著者
赤澤 吉弘 明石 愛美 阿久津 征利 三上 公志 深澤 雅彦 春日井 滋 坂本 三樹 肥塚 泉
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.3, pp.224-228, 2015-03-20 (Released:2015-04-17)
参考文献数
15
被引用文献数
2

若年型喉頭乳頭腫は多発性, 再発性で難治なことがあり, 取扱いの難しい疾患である. 今回, 喉頭乳頭腫により気道狭窄を来し, 緊急気道確保を要した症例を経験した. 症例は2歳4カ月の男児で, 1歳頃から嗄声, 1歳6カ月頃から陥没呼吸を認めていた. 前医で重度喘鳴を認め, 喉頭乳頭腫による気道狭窄が疑われ, 救急搬送された. 手術室で気管切開待機のもと, 麻酔科による気管内挿管が行われた. 喉頭は腫瘍で充満し, 声門は観察できなかった. 後日, 全麻下にマイクロデブリッダーを用いて腫瘍を除去した. 病理は乳頭腫で, HPV11 が検出された. 初回手術から早期に再発傾向を示し, 半年間に4回の手術を施行したが腫瘍の制御には至っていない.
著者
肥塚 泉
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.117, no.11, pp.1321-1328, 2014-11-20 (Released:2014-12-19)
参考文献数
9
被引用文献数
2

眼振には衝動性眼振と振子様眼振があるが, 一般的には衝動性眼振を指す. 前庭性眼振の眼振緩徐相は, 末梢前庭器やその伝達路である前庭神経の障害によって生じた前庭動眼反射のアンバランスによって生じた眼球の偏倚である. 偏倚した眼球位置を, 正中眼位にリセットすることを目的に眼振急速相が続いて生じ, このプロセスが繰り返されることにより眼振が形成される. 前庭性眼振の眼振緩徐相は, 前庭系で受容した情報が, 前庭神経, 前庭神経核, 眼運動核 (動眼神経核, 滑車神経核, 外転神経核) に伝達されて形成される (前庭動眼反射). 良性発作性頭位めまい症 (後半規管型) で認められる眼振は, 回旋成分を有した上眼瞼向きの眼振である. またメニエール病や前庭神経炎, めまいを伴った突発性難聴で認められる眼振は, 水平・回旋混合性眼振である. 一方, 純垂直性眼振や純回旋性眼振は末梢性めまいでは認めることは極めてまれである. これらが認められた場合は, 中枢性めまいを疑う. 眼振急速相発現にかかわるニューロン回路は, 眼振緩徐相のそれとは全く異なっている. 眼振急速相発現の主役は, 同側の眼振急速相に一致して一過性の高頻度発射を示す網様体バーストニューロンである. 水平方向急速眼球運動の核上性機構としては, 傍正中部橋網様体 (paramedian pontine reticular formation: PPRF), 垂直方向急速眼球運動の核上性機構としては, 内側縦束吻側間質核 (rostral interstitial nucleus of MLF: riMLF) が重要な役割を果たしている. 眼振緩徐相から眼振急速相への切り替わりに関しては, burster-driving neuron (BDN) が重要な役割を担っている. 注視眼振は, 神経積分器 (neural integrator) に障害があると出現する. 水平方向眼球運動の神経積分器は, 前庭神経内側核, 舌下神経前位核, 小脳片葉などで構成されている. 垂直方向眼球運動の神経積分器は Cajal 間質核, 舌下神経前位核で構成されている.
著者
肥塚 泉
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.119, no.2, pp.87-93, 2016-02-20 (Released:2016-03-10)
参考文献数
28
被引用文献数
2

