著者
山崎 ももこ 石井 正則 丹羽 洋二 谷口 雄一郎 森脇 宏人 濱田 幸雄
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.284-288, 2001-08-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
13
被引用文献数
2

咽頭異物は耳鼻咽喉科の外来において日常よく遭遇する疾患であるが, 頸部腫脹後に来院し異物が発見される症例も稀ではない。今回我々はイカ摂食後に咽頭痛が出現し, その後顎下部腫脹も出現したため4週間後当科を受診して, 頸部単純X線写真と頸部CTにて左顎下部に針金状の異物を確認し, 内視鏡及び放射線透視下で異物摘出術を施行した症例を経験した。頸部腫脹後に咽頭異物が発見された症例は他にも報告例があり, 日常診療で異物があるという訴えで受診する患者の中には, 今回の症例のように喉頭鏡検査や喉頭ファイバースコープで観察しても異物が発見できない場合も多い。しかし, 異物摂取の可能性のある症例には頸部単純X線写真を撮影するか, さらにCTを撮影するなどの検討が必要であると考えられた。
著者
齋藤 善光 宮本 康裕 望月 文博 阿久津 征利 加藤 雄仁 藤川 あつ子 栗原 宜子 谷口 雄一郎 肥塚 泉
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.121, no.6, pp.799-804, 2018-06-20 (Released:2018-07-05)
参考文献数
15

Silent sinus syndrome(SSS) は上顎洞自然孔が閉塞し, 低換気により洞内が陰圧化し, 上顎洞内陥や骨菲薄化に伴って無症候性の眼球陥凹, 眼球低位を認める疾患である. われわれは, 鼻副鼻腔乳頭腫の影響で, 上顎洞自然孔閉塞により発生したと思われた, SSS 様の所見を呈する1例を経験した. 治療は, 内視鏡下で腫瘍摘出し, 上顎洞を開放した. 術後, 上顎洞内陥は改善し, 翼口蓋窩陰影が縮小した. 上顎洞自然孔が閉塞し, 上顎洞内陥に伴う翼口蓋窩の拡大を認めた場合は, SSS を念頭に置く必要がある. また, SSS であれば上顎洞を開放することで症状, 所見共に改善するため, 診断的治療として手術は有効な手段と考える.
著者
望月 文博 宮本 康裕 四戸 達也 笹野 恭之 荒井 光太郎 西本 寛志 稲垣 太朗 大原 章裕 鈴木 香 三上 公志 谷口 雄一郎 肥塚 泉
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.595-601, 2019-12-31 (Released:2020-02-05)
参考文献数
16
被引用文献数
1

Japan has become a super-aging society, and the number of elderly persons with dizziness is increasing. In addition, elderly persons with dizziness have a high risk of falling, and fractures caused by falls can decrease the life span. It is therefore necessary to take appropriate countermeasures. Treatments for dizziness are wide-ranging and include physical therapy, such as canalith repositioning, and pharmacotherapy. However, many patients do not improve even after these treatments. In this study, we compared the results of stabilometry examined before and after the use of a cane in 21 patients aged 65 years or older with a history of dizziness who visited our department (DHI score of 28 points or higher). The use of a cane improved the following measured parameters: total length of body sway, area of body sway, and unit area body sway length at the time of eye opening and closing. To prevent falling, somatic sense input and skeletal muscle input focused on the lower extremities are important. It is expected that these inputs decline in elderly persons, and based on the results of the current study, it is likely that the use of prosthetics, such as a cane, will play an important role in the future in supporting these subjects.
著者
市山 紗弥香 谷口 雄一郎 小島 博己
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.420-426, 2010 (Released:2011-12-15)
参考文献数
18
被引用文献数
1

今回我々は非常に稀である成人型特発性髄液耳漏を経験したため報告する。症例は83歳男性。数年前より左聴力低下, 耳漏の量が持続するため近医を受診したところ, テステープにて糖陽性であり, 髄液漏の疑いにて佐久総合病院を紹介受診となった。左耳の鼓膜穿孔を認め, また左耳内はやや湿潤していた。側頭骨CTでは中頭蓋窩天蓋の菲薄化を認めたが, 耳小骨や内耳に奇形などの異常は認められなかった。初回手術では乳突削開を行い, 髄液の漏出の有無を観察したが, 明らかな所見はなく, 上鼓室周囲の炎症による水様性耳漏と判断し, 鼓膜を閉鎖して手術を終了した。しかし1回目手術終了2週間後より, 耳後部の切開部に小瘻孔が生じ, その部位より少量の透明な液の排出がみられた。このためやはり髄液漏があると判断し, 術後1ヵ月目に2回目の手術を施行した。前回不十分であった天蓋周囲の蜂巣を十分に削開し, 念入りに観察をしたところ, 中頭蓋窩のわずかな骨欠損部より硬膜が突出しており, 髄液の間欠的な漏出を認めた。瘻孔部位を小さな結合織を挿入する型でパッキングし, 筋膜と骨パテにて被覆し, さらにフィブリン糊を用いて瘻孔の閉鎖を行った。術後1年以上経過しているが再発は認められない。