著者
松本 博文 佐野 功 谷口 英樹
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.585-589, 2014-07-15 (Released:2014-08-20)
参考文献数
10

症例は69歳女性.自覚症状無く胸部CTで右上葉S3に径13 mmの境界明瞭な結節影を認めた.明らかなリンパ節腫大の所見無し.術前診断では良性疾患を疑われ手術目的に当院紹介された.手術は胸腔鏡補助下右S3区域切除を施行.腫瘤の割面は白色で境界明瞭であった.術中迅速組織診で確定的な所見は得られなかったものの悪性所見は認めなかった.永久標本では肺実質内に存在する境界明瞭な腫瘍で短紡錐形細胞が密に増生し血管肉腫様パターンを呈していた.組織像のみでは確定的な診断は得られず最終的には免疫組織染色から肺原発筋上皮腫と診断された.核分裂像や脈管侵襲は明らかではなく,低悪性度腫瘍と思われた.筋上皮腫は通常唾液腺等に認められる比較的予後の良い腫瘍であるが,時に再発や遠隔転移を来たす事もある.肺原発の筋上皮腫は非常に稀でその臨床的特徴に関する報告は極めて少なく,若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
藤田 浄秀 谷口 英樹
出版者
横浜市立大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

幹細胞アッセイ法の一つであるin vitroコロニーアッセイ法を用いて、顎下腺に幹/前駆細胞が存在するか否かを検証した。ラット新生仔顎下腺細胞の低密度培養(200cells/cm^2)により、単一細胞由来のコロニーを形成させることが可能な培養系を確立した。コロニーを構成する細胞のDoubling timeは平均24.7時間(S.D±7.02時間)と増殖能が旺盛であった。Epidermal growth factor(EGF)、hepatocyte growth factor(HGF)を添加して培養する事で、培養7日目においてコロニー構成細胞数が100個以上の大きなクローン性コロニーの形成数が13.2個(S.D±4.18個)と、何も添加せずに培養した場合の4.5個(S.D±1.73個)より2.93倍に増加した。RT-PCRにより様々な唾液腺細胞の分化マーカーの発現を検証した結果では、唾液腺を構成する三つの細胞系列の分化マーカーを発現しているクローン性コロニーが88.9%(8/9)と高頻度に存在し、免疫染色による検証では、腺房細胞マーカーであるAquaporin5(AQP5)、導管細胞マーカーであるNa+K+ATPase(Na-K)、cytokeratin19(CK19)、S100、筋上皮細胞マーカーであるα-smooth muscle actin(α-SMA)の分化マーカーの発現がコロニー中の細胞に見られた。また、成体ラット顎下腺中にも増殖能と多分化能を兼ね備えた細胞が、新生仔顎下腺よりも低い頻度ながらも存在していることが明らかになった。本研究により、高い増殖能と多分化能を兼ね備えた唾液腺幹/前駆細胞が新生児ならびに成体ラットの顎下腺中に存在することが明らかになった。