平衡感覚の受容器である三半規管や耳石器からの情報は, 経核, 舌下神経前位核, 前庭小脳などで構成される, 神経積分器の一種である neural store に入力している. neural store には前庭系からの入力以外に, 体性感覚情報 (深部知覚情報) や視覚情報も入力している. これら3つの感覚情報が neural store で統合処理されて平衡感覚が保たれている. 前庭神経核から入力を受ける前庭視床は, 頭頂―島前庭皮質 (PIVC) や VIP 野など複数の大脳皮質領域に前庭感覚情報を送っている. 海馬にも前庭系からの入力がある. 末梢前庭系においては加齢に伴う変性と萎縮は耳石, 有毛細胞から前庭神経まで前庭器全体に及ぶ. 半規管動眼反射の利得は, 低周波数領域については高齢者でも比較的保たれる. 高周波数領域については80歳を超すと徐々に低下する. oVEMP と cVEMP の振幅は50歳を超すと徐々に低下する. 眼では調節力の低下, 網膜感度の低下などが生じる. 深部知覚情報も加齢により変化を受ける. 高齢者では, 深部知覚情報に対する依存度が高まる傾向を示す. neural store を構成する小脳の Purkinje 細胞のニューロン数に関しては, 加齢による変化を認めない. しかしながら細胞体の体積は加齢により減少する. PIVC や VIP 野に障害が生じると, 垂直位の偏倚, 半側空間無視などの空間識障害などが生じる. 高齢者におけるめまい・平衡障害は転倒のリスクファクターの一つである. 高齢者においては, 生活習慣病などの全身疾患の合併もしだいに多くなるなどの理由により, めまい・平衡障害の病態は, 末梢前庭系や中枢前庭系のみならず, 多モダリティ感覚領域や出力系である筋肉を含む, “平衡維持システム” 全体の障害としての理解が必要となる. 加齢に伴う平衡感覚の低下に対してはめまいリハビリテーションが有用である. 高齢者においては出力系である筋肉にもサルコペニアが生じる. これに対しては, レジスタンストレーニングが推奨されている.
著者
堤 康一朗 岩武 博也 桑原 大輔 俵道 淳 小林 健彦 肥塚 泉 加藤 功
出版者
Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and neck surgery
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.727-733, 2000-06-20 (Released:2008-03-19)
参考文献数
33
被引用文献数
2 2

ヒトパピローマウイルス(HPV)遺伝子の転写は感染した上皮細胞の分化と密接に関連している.カルシウムを含む様々な因子が培養上皮細胞の分化を制御し,13番サイトケラチン(CK13)の発現は培養喉頭上皮細胞(HLEC細胞)の分化マーカーであることが報告されている.本研究の目的は,カルシウム濃度増加のHLEC細胞におけるCK13発現とHPV16遺伝子転写に及ぼす影響を調べることである.われわれはHPV16遺伝子を含む2種類のHLEC細胞を解析した.HPVl6によって不死化したHLEC細胞(HLEC16細胞)とHPV16陽性(HPV16が感染した)の培養喉頭乳頭腫細胞(HLP16細胞)である.HLEC16細胞ではウイルス遺伝子が細胞染色体に組み込まれていた.対照的にHLP16細胞は細胞染色体外にウイルス遺伝子は存在していた.われわれは免疫細胞染色を用いてカルシウム濃度増加のCK13発現に対する影響を評価した.HLP16細胞とHLEC16細胞は共にCK13発現誘導を伴って増加したカルシウムに反応した.HLP16細胞とHLEC16細胞におけるCK13発現は低カルシウム条件下(0.1mM)では検出不能であったが高カルシウム条件下(1.0mM)では検出された.一方,ウイルスRNAのレベルはHLP16細胞ではカルシウムを加える(1.0mM)ことによって上昇したが,HLEC16細胞では低カルシウム(0.lmM)および高カルシウム(1.0mM)条件下で同等であった.これらの結果はカルシウムが誘導する分化がHLP16細胞におけるウイルス遺伝子転写を正に制御したことを示唆する.また,ウイルス遺伝子の宿主細胞染色体への組み込みが分化に依存しないHPV16遺伝子転写の重要な決定要因なのかもしれない.
著者
小宅 大輔 岡田 智幸 深澤 雅彦 佐藤 成樹 肥塚 泉
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.101, no.8, pp.617-620, 2008-08-01 (Released:2011-10-07)
参考文献数
10

