価した。その結果,活性度が高い植生には延焼防止効果があること,さらに活性度の高い植生は高い回復能力を持つことを明らかにした。本研究を通して,今後の森林の育成および管理に関する基礎データを得ることができた。
著者
〓 徳泉 増田 拓朗 守屋 均
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 = / the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.292-295, 2001-08-31
参考文献数
10
被引用文献数
1

高松市中央通りの中央分離帯に植栽されているクスノキ並木をめぐって, 市のシンボルとしての緑豊かな樹冠を望む一般市民と, 見通しのよい圧迫感のない車道空間を望む運転者の論争が20年以上にわたって繰り広げられている。車道上に張り出した車道建築限界 (4.5m) よりも低い枝が問題になっているわけだが, 現在, このクスノキ並木の平均樹高は10.4mで, ほぼ樹高成長の上限に達しており, 現状で下枝を切除すると極めて貧弱な樹冠にならざるを得ない。4個体を選んで土壌断面調査を行ったところ, 有効土層は浅い所では40cm, 深い所でも80~90cmであり, 固結土層が樹高成長を制限している可能性が示唆された。固結土層を膨軟化して, 有効土層を深さ1.5m以上確保してやれば更なる樹高成長が期待でき, 緑豊かな樹冠と見通しのよい圧迫感の少ない車道空間の両立が可能になるものと考えられる。
著者
アリフィン ヌルハヤティH.S. 増田 拓朗
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.315-323, 1997-03-28
被引用文献数
1 2

栗林公園は代表的な回遊式庭園であり,特別名勝に指定されている。しかし,近年,周辺地域の建築物の高層化に伴い,庭園景観が損なわれるようになってきた。本研究では,メインルートに沿って代表的な鑑賞地点12ケ所を選び,各地点から見える建築物の仰角および水平角を測定し,建築物の視覚的侵入の程度を調査した。調査結果に基づき,本来の庭園景観を損なわないような形での高木植栽あるいは築山居造成して高木植栽を行う可能性を検討した。この方法で,ある程度,建築物を遮蔽することは可能であるが,新たにさらに高い建築物が建設された場合にはその効果は失われる。根本的な解決のためには,周辺地域を風致地区あるいは景観保全地区として,建築物の高さ制限をすることが望まれる。調査結果に基づいて,その地域区分と高さ制限を提案した。
著者
谷 利一 増田 拓朗
出版者
香川大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

ゴルフ場のコウライグリ-ンには、ピシウム菌の関与する2種の病害、すなわち不揃症(仮称)と春はげ症が発生する。前者は萌芽直後より、後者は萌芽前よりパッチが出現する。両症とも極めて防除が困難であり、本研究では両症の発生主因と防除方法について検討した。(1)春はげ症:本症発生グリ-ンより継続的に病原菌の分離を行ったところ、コウライシバの休眠期前後の11〜12月にフザリウム菌が、萌芽期頃の5月にピシウム菌が高頻度に検出された。分離フザリウム菌は、そのコロニ-タイプから3種に類別され、そのうちの2種でノシバ子苗に対する強い病原性が認められた。本症発生グリ-ンにおいて、11月にベノミル剤、5月にメタラキシル処理を行ったところ、高い防除効果が得られた。また、本症の発病に土壌条件が関係すると考えられたため土壌物理性(三相分布、透水係数)を調査した。病班部は健全部に比べて土壌の液相率が高く、気相率が低い傾向にあった。以上より、本症は休眠期前後のフザリウム菌、萌芽期頃のピシウム菌による復合感染であると結論された。また、通気透水性の悪い土壌条件で発生が助長される事が示唆された。フザリウム菌の同定は現売検討中である。ピシウム菌については、分離頻度と病原性からPythium graminicolaとP.vanterpooliiであると結論された。(2)不揃症:本症の発生時期にはPythium grminicola(Pg),P.Torulosum(Pt)およびP.vantepoolii(pv)が高頻度に分離された。ノシバ子苗を用いた接種試験でPg、Pvは10℃下で強い病原性を示したが、ptは5〜25℃で病原性はなかった。ピシウム菌に選択的に抗菌性の強いメタラキシルの萌芽期の処理は、本症の発生を完全に抑えた。以上より、本症の主因はPgとPvであり、萌芽期のメタラキシル処理で防除可能であると結論された。
著者
小林 達明 吉川 賢 小橋 澄治 増田 拓朗
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.165-175, 1993-05-01
被引用文献数
7

湿性草地・砂丘の裾・砂丘上の土壌水分条件の異なる立地に植栽されたハンリュウ個体に, SPACモデルを適用し, 水分動態を解析した。シミュレーションの結果は実測値とよく適合した。夜明け前の水ポテンシャルには, 立地による違いはなかった。個体全体の通水抵抗は, 土壌水分条件の違いを反映し, 砂丘上で著しく大きく, 草地で小さかった。しかし砂丘上では, 根系分布が深く, 葉量/細根量率が小さく, 抵抗をより小さく補償していた。砂丘上では葉面コンダクタンスが小さく, 蒸散フラックス密度の大きさは草地上, 砂丘の裾, 砂丘上の順であった。日中の水ポテンシャルは砂丘上でやや低かったが, 砂丘上の細胞の浸透ポテンシャルは草地上より低いため, 圧ポテンシャルは同様と推測された。このように, ハンリュウは個体・器官・組織・細胞のそれぞれのレベルで反応して, 圧ポテンシャルを安定的に保つよう, 水分動態を制御していると考えられた。
著者
〓 徳泉 増田 拓朗 守屋 均
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.300-308, 2001-05-31
被引用文献数
2 2

西南日本において緑化樹としてよく用いられている常緑広葉樹3種(クスノキ, マテバシイ, アラカシ)の2年生ポット苗を用いて, 1996年の夏季と秋季に灌水停止実験を行い, 水ストレスが各樹種の光合成および蒸散活動に及ぼす影響を調べた。いずれの場合にも, 土壌乾燥に伴って葉内水分張力が低下したが, その低下の程度は樹種および季節によって異なった。実験に用いた3樹種の中では, マテバシイの葉内水分張力の低下が著しく, アラカシの葉内水分張力の低下が最も緩やかであった。マテバシイが土壌乾燥に対する抵抗が弱く, アラカシが強いという結果は, 既往の研究結果や筆者らの実際の緑地における経験と一致する。葉内水分張力と日光合成量, 葉内水分張力と日蒸散量の間にはともに密接な関係が認められ, 水利用効率は樹種, 季節に関わらず葉内水分張力-0.6〜-1.0MPa(pF3.8〜4.0に相当)付近で0になった。すなわち, 今回実験に用いた3樹種の水ストレスに対する耐性の違いは, 葉自体の水分生理的な能力の違いというよりも, 根の水分吸収能力および樹体の水分保持能力の違いによるところが大きいと考えられる。