著者
山田 郁 阿部 徹弥 谷沢 善明
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.175, 2005 (Released:2005-12-08)

目的 湯飲み茶碗やコーヒーカップを繰り返し使用すると、容器の内側に茶渋が形成される。この茶渋は通常洗剤とスポンジだけでは除去するのが難しく、研磨剤や漂白剤が必要となる。茶渋の実態については明らかとなっていないため、化学組成、カルシウムイオン添加や経時に伴う構造変化を調べた。方法 モデル茶渋は、市販のティーバッグと東京の水道水または蒸留水を用いて抽出した紅茶溶液に磁器タイルを浸すことにより生成させた。タイル上に生成した茶渋は、一部はそのまま電子顕微鏡観察を行い、もう一部は茶渋をスパチュラで掻き取り化学組成分析を行った。結果 茶渋は、水の蒸発による喫水線の低下に伴いタイル表面に生成した。元素分析、IR分析の結果、茶渋の化学組成は紅茶自体のものとは異なり、カルシウムがキレートされたポリフェノール類と少量の珪酸カルシウムから成ることがわかった。SEM-EDS分析より、有機物の上に珪酸カルシウムが島状に存在する様子が観察された。また、紅茶へのカルシウムイオン添加と経時により、ポリフェノールのキレートと重合が促進されることがわかった。次に、茶渋の化学的除去方法について検討した結果、キレート剤に効果があることを見いだした。茶渋除去能は、カルシウムイオンとの錯安定度定数の順序と一致した。
著者
内山 章 井上 志磨子 谷沢 善明 落合 良仁
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.132-140, 2004-04-30

本研究の目的は新たな化学的ステイン予防・除去方法を開発することであり,本報では薬剤によるペリクルの除去,および薬剤によるペリクルの除去メカニズムについて検討を行った.ハイドロキシアパタイト(HA)ディスクはマウスピースに取り付け,健常な被験者の口腔内に保持した.経時的に形成されたin situペリクルはフロキシンにより染色し,そのa値を色差計にて測定した.また,タンパク量はニンヒドリン法によって定量した.紅茶変性ペリクルは紅茶を含漱して形成し,化学的薬剤を含む溶液でブラッシングして残存したペリクルの量および形態を評価した.HA粉体は希釈唾液を2時間処理した後,ピロリン酸塩を添加して,HAに吸着したピロリン酸量と脱離した唾液タンパク量を測定した.ペリクルのa値とタンパク量の間に相開開係がみられた(r = 0.95, p<0.01) . 3名の被験者のペリクル量は経時的に増加し,約2時間後プラトーに達した.ピロリン酸ナトリウム溶液でブラッシングしたペリクルのa値(Mean±SD = 0.73±0.35)は,コントロール(6.28±0.28;p<0.01)よりも有意に低く,試験薬剤のなかで最も小さいa値を示した.走査型電子顕微鏡による観察から,ピロリン酸塩でブラッシングされたペリクルは化学的に脱離され,歯磨剤希釈放でブラッシングされたペリクルは物理的に除去されていることが推察された.ピロリン酸塩のHAへの吸着等温線はLangmuir型吸着を示し,またHAに吸着したピロリン酸量と脱離されたタンパク量の間に比例関係が確認された.以上の結果から,ピロリン酸塩はペリクルの除去に有効であり,ピロリン酸塩はHA表面に吸着し,ペリクルとHA間のイオン的結合を切断することが示された.本研究によってピロリン酸塩がステインドペリクルの除去薬剤としてのポテンシャルを有することが示された.