This study retrospectively investigated the value of both endoscopically visible oropharyngeal secretions in the hypopharynx and miss-swallowing frequency in the prediction of food and liquid aspiration. Videoendoscopy was performed in Fourty-three patients. A four-level rating scale was employed to determine the severity of accumulated oropharyngeal secretions. On this secretion scale patients graded 0 and 1 could eat, but those graded 3 could not. It was found that the accumulation of endoscopically visible oropharyngeal secretions located within the laryngeal vestibule was highly predictive of the aspiration of food or liquid. The Results are discussed in terms of integrating this information with clinical bedside examinations.

1 0 0 0 OA 舌骨症候群例

著者
勝見 直樹 岩武 博也 富澤 秀雄 肥塚 泉 加藤 功
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.223-228, 2000-03-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
19
被引用文献数
5 3

We describe the case of a 25-year-old man with pain on turning his head to either side attributable to a malformation of the hyoid bone. When the neck was turned further to the left, the greater cornu slipped over the tuberculum anterius of the processus transversus, and locked in front of the tuberculum posterius. At the same time the thyroid cartilage caused an upward movement and separated the locked greater cornu. At the moment of this separation, a clicking sound was produced. Diagnosis was established using 3-dimensional reconstruction of CT imaging. The greater cornu of the hyoid bone was noted to be elongated and malformed, and the left greater cornu was obviously blocked by the processus transversus of cervical vertebra V. Excision of both greater cornua relieved the symptoms.
著者
齋藤 善光 宮本 康裕 望月 文博 阿久津 征利 加藤 雄仁 藤川 あつ子 栗原 宜子 谷口 雄一郎 肥塚 泉
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.121, no.6, pp.799-804, 2018-06-20 (Released:2018-07-05)
参考文献数
15

Silent sinus syndrome(SSS) は上顎洞自然孔が閉塞し, 低換気により洞内が陰圧化し, 上顎洞内陥や骨菲薄化に伴って無症候性の眼球陥凹, 眼球低位を認める疾患である. われわれは, 鼻副鼻腔乳頭腫の影響で, 上顎洞自然孔閉塞により発生したと思われた, SSS 様の所見を呈する1例を経験した. 治療は, 内視鏡下で腫瘍摘出し, 上顎洞を開放した. 術後, 上顎洞内陥は改善し, 翼口蓋窩陰影が縮小した. 上顎洞自然孔が閉塞し, 上顎洞内陥に伴う翼口蓋窩の拡大を認めた場合は, SSS を念頭に置く必要がある. また, SSS であれば上顎洞を開放することで症状, 所見共に改善するため, 診断的治療として手術は有効な手段と考える.
著者
川嵜 良明 武田 憲昭 肥塚 泉 萩野 仁 松永 亨
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5Supplement6, pp.1266-1273, 1991-11-01 (Released:2013-05-10)
参考文献数
3

めまい患者における自律神経機能を検討するために, ノルエピネフリン, トリニトログリセリンを用いて薬剤による血圧の変化を惹起し, それに対する脈拍の変化をみることにより圧受容器反射の感度を測定した, めまい患者では, その障害部位によらず副交感神経機能低下状態にあり, メニエール病で発作から近い時期, 発病から近い時期, 発作の頻発する活動期に交感神経機能亢進の状態にあつた. また, めまい患者においてシェロングテストの陽性化には圧受容器反射の機能亢進が関与している可能性が考えられた.一方, R-R間隔のスペクトル分析でもメニエール病で正常人に比較して副交感神経機能が低下している傾向がみられた.
著者
望月 文博 宮本 康裕 四戸 達也 笹野 恭之 荒井 光太郎 西本 寛志 稲垣 太朗 大原 章裕 鈴木 香 三上 公志 谷口 雄一郎 肥塚 泉
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.595-601, 2019-12-31 (Released:2020-02-05)
参考文献数
16
被引用文献数
1

Japan has become a super-aging society, and the number of elderly persons with dizziness is increasing. In addition, elderly persons with dizziness have a high risk of falling, and fractures caused by falls can decrease the life span. It is therefore necessary to take appropriate countermeasures. Treatments for dizziness are wide-ranging and include physical therapy, such as canalith repositioning, and pharmacotherapy. However, many patients do not improve even after these treatments. In this study, we compared the results of stabilometry examined before and after the use of a cane in 21 patients aged 65 years or older with a history of dizziness who visited our department (DHI score of 28 points or higher). The use of a cane improved the following measured parameters: total length of body sway, area of body sway, and unit area body sway length at the time of eye opening and closing. To prevent falling, somatic sense input and skeletal muscle input focused on the lower extremities are important. It is expected that these inputs decline in elderly persons, and based on the results of the current study, it is likely that the use of prosthetics, such as a cane, will play an important role in the future in supporting these subjects.
著者
肥塚 泉
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1318-1320, 2012 (Released:2012-11-29)
参考文献数
8
被引用文献数
1

On Earth, humans are constantly exposed to the gravity. During head and body tilts, the otolith organs sense changes in head orientation with respect to the gravitational vertical. These graviceptors also transduce transient linear acceleration generated by translational head motion and centripetal acceleration during rotation about a distant axis. When individuals are rotated at a constant velocity in a centrifuge, they sense the direction of the summed gravitational and centripetal acceleration as the vertical in the steady state. Consequently they experience a roll-tilt of the body when upright and oriented either left-ear-out or right-ear-out. This perception of tilt has been called the somatogravic illusion. Under the microgravity, the graviceptors no longer respond during static tilt of the head or head and body, but they are still activated by linear acceleration. Adaptation to weightlessness early in space flight has been proposed to entail a reinterpretation of the signals from the graviceptors (primarily the otolith organs), so that on return to Earth pitch or roll of the head with respect to the vertical is sensed as fore-aft or left-right translation. In this article, formulation of the spatial orientation on the earth and under microgravity was described.
著者
肥塚 泉
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.45-51, 2010 (Released:2011-06-09)
参考文献数
25
被引用文献数
2

メニエール病は、めまい発作を繰り返し、難聴や耳鳴などの聴覚症状(蝸牛症状)を反復・消長する疾患である。近年、メニエール病の診断基準が改定された。メニエール病の病態を内リンパ水腫と位置付け、メニエール病確実例の定義を簡潔に記載し、さらに前基準で疑い例と記載されていた分類をメニエール病非定型例蝸牛型、同前庭型と定義しその基準を明確にした。メニエール病の本態と考えられる内リンパ水腫の診断法についても、耳石器を対象とした脱水検査、高分解能MRI など新しい手法が適用されるようになった。メニエール病の発症ならびに再発に、ストレスが深くかかわっている可能性が指摘されてきた。最近ストレスホルモンの一種で、腎臓や内耳における水代謝に強く関連しているAVPが内リンパ水腫の形成に強く関連している可能性が示唆されるようになり、メニエール病におけるストレス管理の重要性が再認識されるようになった。
著者
外池 光雄 山口 雅彦 肥塚 泉 瀬尾 律
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.105, no.5, pp.549-556, 2002 (Released:2013-04-02)
参考文献数
25

21世紀が始まったばかりの今日,「明日の感覚器医学」に対して嗅覚の医学はどのような方向を目指すべきであろうか.筆者らは, 永年, 嗅覚の研究 (受容から中枢へ) に携わってきたが, それらを現時点で総括し,-「嗅覚の臨床医学」の展望:(要望と言うべきかも) を述-べる.本論文では, 嗅覚の他覚的機能検査法の現状を概観し, 次に筆者らがこれまでの共同研究によって推進してきた脳波 (EEG) と脳磁図 (MEG) を用いた嗅覚の非侵襲的・他覚的検査法について述べた.特に全頭型脳磁計を用いた匂いの脳磁図研究によって特定した脳内の嗅覚中枢部位の推定結果, 並びにオドボール実験課題によって得られた匂いの認知機能推定部位等について議論し, 能動的嗅覚検査についても触れた.最初に嗅覚の重要課題, 4項目を箇条書きで示した.嗅覚の他覚的検査法として, まず筆者らが注目したのは, 脳波を用いて人間の匂いの感覚を客観的に計測するという研究であった.これらの研究は, 永年の間, 筆者らと大阪大学耳鼻咽喉科との共同研究として行われてきた.次に実施したのが脳磁図による嗅覚の検査・診断を目指す研究であり, この研究の成果として, 人間の嗅覚中枢を初めて大脳左右の前頭葉眼窩野部に特定した.筆者らは122チャンネルの全頭型脳磁計を用いて被験者の呼吸に同期させた300msecの匂い (アミルアセテート, バナナ臭) 刺激パルスを左右どちらか片側の鼻腔に注入刺激し, 嗅覚性誘発脳磁図の応答計測に成功した.このMEG嗅覚実験では, 6人の嗅覚正常なすべての被験者において大脳の両半球の前頭眼窩野部に匂い刺激によるMEG反応を認めた.さらに筆者らは快い匂いのアミルアセテートと不快臭のイソ吉草酸の2種類を用いて, オドボール課題による嗅覚MEG実験を初めて行った.この結果, まず嗅覚神経応答と考えられる約378msの潜時の応答が両側の前頭眼窩野部に求められ, この応答成分はrare刺激にもfrequent刺激にも観測された.さらにオドボール課題による嗅覚MEG実験のrare刺激応答のみに出現する潜時約488msの後期応答成分が初めて得られ, これは匂いの認知に関わる応答 (いわゆるP300m認知応答) であろうと推察された.本報は, 嗅覚の他覚的・客観的検査・診断法で重要と考えられるMEGを用いる嗅覚の侵襲計測・検査法の現状を中心に述べ, また, これから嗅覚の重要な課題になると思われるsni伍ngによる能動的嗅覚についても記述した.最後に, これまでの嗅覚研究の蓄積, 並びに臨床医学研究の現状を踏まえて,「明日の嗅覚-臨床医学の展望-に対する提案」を5項目掲げて示した.
著者
犬飼 賢也 高橋 紳一郎 肥塚 泉
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.17-22, 2011 (Released:2011-04-01)
参考文献数
24

Although the duration of benign paroxysmal positional vertigo (BPPV) is generally short, it can sometimes be long and intractable. We report on a case of intractable BPPV in which the duration of disease was four years. The patient was a 38-year-old woman. She had suffered from bilateral hearing loss since childhood. Since October 2005, she experienced severe vertigo whenever she turned her head. She had consulted other doctors, but the symptoms persisted. On June 20, 2007, she was referred to the Otolaryngology Department of Tachikawa General Hospital. The positional nystagmus test demonstrated apogeotropic nystagmus in a bilateral position with a duration of more than one minute. Upbeat nystagmus with a clockwise direction (from the examiner) was seen in sitting position using the Dix-Hallpike method. A pure tone audiogram showed high tone damage causing sensorineural hearing loss bilaterally. A caloric test did not show canal paresis. Magnetic resonance imaging (MRI) of the brain showed normal findings. MRI of the inner ears showed narrowing throughout the entire semicircular canal bilaterally (mainly the bilateral anterior semicircular canals). The Brandt-Daroff method induced nausea; therefore that examination method was abandoned. Habitual training advocated by St. Marianna University, the Head shaking method from Yamaguchi University, and the Non-specific training method from Toho University did not improve the nystagmus. Vestibular training by Kitazato University improved her vertiginous feeling. The direction of nystagmus changed variously during the course. The vertiginous feeling had almost disappeared in June 2009, but nystagmus persisted. We considered that cupulolithiasis in the bilateral lateral semicircular canals often shifted to canalolithiasis in various portions of the semicircular canals. Appropriate physical therapy improved the subjective symptoms.